悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき

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破滅をもたらす者②

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 炎系統の魔法でもそこそこ強い魔法を使ってきた。本来なら、それに最強の杖とやらのブーストが加わって、強力な魔法になっているはずなのだが、何も起こらなかった。
 それに気がついたモーガンが首を捻った。
「こ、これは一体どうしたことだ……?」
 ニシシ、と笑うフェオ。
「あんた、気がつかなかったの?すでにあんた達は魔法が使えないようになってるわよ。このフェオちゃんのスーパー魔法によってね!」
 偉そうに言っているが、こんなこともあろうかと魔法封じの魔法を教えたのは俺である。そして、特にスーパーな魔法ではない。
「ば、バカな」
【ば、バカな】
 二人が同時に同じ声を発した。これだけ聞くと、息がピッタリである。
 邪精霊が驚くのも無理はない。魔法が封じられてしまえば、ただの魔力の塊でしかないのだから。
 一方のフェオは魔法が封じられても大丈夫だ。なぜなら俺が必ずフェオを守るから。だれからも守ってもらえない邪精霊は、当然これまでとなる。
「これであんたも年貢の納め時ね!」
【くっ!】
 ビシッと邪精霊を指さし、フェオがポーズを決めた。
【おい、聞いていないぞ、こんな話。お前達に力を貸せば、この世界を支配できるのではなかったのか?】
「うるさいぞ!俺達もそのために長い月日をかけて準備して来たんだ。それを、こんな奴らなんかに邪魔をされるだなんて!王家とガーネットを共倒れさせて、我らエメラルド公爵がこの国を牛耳るはずだったのに!」
 そんなに前から準備をしていたのか。これはエメラルド公爵を叩けばかなりのホコリが出てきそうだなぁ。まあ、例えその作戦が上手く行ったとしても、ダイヤモンド公爵に潰されそうな気がするけどね。あっちの方が力を持ってるしね。三大公爵の中でも最弱のエメラルド公爵が敵うはずがない。だからこそ、こんな計画を実行するのだから。
「シリウス様、敵は知れましたわ。これ以上の被害が出る前に、処分してしまった方がよろしいのではないでしょうか?」
 あ、ティアナが怒ってる。そりゃ王家を倒すとか言われればそうなるか。俺の場合は俺に何かあれば、両親が黙っていないだろうから、別の意味で恐ろしいが。最悪、ジュエル王国が滅びるかもしれん。
 そうなると当然困るので、あれを処分するしかないな。
「シリウス様、精霊を倒すことができるのですか?」
 マリア嬢が不安そうに聞いてきた。大丈夫です。我々にはデストロイヤーピーちゃんがいますから。二人、いや、フェオを含めて三人係でやれば余裕で……過剰で倒せるだろう。
「ティアナ、ピーちゃんの力を借りたい。フェオも力を貸してくれ」
「もちろんですわ」
「もちろん!」
【もちろんです】
 二人と一匹が力強く請け負ってくれた。これでよし。後は跡形もなくぶっ飛ばすだけだな。
 エリオットとアーサーに代わり、フェオとピーちゃんが前に出た。ピーちゃんは……どうやらご主人様の実家の危機を察知したらしく、本気モードだった。インコの可愛らしいピーちゃんの姿から、炎をまとった火の鳥の状態に変化していた。
 でかい上に怖い。ピーちゃんを怒らせるのはやめておこう。命がいくつあっても足りない。
【ヒイイィイ!】
 悲鳴を上げる邪精霊。隣のポンコツは腰を抜かしてへたり込んでいる。情けない奴だ。
 俺達の周囲は、あれってもしやフェニックス?という声がチラホラ聞こえてくる。マリア嬢もステラ嬢もエリオットもアーサーもポカンとあっけにとられて口を開けている。まあ、言い訳は後にして、まずはあの邪精霊を消滅させないとな。
 世界から切り離されてしまった精霊は、二度とこの世界に溶け込むことはできないらしい。そのまま残存していると、また今度何を仕出かすか分からないので、ここで消滅させる以外の方法はなかった。
 フェオが嫌がるかな?と思ったが、どうやら邪精霊は自分たちの同胞とはカウントしていないようであり、やる気満々である。というか、フェオとピーちゃんの殺気が凄い。俺、手を出さなくてもいいんじゃないかなぁ。
「おっしゃ!ピーちゃん、アイツを跡形もなく灰にするわよ!」
【合点です】
 ヒェッ!怖いよ、二人とも。フェオは前方に青白い炎を放ち、ピーちゃんは輝かんばかりの灼熱の炎を吐いた。
 二人の炎が容赦なく邪精霊を焼き、隣のポンコツは失禁して気を失った。
【グヌァア】
 しかし、しぶとく邪精霊は残った。どうやらギリギリ大地と繋がっている部分があったらしい。ほとんどの力は失われているようだが、未だに不気味にうごめいていた。
「シリウス、トドメを刺しちゃってよ!精霊王のシリウスなら、あんなの余裕で切り裂けるからさ」
 フェオの言葉に、今度は「精霊王!?」と周囲が騒がしくなった。
 聖王兼精霊王。どうやらみんなにもそのように認識されたようである。そうじゃないと言いたいところだが、今の状態をみると、ひょっとしたらそうかも知れないと思わなくもない。
 俺はこれ以上騒ぎが大きくならないうちに終わらせるべく、エクスがかけてくれている身体強化魔法の上に、さらに身体強化魔法を上乗せして邪精霊に斬りかかった。
 二度と復活することがないように繰り返し何度も切ったため、細切れになった邪精霊は、最後には跡形もなく消え失せた。
 ふう。ヤレヤレだぜ。俺は特に汗をかいてもいないのに額の汗を拭い、武装を解除した。
「お疲れ様、シリウス。格好良かった」
 エクスがねぎらいの言葉をかけてくれ、そのまま俺に抱きついてキスをしてくれた。
 おおう。エクスも大胆になったものだ。
 しかし、それを良しとしなかった人物が二人。そう、ティアナとフェオである。
 すぐに飛んできた二人。顔は笑顔なのだが、何だか怖い。
「シリウス様、素敵でしたわ。さすがは私の旦那様」
 そう言うと、公衆の面前だというのに、そんなものはお構いなしだと言わんばかりに、ムチューってキスをしてきた。これはもう見せつけてる感があるな。
 周囲からはキャーという黄色い声がそこかしこから上がっている。
「ちょっとクリピー、長いわよ!次はあたしだからね、ダーリン」
 そう言うと、今度はフェオがティアナを押しのけてキスをしてきた。こっちはこっちで、何回もまるで鳥がついばむかのようなキスをしてきた。
 三人から代わる代わるキスをされた俺は、途中から悟りの境地に達していた。
 後が怖い。
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