悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき

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フリーマーケット、開催します!

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 そんなこんなの意味があるのかどうかも分からない練習をしつつ、フリーマーケットの開催日がやってきた。
「この電卓という魔道具は本当に便利ですわね。計算の勉強は必要ありませんでしたわ」
「そんなことはないですよ。しっかりと勉強をして理解しているからこそ、この魔道具を使いこなすことができているのですよ」
 計算するのが面倒だったので電卓を作った。主に自分が楽したいがためである。
 そうかしら、と首を傾げているが、理屈が分からなければ、短期間で使い方を教えるのは難しかったはずだ。
 この電卓はすぐにお母様に見つかり、自分達も欲しいと言われたのでいくつか作ってある。
 かなり高評価をいただいているので、そのうちラファエル商会で売りに出すかも知れない。魔方陣が超面倒くさいことになっているが。
 フリーマーケット会場は多くの人で賑わっていた。用意していた場所では足りず、臨時で近くの広場を貸し出した。
 販売しているものは、使わなくなった食器、入らなくなった洋服、この日のために手作りした手芸品に、この辺りの特産品などがあり、食べ物を売る屋台もいくつも出ていた。
 我等が公爵家一同は普段の庶民ではちょっと手が出し難いやや高級な品々をリーズナブルな価格で販売していた。
 お金を持っている人はもちろん、お金を貯めていた人達も、こんな機会はいつ来るか分からないからと言って購入していった。
「ありがとうございます。こちらの指輪ですわね。そうですわ、こちらの指輪も一緒にどうですか? 姉妹で同じ物をつけるだなんて、いいじゃあありませんか。二つ同時購入なら、なんと、今だけ、今だけお値段を特別価格でご奉仕させていただいてますわ!」
 誰だ、俺の愛しのクリスティアナ様に妙なことを教えたのは。よしよし、言わなくても分かる。フェオだな。帰ったらスライムでベトベトの刑だな。何で通販のおばちゃんみたいになっているんだよ。しかも何だかイキイキとしてるし、癖になったらどうするの。
「いやー、こんなに良い物をこんなに安く買うことができるだなんて、他の場所ではなかなかありませんよ」
 毎日フリーマーケットをやっていたら、他の商人の人達が立ち居かなくなるので、不定期開催日にすることになっている。これで領内の産業も守られるはずだ。公爵家主催のみ実行可能とすれば尚ヨシだろう。
「新しいことに挑戦するのがガーネット公爵家のモットーですからね。領都の外からいらっしゃったのですか? 何か困ったことなどないですか?」
「困ったことですか? う~ん、私の住んでるところではないのですが、近くの村で・・・」
 などと言って領内の情報収集も行っている。
 もちろん領内のことは、常に兵士達が巡回し、チェックしている。しかし、こうした緊張感の薄い状態で話せば、ちょっとした問題や不満点も話してくれたりするのだ。今回、市民の生の声を聞くことができて本当に良かった。また次のフリーマーケットに向けて商品を集めておかないとな。荷物がどんどん増えるので、ゲームみたいにどこかの謎空間に収納しておければいいのにな。
 フリーマーケットは大盛況のうちに終わった。
 クロは子供達に大人気でモフモフと撫で回されていた。俺が大人しくしておくようにと言っていたお陰で、物静かなわんことして慕われているようだ。良かった。クロは大変疲れ切った顔をしていたが。
 フェオは予想通り、子供達と同レベルで遊んでいた。オッサンなのか、子供なのか、どっちなのか。妖精は本当に不思議な生き物だ。ときどきイタズラが過ぎるのが玉にキズだが。
 クリスティアナ様とエクスは俺と一緒に販売を担当した。俺は情報収集も兼ねてやっていたが、二人は実際に商品を宣伝したり、お金を扱ったりして働いていた。お姫様を働かせるのはどうなのかと途中から思ったが、今更だな、と諦めた。楽しそうだったし、まあ、いいか。
 ピーちゃんはクリスティアナ様の隣てフォローしている。完全に頼れる姉御である。
「たくさん売れましたわね。売り上げも、ほらこんなにありました」
 嬉しそうに帳簿を見せてくれた。俺は開けてはならない扉を開けてしまったのかも知れない。
「ほんとだ~、あたしの知らない間にこんなに儲けてたのね。それでこのお金はどうするの? 美味しい物でも買うの?」
 食いしん坊が聞いてきた。
「そうだね、少しは美味しい物を買っても構わないよ。でも残りは孤児院に寄付しようと思っているよ」
 この世界には孤児の面倒を見る孤児院なるものがある。それは当然ガーネット公爵領にもあった。
 大きな戦争がない平和な世の中が続いているが、魔物の被害は相変わらずあり、また、残念なことに子供を捨てる親もいた。
 それら親を失った子供の面倒を見るために設立された孤児院は、国から運営資金が出ているものの、決して多くはなかった。そこで、今回の寄付だ。国営のため、口出しをするわけにはいかないが、寄付という形なら受け取っても良いはずだ。
 その日の晩餐で寄付について話すと、どうせならば、とガーネット公爵家一同という形で寄付することにした。孤児院の子供達が大きくなれば我が公爵領で働くことになるだろう。先行投資というわけだ。
 しかし、このガーネット公爵家一同の寄付、という行為は大きな流れを生み出すことになった。公爵家が動いたことで、それに釣られるように他の貴族も寄付をするようになったのだ。そしてあとに、寄付をすることは貴族にとってのステータスとなった。なぜならば、寄付できるほどお金があることを対外的に示すことができるからである。だが、今のところ、寄付は公爵領内にのみでブームであった。
 この寄付によって恩を受けた子供達が、未来の公爵領をリードしていくことになるのはもう少し先の話である。
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