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ウォータードラゴン②

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 甲板に上がってきた冒険者たちは、どうやらあまり役には立ちそうにないようだ。さすがにウォータードラゴンが動き回っている川の中に入っていくわけにはいかない。そのため、攻撃は遠距離からになってしまうのだが、弓矢による攻撃ではドラゴンの硬い鱗を貫くことはできなさそうである。
 そもそも、すぐに水中に潜るドラゴンに当てることすら難しそうだ。

 そうなると、必然的に魔法による攻撃になるのだが……見た感じ、強力な魔法を使えそうな人はいなかった。

「どうするの? このままだと、王都に着いちゃうわよ」
「それはまずい。でも、顔を出したところを正確に狙うのは難しいと思う」
「それならまとめてドカンね」

 まとめてドカン……さすがに水中で爆発魔法を使うのはやめた方が良いな。多くの魚が巻き添えになりそうだし、水しぶきもすごそうだ。
 よし、それなら水流を操ってウォータードラゴンを空中に引っ張り出そう。そこをドカンだ。

「リリア、ウォータードラゴンって空を飛ぶの?」
「うーん、翼は小さくなってるみたいだし、飛ばないんじゃないかな?」
「了解。それならやつを空中で爆破する」
「え? フェル、本気で言ってる!?」
「もちろん。ウォーター・トルネード!」

 水面に大きな渦が現れた。それはウォータードラゴンを飲み込み、そのまま竜巻のように空中へと伸びていった。

「お、おい! あれ、何だよ!?」
「一体何が起こっているんだ?」
「見ろ! あの中にドラゴンがいるぞ!」

 どうやらウォータードラゴンの潜水能力よりも、俺の魔法の方が上だったようである。水のブレスを押し返した時点で、何となくいけそうな気はしていたけど、内心ヒヤヒヤしていた。

 水の竜巻がはじけるとウォータードラゴンが空中に放り出された格好になった。体をくねらせているが、それでは次の攻撃はよけられないだろう。

「フレア・バースト!」

 まばゆい閃光が空をかけ抜けた。直後、空に轟音が鳴り響いた。ミシミシとリリアのシールド魔法が悲鳴を上げている。だがしかし、空から熱と衝撃波が降りそそぐことはなかった。さすがはリリアのシールド魔法。何ともないぜ。……たぶん。

 ウォータードラゴンのものと思われる大きな魔石が空から落ちてきて、ドスンと甲板にめり込んだ。これはあとで弁償しないといけないやつだな……。

「ちょっとフェル! なんて魔法を使っているのよ! もう少しであたしのシールドが割れちゃうところだったじゃない!」

 めっちゃリリアに怒られた。何なら飛び蹴りまで入った。よっぽどまずかったらしい。俺はその場で正座させられて、ひたすら説教される他なかった。
 あちらこちらで歓声が上がっていたが、こちらはそれどころではなかった。

「フェルさん、これは一体どうしたことで……?」

 振り向くと、困惑した表情のサンチョさんと、心配そうにこちらを見ているハウジンハ伯爵の姿があった。周囲に他の魔物の気配はない。甲板に上がってきても大丈夫だろう。

「ちょっとやり過ぎたみたいで、リリアに怒られているところです……」
「やり過ぎた……やはりさっきの轟音はフェルさんの魔法だったのですね。ウォータードラゴンが出たと、ものすごい騒ぎになっていたのですが、もしかして?」
「ええ、ついさっき、倒したところです。ですが、倒し方がまずかったみたいで」

 俺は鬼のような形相をしているリリアをチラリと見た。まだ怒ってらっしゃる。

「フェル殿、あの大きな魔石がウォータードラゴンの魔石ですかな?」
「ええ、そうです。落ちてきた衝撃で甲板に穴が空いてしまったんですけど……やっぱり弁償ですよね?」

 それを聞いたハウジンハ伯爵が笑い始めた。サンチョさんも笑っている。

「サンチョから聞いていたが、フェル殿は実に面白い人だな。魔導船を守ってくれた恩人にお金を請求する人などいないだろう。もしそんな輩がいたとしたら、代わりに私が全額を支払おう」

 良かった。どうやら修理代を支払わなくて済みそうだ。あとはどうやってリリアのご機嫌を取るかだな。……お酒でも飲ませちゃうか? うん、何だかいけそうな気がしてきたぞ。 
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