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イザベラ、今後の動きを考える
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赤ちゃんをなめてた。どうやら、寝る、飲む、寝るの繰り返しで、ほとんど起きている時間はなさそうである。残念、無念、また来週。ママのおっぱいをしこたま飲んだあと、私はすぐに眠りについてしまった。
前世の知識があるとは言えどもやはり情報が欲しい。イザベラが幼少期の細かい出来事については、ゲームではもちろん語られなかったし、さすがに関連書籍にもなかった。
つまり、「王立学園」の最高学年になるまでのイベントについては、未知の部分がかなり占めているのだ。もちろん攻略対象との出会いや、そのとき何があったかは全部把握している。
しかしそれだけでは、おそらく足りないだろう。
ゲームスタート時になったときに、しっかりと悪役ムーブができるようにする必要がある。そのため、少しでも長く起きて情報を収集する必要があるのだ。
ちなみに「王立学園」がゲームの舞台である。より正確に言えば、その中での最高学年である、十八歳の一年間がゲームの期間だ。
何と私は、たったの一年で破滅へと追いやられてしまうのだ。もちろんそれまでには「破滅へのロンド」のための入念な下準備が必要ではあるのだが。
綿密な下準備、腕が鳴りますな~。私の知識チートをとくとご覧あれ!
こうして私は赤子ながら、できる限り情報を集めることにした。
特に科学技術については不明な点が多いので重点的に調べることにした。私にだって、やって良いことと、悪いことの区別くらいはつく。
核兵器は作ってはいけない。ダメ、絶対。
前世ではインターネットくらいしかできることがなかったので、余計な知識だけは豊富にあるのよね。なにげに頭だけは良かったみたいだし。
何て言うか~、見ただけで全部覚えているって言うか~、天才って言うか~?
そして気になる情報と言えば、もちろん魔法! これに限る。
ゲーム内では当然のように魔法が使われていた。しかしそれらの魔法は「その世界の、ごく一部の魔法に過ぎない」のだと公式に書かれていたのだ。
つまり、この世界には私の知らない未知の魔法がてんこ盛りと言うわけだ。
ううん、けしからん。実にけしからん。未知の知識、とってもおいしそうだわ。
その辺りの話をお母様や使用人に聞けたら良いんだけど、さすがに赤子がしゃべるとまずいわよね? すでに魔法を使ったことでお母様にはマークされているみたいだし。
さてどうしたものかと考えていると、扉をノックする音が聞こえた。お母様がそれに応えると、使用人が扉をあけた。そして初めて見る人物が部屋に入ってきた。
黒髪に白髪交じりのナイスシニア。ゲームにも、小説にも、アニメにも、この人物は登場していなかったはずだ。これはもしかして、私が見逃していた情報がわずかに存在していた?
左の目にモノクルをかけており、スーツのようなピシッとした服を着ている。キマシ! とか言いそう。多分言わないけど。
あら、良く見ると、左右の目が色違いのオッドアイだわ。右目が黒、左目が青。何だか不思議ね。そしてなぜだか私をジッと見ているわ。
「フランツ、イザベラの様子はどうかしら?」
「はい奥様、相変わらずなご様子です」
お母様にフランツと呼ばれた人物は、お母様に丁寧に答えた。相変わらず……。
ピンときた。多分、私が魔法を使ったことがバレたのはフランツさんのせいだわ。きっとあのいかにも怪しいオッドアイに秘密があるんだわ。
私はギロリとフランツをにらんだ。フランツのせいで私がマークされることになったのだ。許すまじ。
そのとき、再び扉をノックする音が聞こえた。今度は先ほどとは違い、下の方から聞こえてくる。これはもしかして……もう来ちゃうのか? 私の死亡フラグ要因その一、ルークお兄様が!
お母様が声をかけると、すぐに男の子が入って来た。
「お母様、イザベラが魔法を使ってお母様の体質を改善したというのは本当なのですか?」
見るからに整った容姿を持つ少年は、利発そうな話し方をしている。
お父様と同じ赤茶色の髪に、お母様と同じ青い瞳。私の兄のルークだわ。間違いない。
さすがは攻略対象なだけあって、こんなに小さいころからでもとっても可愛くてりりしいわ。捕まえて部屋に飾っておきたいくらいだわ。しないけど。
「え!? え、ええ、そうではないかと思っているわ。ところで誰からその話を聞いたのかしら?」
ガシイッ! と効果音がつきそうな勢いでお母様がお兄様の両肩をつかんだ。その顔はとってもまぶしいくらいの笑顔である。だがその目は明らかに笑ってなかった。
「え? えっと……」
サッと顔色を悪くしたルークはフランツを見た。見られたフランツは滝のような汗を流しながら、あさっての方向を向いた。いい気味だ。
「フランツ、あとで大事な大事なお話があります。それからルーク、イザベラが魔法を使ったということを口外してはいけません。いいですか、絶対に口外してはいけませんからね」
お母様は大事なことなので二回言った。
どうやら私が魔法を使ったことは機密事項のようだ。私もうっかり話さないように気をつけなければならない。
蛇ににらまれたカエルのようになったお兄様のルークはコクコクと無言で首を縦に振った。
前世の知識があるとは言えどもやはり情報が欲しい。イザベラが幼少期の細かい出来事については、ゲームではもちろん語られなかったし、さすがに関連書籍にもなかった。
つまり、「王立学園」の最高学年になるまでのイベントについては、未知の部分がかなり占めているのだ。もちろん攻略対象との出会いや、そのとき何があったかは全部把握している。
しかしそれだけでは、おそらく足りないだろう。
ゲームスタート時になったときに、しっかりと悪役ムーブができるようにする必要がある。そのため、少しでも長く起きて情報を収集する必要があるのだ。
ちなみに「王立学園」がゲームの舞台である。より正確に言えば、その中での最高学年である、十八歳の一年間がゲームの期間だ。
何と私は、たったの一年で破滅へと追いやられてしまうのだ。もちろんそれまでには「破滅へのロンド」のための入念な下準備が必要ではあるのだが。
綿密な下準備、腕が鳴りますな~。私の知識チートをとくとご覧あれ!
