59 / 214
ウォータードラゴン②
しおりを挟む
甲板に上がってきた冒険者たちは、どうやらあまり役には立ちそうにないようだ。さすがにウォータードラゴンが動き回っている川の中に入っていくわけにはいかない。そのため、攻撃は遠距離からになってしまうのだが、弓矢による攻撃ではドラゴンの硬い鱗を貫くことはできなさそうである。
そもそも、すぐに水中に潜るドラゴンに当てることすら難しそうだ。
そうなると、必然的に魔法による攻撃になるのだが……見た感じ、強力な魔法を使えそうな人はいなかった。
「どうするの? このままだと、王都に着いちゃうわよ」
「それはまずい。でも、顔を出したところを正確に狙うのは難しいと思う」
「それならまとめてドカンね」
まとめてドカン……さすがに水中で爆発魔法を使うのはやめた方が良いな。多くの魚が巻き添えになりそうだし、水しぶきもすごそうだ。
よし、それなら水流を操ってウォータードラゴンを空中に引っ張り出そう。そこをドカンだ。
「リリア、ウォータードラゴンって空を飛ぶの?」
「うーん、翼は小さくなってるみたいだし、飛ばないんじゃないかな?」
「了解。それならやつを空中で爆破する」
「え? フェル、本気で言ってる!?」
「もちろん。ウォーター・トルネード!」
水面に大きな渦が現れた。それはウォータードラゴンを飲み込み、そのまま竜巻のように空中へと伸びていった。
「お、おい! あれ、何だよ!?」
「一体何が起こっているんだ?」
「見ろ! あの中にドラゴンがいるぞ!」
どうやらウォータードラゴンの潜水能力よりも、俺の魔法の方が上だったようである。水のブレスを押し返した時点で、何となくいけそうな気はしていたけど、内心ヒヤヒヤしていた。
水の竜巻がはじけるとウォータードラゴンが空中に放り出された格好になった。体をくねらせているが、それでは次の攻撃はよけられないだろう。
「フレア・バースト!」
まばゆい閃光が空をかけ抜けた。直後、空に轟音が鳴り響いた。ミシミシとリリアのシールド魔法が悲鳴を上げている。だがしかし、空から熱と衝撃波が降りそそぐことはなかった。さすがはリリアのシールド魔法。何ともないぜ。……たぶん。
ウォータードラゴンのものと思われる大きな魔石が空から落ちてきて、ドスンと甲板にめり込んだ。これはあとで弁償しないといけないやつだな……。
「ちょっとフェル! なんて魔法を使っているのよ! もう少しであたしのシールドが割れちゃうところだったじゃない!」
めっちゃリリアに怒られた。何なら飛び蹴りまで入った。よっぽどまずかったらしい。俺はその場で正座させられて、ひたすら説教される他なかった。
あちらこちらで歓声が上がっていたが、こちらはそれどころではなかった。
「フェルさん、これは一体どうしたことで……?」
振り向くと、困惑した表情のサンチョさんと、心配そうにこちらを見ているハウジンハ伯爵の姿があった。周囲に他の魔物の気配はない。甲板に上がってきても大丈夫だろう。
「ちょっとやり過ぎたみたいで、リリアに怒られているところです……」
「やり過ぎた……やはりさっきの轟音はフェルさんの魔法だったのですね。ウォータードラゴンが出たと、ものすごい騒ぎになっていたのですが、もしかして?」
「ええ、ついさっき、倒したところです。ですが、倒し方がまずかったみたいで」
俺は鬼のような形相をしているリリアをチラリと見た。まだ怒ってらっしゃる。
「フェル殿、あの大きな魔石がウォータードラゴンの魔石ですかな?」
「ええ、そうです。落ちてきた衝撃で甲板に穴が空いてしまったんですけど……やっぱり弁償ですよね?」
それを聞いたハウジンハ伯爵が笑い始めた。サンチョさんも笑っている。
