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聖人②
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「フェオ先生、何から教えて下さるのですか?」
先程の魔法で俄然やる気が出たクリスティアナ様が、フェオのことを既に先生と呼んでいた。
「じゃあ、まずは広域大量破壊魔法を・・・」
「ストーップ!まずは、魔物の鎮圧で疲弊した兵士達を癒す魔法からにしませんか?その方が、絶対これから役に立ちますよ」
恐らくフェオはそんな大魔法なんて知らないであろうが、腐っても妖精。万が一の可能性がある。クリスティアナ様がデストロイヤーにならないように全力で避ける。
「それもそうですわね。討伐に行った兵士達がみんな無事で戻って来るまでに、しっかりマスターしなくては」
基本はいい子なクリスティアナ様は、すぐに熱心に魔法の訓練を始めた。
「まずは一番簡単な、気分を穏やかにする魔法、リラックスからだよ」
フェオはフェオで、妖精らしく魔法の知識は豊富だった。すぐにクリスティアナ様の魔法の素養を見切って、使えそうな魔法から教え始めた。
フェオ先生による有難い魔法の講義が終わり、実践すること数回。無事にクリスティアナ様はリラックスの魔法を習得したようだ。
「これで戦いで痛めた心の傷を癒すことができますわ」
クリスティアナ様はまるで天使のような微笑みを浮かべて、自分のできる事が増えたことに満足そうだった。
「でも、あまりにも酷い心の傷には対応仕切れないからね」
フェオ先生はその魔法を過信し過ぎるな、と釘を刺していた。さすがである。アフターフォローも完璧だ。
「その場合はどうするのですか?」
「う~ん、もっと強力に精神を操る新魔法を創るしかないかな~」
そう言って、こちらを見る二人。そんな目で見られても、そんなにホイホイ魔法は創りませんよ。
「それにしても、シリウスの頭の中、どうなってるの?一度、覗いて見たいわ。そうだ、今度、夢の中に遊びに行こう!」
フェオがまた急に妙なことを言い出した。夢の中に入る?妖精ならそのくらいのことは簡単にやってのけそうなので全力で拒否した。
「やめてくれ。俺の安眠をこれ以上妨げないでくれ」
「えー、つまんないー」
頬を膨らませているが、ただでさえ、隣で寝ている寝相の悪いフェオを潰さないように神経をすり減らしながら眠っているのに、これ以上は勘弁だ。
「シリウス様は安眠を妨げられているのですか?フェオに?」
「え?」
「そんなわけ無いじゃない。シリウスの隣で大人しく寝てるわよ。失礼ね」
「え?」
「え?」
それにしては夜中に何回も蹴りが入っているぞ。大人しくは寝てないと思・・・。
「シリウス様の隣で大人しく寝てる・・・?」
ギョッとして、恐ろしいほど低い声を発したクリスティアナ様の方を見た。フェオは早くも俺の後ろに隠れ、俺を盾にしていた。コイツ分かっててわざと言ったな・・・。
「ク、クリスティアナ様。ほら、私の部屋にはベッドが一つしかないじゃないですか。他の部屋のベッドもフェオにはサイズが大きすぎるし、フェオを一人にすると何を仕出かすか分からないから、仕方なく一緒に寝てるんですよ」
と、必死の抵抗を試みた。
「フェオと一緒に寝てる・・・?」
「・・・ゴメンナサイ、ケイソツナコウドウデシタ」
この日以降、俺の部屋にはベッドがもう一つ置かれる事となり、度々、いや、頻繁にクリスティアナ様が泊まりに来るようになるのであった。
そこはフェオ専用のベッドを用意するだけでよいのでは?と思ったが、口に出すことはできなかった。
どうしてこうなった。
「今日も沢山魔法の練習をしましたわね。治癒魔法を使うのも自信がついてきましたわ」
こちらを向いて、優雅に咲き誇るバラのような笑顔で話すクリスティアナ様。今三人が居るのは、城で間借りしている俺の部屋の寝室である。
「ソ、ソウデスネ」
確かに、俺の部屋にベッドを追加で置く許可はしたが、初日から泊まりに来るのは如何なものだろうか。仮にも王族のお姫様。子供とはいえ、ちょっと不味いのではなかろうか。
「ですがまだまだ力不足ですわ。もっともっと練習をしないといけませんわ」
決意も新たに、こちらに向かって意気込みを語るクリスティアナ様。大変真面目な子だとは思うが、寝間着で意気込まれても困るのだが。冬なので厚着をしているが、歳相応でない大きな胸がいつもより主張していた。これは不味い。つい目線がそっちに行ってしまう。慌てて目を反らすと、フェオと目が合った。
「シリウス・・・?」
ジト目でこちらを見るフェオ。バレてるな、こりゃ。こんな時は何か言われる前に逃げるに限る。
「それでは明日も早いことだし、そろそろ寝ましょうか」
「そうだね。シリウスが変な気を起こす前に寝よう寝よう」
そう言ってフェオがいつものように俺の布団に潜り込んできた。
「ちょっと待ちなさい、フェオ。どこで寝ようとしているのですか?」
「え?もちろんシリウスの隣だよ?」
「な!そこは私の場所ですわよ!」
そういうや否やフェオを布団から引き摺り出した。
「ちょっと、何するのよクリピー!寒いじゃない!」
そうして取っ組み合いの喧嘩が始まった。お互いに魔法を使わないだけ、まだ理性が残っているようである。
「あー、二人で一緒に寝てはどうですか?私はそちらの布団で寝ますので」
遠慮がちに提案してみたのだが・・・
「何言ってるの!それじゃ意味無いじゃん!!」
「そうですわ。そう言う事ではありませんわ!」
ヒートアップした二人には聞き入れて貰えなかった。そもそも何故、一緒の布団で寝る事になっているのか。その前提がそもそも間違っていることに気がついているのだろうか?