こうして私は赤子ながら、できる限り情報を集めることにした。
特に科学技術については不明な点が多いので重点的に調べることにした。私にだって、やって良いことと、悪いことの区別くらいはつく。
核兵器は作ってはいけない。ダメ、絶対。
前世ではインターネットくらいしかできることがなかったので、余計な知識だけは豊富にあるのよね。なにげに頭だけは良かったみたいだし。
何て言うか~、見ただけで全部覚えているって言うか~、天才って言うか~?
そして気になる情報と言えば、もちろん魔法! これに限る。
ゲーム内では当然のように魔法が使われていた。しかしそれらの魔法は「その世界の、ごく一部の魔法に過ぎない」のだと公式に書かれていたのだ。
つまり、この世界には私の知らない未知の魔法がてんこ盛りと言うわけだ。
ううん、けしからん。実にけしからん。未知の知識、とってもおいしそうだわ。
その辺りの話をお母様や使用人に聞けたら良いんだけど、さすがに赤子がしゃべるとまずいわよね? すでに魔法を使ったことでお母様にはマークされているみたいだし。
さてどうしたものかと考えていると、扉をノックする音が聞こえた。お母様がそれに応えると、使用人が扉をあけた。そして初めて見る人物が部屋に入ってきた。
黒髪に白髪交じりのナイスシニア。ゲームにも、小説にも、アニメにも、この人物は登場していなかったはずだ。これはもしかして、私が見逃していた情報がわずかに存在していた?
左の目にモノクルをかけており、スーツのようなピシッとした服を着ている。キマシ! とか言いそう。多分言わないけど。
あら、良く見ると、左右の目が色違いのオッドアイだわ。右目が黒、左目が青。何だか不思議ね。そしてなぜだか私をジッと見ているわ。
「フランツ、イザベラの様子はどうかしら?」
「はい奥様、相変わらずなご様子です」
お母様にフランツと呼ばれた人物は、お母様に丁寧に答えた。相変わらず……。
ピンときた。多分、私が魔法を使ったことがバレたのはフランツさんのせいだわ。きっとあのいかにも怪しいオッドアイに秘密があるんだわ。
私はギロリとフランツをにらんだ。フランツのせいで私がマークされることになったのだ。許すまじ。
そのとき、再び扉をノックする音が聞こえた。今度は先ほどとは違い、下の方から聞こえてくる。これはもしかして……もう来ちゃうのか? 私の死亡フラグ要因その一、ルークお兄様が!
お母様が声をかけると、すぐに男の子が入って来た。
「お母様、イザベラが魔法を使ってお母様の体質を改善したというのは本当なのですか?」
見るからに整った容姿を持つ少年は、利発そうな話し方をしている。
お父様と同じ赤茶色の髪に、お母様と同じ青い瞳。私の兄のルークだわ。間違いない。
さすがは攻略対象なだけあって、こんなに小さいころからでもとっても可愛くてりりしいわ。捕まえて部屋に飾っておきたいくらいだわ。しないけど。
「え!? え、ええ、そうではないかと思っているわ。ところで誰からその話を聞いたのかしら?」
ガシイッ! と効果音がつきそうな勢いでお母様がお兄様の両肩をつかんだ。その顔はとってもまぶしいくらいの笑顔である。だがその目は明らかに笑ってなかった。
「え? えっと……」
サッと顔色を悪くしたルークはフランツを見た。見られたフランツは滝のような汗を流しながら、あさっての方向を向いた。いい気味だ。
「フランツ、あとで大事な大事なお話があります。それからルーク、イザベラが魔法を使ったということを口外してはいけません。いいですか、絶対に口外してはいけませんからね」
お母様は大事なことなので二回言った。
どうやら私が魔法を使ったことは機密事項のようだ。私もうっかり話さないように気をつけなければならない。
蛇ににらまれたカエルのようになったお兄様のルークはコクコクと無言で首を縦に振った。
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