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専用アイテム②

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 しっかりと睡眠をとった俺たちは、さっそくルガラドさんの工房を訪ねることにした。さすがにあまり早く行き過ぎると迷惑だろうと思って、十時くらいになるまで裏通りを見て回った。
 その結果、いくつかの落ち着いた雰囲気のカフェを見つけることができた。冒険者が利用するというよりも、この辺りの住人が普段から利用しているようである。

「お昼はここのカフェで食べようか」
「あら、なかなかおしゃれでいいじゃない。デザートもあるかしら?」
「どうやらあるみたいだよ。プリンとか言う名前の新作デザートがあるらしいよ。これはぜひ試してみたいね」
「プリン……確かに何か、引かれるものがあるわね」

 そんな話をしていると、あっという間に十時になっていた。ルガラドさんの工房からは今日も熱気が噴き出ていた。リズム良くカンカンという小気味よい音が聞こえている。
 俺は剣を使うことはできないが、見るのは好きだったりする。そのうち観賞用の剣を手に入れてみようかな?

「ルガラドさん、こんにちは」
「こんにちは、ヒゲもじゃ~」
「おう、来たか。例の物、完成してるぜ」

 ニヤリと良い笑顔で笑うルガラドさん。どうやら会心の作品ができあがっているようだ。俺は期待に胸を膨らませて、工房の奥へと入った。

「これだ」
「すごい! これって、もしかして全部銀製品!? こんなに小さいのに、お店に売ってるのと遜色ないよ」
「やるわね、ヒゲもじゃ。さすがだわ。見てよ、フェル! あたしの手にピッタリよ。最高じゃない」

 リリアがコップを手に持って、ものすごく喜んでいる。案内されたテーブルの上には小さな食器が並んでいた。
 コップやお皿、さらにはナイフにフォークまである。どうやって再現したのか全く分からない。こんな小さなものを作り出せるハンマーがあるものなのか。

「ルガラドさん、このナイフ、本当に切れそうですよね」
「何を言ってるんだ。ちゃんと切れるぞ」
「それはすごい!」

 さすがはドワーフ。細部まで抜かりなし。これは使ってみるのが楽しみだぞ。さっそくお昼のときに使って見ようと思う。

「ルガラドさん、ありがとうございます。これはリリア専用アイテムの代金です」
「おう、ありがとうよって、お前、さすがに白金貨一枚は多くねえか!?」

 ルガラドさんが白金貨を見て驚いている。

「大丈夫ですよ。まだあと九十枚くらい残ってますから」
「お前さん、もしかして、今ウワサのドラゴンスレイヤーか?」
「ええ、そうですけど……」
「なるほど。そう言うことか。それじゃ、ありがたくいただいとくぜ。何か困ったことがあったら、いつでも来い。何でも協力するぜ」
「はい。そのときはよろしくお願いします」

 俺たちは握手を交わした。ルガラドさんの腕は本物だ。ここで仲良くなっておいて損はないだろう。今後もリリア専用アイテムを作ってもらうかも知れないからね。
 ルガラドさんの工房をあとにすると市場へと向かった。ここで何か果物を買って、リリアのナイフの切れ味を試してみたい。

「お、このリンゴなんて良いんじゃない?」
「おいしそうね。それにしましょうか」
「おばさん、一つ」

 リンゴを買うと、近くの公園のベンチに座った。さっそく俺が持っていたナイフでリンゴを切ると、リリアサイズに作られたお皿の上にのせる。なるべく小さく切ったつもりだったが、それでもまだ大きい。

「よーし、それじゃさっそく……おおお! 切れたわ、スッパリと切れたわ!」

 良く見ると、リンゴは間違いなく、リリアが持っているナイフで切られていた。リリアにフォークを渡すと、それを使って器用に食べ始めた。
 ようやくリリアの小さな口に合うサイズの食べ物を食べさせることができたぞ。これまでは大きめなものに、かぶりついてもらっていたからね。

「ウフフ、良いわね、これ。とっても気に入ったわ。あたしも食べるときのマナーを勉強した方が良いかしら?」
「そうだね。国王陛下と会食するときまでには身につけておいた方が良いかもね」
「それならフェルに恥をかかせないように、練習しておかないといけないわね」

 俺たちはお互いに顔を見合わせて笑った。そんな日が来るはずはないけどね。多分。
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