尚もキャアキャアとじゃれ合っている二人を置いといて布団に潜り込もうとすると、
「ちょっとシリウス、何、自分だけ先に寝ようとしているのよ!一人だけ寝ようとするなんてずる・・・ねえ、こんなに広いベッドならさ、三人で一緒に寝ればいいんじゃない?」
「はぁ!?フェオ、お前、何を言って・・・」
「名案ですわ!三人で一緒に寝ればいいのですわ!」
そう言って二人が俺の左右に潜り込んできた。え?ちょっと待てよ!
この状態は非常によろしく無い状態なのではなかろうか。右にクリスティアナ様、左にフェオ。なんでなのかは知らないが、それぞれ俺の腕にしがみついて寝ている。いくら未成年で婚約者だとしても誰かに見られると不味い。
特にこれが国王陛下にバレたらただでは済まないだろう。どこか僻地へ飛ばされるかもしれない。そうなれば・・・あれ?そうなればゲームのシナリオから離れることができて、いいんじゃね?今の生活も悪くは無いが、腐っても公爵家。生活に不便することは無いだろうし、自由気ままな田舎暮らしはさぞ楽しかろう。こんな窮屈な生活とはオサラバさ!
そうして俺は安心して寝床についた。
が、しかし。クリスティアナ様もフェオと同じく寝相があまりよろしくないようであり、ちょいちょい蹴りが入った。両サイドから入れられる蹴りによって相変わらず安眠はできなかった。あとクリスティアナ様、寝ぼけて俺の腕を両股で挟むのは止めていただきたい。シリウス君の豆柴が牙を剥くと色々とあれなので。
先程の魔法で俄然やる気が出たクリスティアナ様が、フェオのことを既に先生と呼んでいた。
「じゃあ、まずは広域大量破壊魔法を・・・」
「ストーップ!まずは、魔物の鎮圧で疲弊した兵士達を癒す魔法からにしませんか?その方が、絶対これから役に立ちますよ」
恐らくフェオはそんな大魔法なんて知らないであろうが、腐っても妖精。万が一の可能性がある。クリスティアナ様がデストロイヤーにならないように全力で避ける。
「それもそうですわね。討伐に行った兵士達がみんな無事で戻って来るまでに、しっかりマスターしなくては」
基本はいい子なクリスティアナ様は、すぐに熱心に魔法の訓練を始めた。
「まずは一番簡単な、気分を穏やかにする魔法、リラックスからだよ」
フェオはフェオで、妖精らしく魔法の知識は豊富だった。すぐにクリスティアナ様の魔法の素養を見切って、使えそうな魔法から教え始めた。
フェオ先生による有難い魔法の講義が終わり、実践すること数回。無事にクリスティアナ様はリラックスの魔法を習得したようだ。
「これで戦いで痛めた心の傷を癒すことができますわ」
クリスティアナ様はまるで天使のような微笑みを浮かべて、自分のできる事が増えたことに満足そうだった。
「でも、あまりにも酷い心の傷には対応仕切れないからね」
フェオ先生はその魔法を過信し過ぎるな、と釘を刺していた。さすがである。アフターフォローも完璧だ。
「その場合はどうするのですか?」
「う~ん、もっと強力に精神を操る新魔法を創るしかないかな~」
そう言って、こちらを見る二人。そんな目で見られても、そんなにホイホイ魔法は創りませんよ。
「それにしても、シリウスの頭の中、どうなってるの?一度、覗いて見たいわ。そうだ、今度、夢の中に遊びに行こう!」
フェオがまた急に妙なことを言い出した。夢の中に入る?妖精ならそのくらいのことは簡単にやってのけそうなので全力で拒否した。
「やめてくれ。俺の安眠をこれ以上妨げないでくれ」
「えー、つまんないー」
頬を膨らませているが、ただでさえ、隣で寝ている寝相の悪いフェオを潰さないように神経をすり減らしながら眠っているのに、これ以上は勘弁だ。
「シリウス様は安眠を妨げられているのですか?フェオに?」
「え?」
「そんなわけ無いじゃない。シリウスの隣で大人しく寝てるわよ。失礼ね」
「え?」
「え?」
それにしては夜中に何回も蹴りが入っているぞ。大人しくは寝てないと思・・・。
「シリウス様の隣で大人しく寝てる・・・?」
ギョッとして、恐ろしいほど低い声を発したクリスティアナ様の方を見た。フェオは早くも俺の後ろに隠れ、俺を盾にしていた。コイツ分かっててわざと言ったな・・・。
「ク、クリスティアナ様。ほら、私の部屋にはベッドが一つしかないじゃないですか。他の部屋のベッドもフェオにはサイズが大きすぎるし、フェオを一人にすると何を仕出かすか分からないから、仕方なく一緒に寝てるんですよ」
と、必死の抵抗を試みた。
「フェオと一緒に寝てる・・・?」
「・・・ゴメンナサイ、ケイソツナコウドウデシタ」
この日以降、俺の部屋にはベッドがもう一つ置かれる事となり、度々、いや、頻繁にクリスティアナ様が泊まりに来るようになるのであった。
そこはフェオ専用のベッドを用意するだけでよいのでは?と思ったが、口に出すことはできなかった。
どうしてこうなった。
「今日も沢山魔法の練習をしましたわね。治癒魔法を使うのも自信がついてきましたわ」
こちらを向いて、優雅に咲き誇るバラのような笑顔で話すクリスティアナ様。今三人が居るのは、城で間借りしている俺の部屋の寝室である。
「ソ、ソウデスネ」
確かに、俺の部屋にベッドを追加で置く許可はしたが、初日から泊まりに来るのは如何なものだろうか。仮にも王族のお姫様。子供とはいえ、ちょっと不味いのではなかろうか。
「ですがまだまだ力不足ですわ。もっともっと練習をしないといけませんわ」
決意も新たに、こちらに向かって意気込みを語るクリスティアナ様。大変真面目な子だとは思うが、寝間着で意気込まれても困るのだが。冬なので厚着をしているが、歳相応でない大きな胸がいつもより主張していた。これは不味い。つい目線がそっちに行ってしまう。慌てて目を反らすと、フェオと目が合った。
「シリウス・・・?」
ジト目でこちらを見るフェオ。バレてるな、こりゃ。こんな時は何か言われる前に逃げるに限る。
「それでは明日も早いことだし、そろそろ寝ましょうか」
「そうだね。シリウスが変な気を起こす前に寝よう寝よう」
そう言ってフェオがいつものように俺の布団に潜り込んできた。
「ちょっと待ちなさい、フェオ。どこで寝ようとしているのですか?」
「え?もちろんシリウスの隣だよ?」
「な!そこは私の場所ですわよ!」
そういうや否やフェオを布団から引き摺り出した。
「ちょっと、何するのよクリピー!寒いじゃない!」
そうして取っ組み合いの喧嘩が始まった。お互いに魔法を使わないだけ、まだ理性が残っているようである。
「あー、二人で一緒に寝てはどうですか?私はそちらの布団で寝ますので」
遠慮がちに提案してみたのだが・・・
「何言ってるの!それじゃ意味無いじゃん!!」
「そうですわ。そう言う事ではありませんわ!」
ヒートアップした二人には聞き入れて貰えなかった。そもそも何故、一緒の布団で寝る事になっているのか。その前提がそもそも間違っていることに気がついているのだろうか?
尚もキャアキャアとじゃれ合っている二人を置いといて布団に潜り込もうとすると、
「ちょっとシリウス、何、自分だけ先に寝ようとしているのよ!一人だけ寝ようとするなんてずる・・・ねえ、こんなに広いベッドならさ、三人で一緒に寝ればいいんじゃない?」
「はぁ!?フェオ、お前、何を言って・・・」
「名案ですわ!三人で一緒に寝ればいいのですわ!」
そう言って二人が俺の左右に潜り込んできた。え?ちょっと待てよ!
この状態は非常によろしく無い状態なのではなかろうか。右にクリスティアナ様、左にフェオ。なんでなのかは知らないが、それぞれ俺の腕にしがみついて寝ている。いくら未成年で婚約者だとしても誰かに見られると不味い。
特にこれが国王陛下にバレたらただでは済まないだろう。どこか僻地へ飛ばされるかもしれない。そうなれば・・・あれ?そうなればゲームのシナリオから離れることができて、いいんじゃね?今の生活も悪くは無いが、腐っても公爵家。生活に不便することは無いだろうし、自由気ままな田舎暮らしはさぞ楽しかろう。こんな窮屈な生活とはオサラバさ!
そうして俺は安心して寝床についた。
が、しかし。クリスティアナ様もフェオと同じく寝相があまりよろしくないようであり、ちょいちょい蹴りが入った。両サイドから入れられる蹴りによって相変わらず安眠はできなかった。あとクリスティアナ様、寝ぼけて俺の腕を両股で挟むのは止めていただきたい。シリウス君の豆柴が牙を剥くと色々とあれなので。
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