「サンチョから聞いていたが、フェル殿は実に面白い人だな。魔導船を守ってくれた恩人にお金を請求する人などいないだろう。もしそんな輩がいたとしたら、代わりに私が全額を支払おう」
良かった。どうやら修理代を支払わなくて済みそうだ。あとはどうやってリリアのご機嫌を取るかだな。……お酒でも飲ませちゃうか? うん、何だかいけそうな気がしてきたぞ。
そもそも、すぐに水中に潜るドラゴンに当てることすら難しそうだ。
そうなると、必然的に魔法による攻撃になるのだが……見た感じ、強力な魔法を使えそうな人はいなかった。
「どうするの? このままだと、王都に着いちゃうわよ」
「それはまずい。でも、顔を出したところを正確に狙うのは難しいと思う」
「それならまとめてドカンね」
まとめてドカン……さすがに水中で爆発魔法を使うのはやめた方が良いな。多くの魚が巻き添えになりそうだし、水しぶきもすごそうだ。
よし、それなら水流を操ってウォータードラゴンを空中に引っ張り出そう。そこをドカンだ。
「リリア、ウォータードラゴンって空を飛ぶの?」
「うーん、翼は小さくなってるみたいだし、飛ばないんじゃないかな?」
「了解。それならやつを空中で爆破する」
「え? フェル、本気で言ってる!?」
「もちろん。ウォーター・トルネード!」
水面に大きな渦が現れた。それはウォータードラゴンを飲み込み、そのまま竜巻のように空中へと伸びていった。
「お、おい! あれ、何だよ!?」
「一体何が起こっているんだ?」
「見ろ! あの中にドラゴンがいるぞ!」
どうやらウォータードラゴンの潜水能力よりも、俺の魔法の方が上だったようである。水のブレスを押し返した時点で、何となくいけそうな気はしていたけど、内心ヒヤヒヤしていた。
水の竜巻がはじけるとウォータードラゴンが空中に放り出された格好になった。体をくねらせているが、それでは次の攻撃はよけられないだろう。
「フレア・バースト!」
まばゆい閃光が空をかけ抜けた。直後、空に轟音が鳴り響いた。ミシミシとリリアのシールド魔法が悲鳴を上げている。だがしかし、空から熱と衝撃波が降りそそぐことはなかった。さすがはリリアのシールド魔法。何ともないぜ。……たぶん。
ウォータードラゴンのものと思われる大きな魔石が空から落ちてきて、ドスンと甲板にめり込んだ。これはあとで弁償しないといけないやつだな……。
「ちょっとフェル! なんて魔法を使っているのよ! もう少しであたしのシールドが割れちゃうところだったじゃない!」
めっちゃリリアに怒られた。何なら飛び蹴りまで入った。よっぽどまずかったらしい。俺はその場で正座させられて、ひたすら説教される他なかった。
あちらこちらで歓声が上がっていたが、こちらはそれどころではなかった。
「フェルさん、これは一体どうしたことで……?」
振り向くと、困惑した表情のサンチョさんと、心配そうにこちらを見ているハウジンハ伯爵の姿があった。周囲に他の魔物の気配はない。甲板に上がってきても大丈夫だろう。
「ちょっとやり過ぎたみたいで、リリアに怒られているところです……」
「やり過ぎた……やはりさっきの轟音はフェルさんの魔法だったのですね。ウォータードラゴンが出たと、ものすごい騒ぎになっていたのですが、もしかして?」
「ええ、ついさっき、倒したところです。ですが、倒し方がまずかったみたいで」
俺は鬼のような形相をしているリリアをチラリと見た。まだ怒ってらっしゃる。
「フェル殿、あの大きな魔石がウォータードラゴンの魔石ですかな?」
「ええ、そうです。落ちてきた衝撃で甲板に穴が空いてしまったんですけど……やっぱり弁償ですよね?」
それを聞いたハウジンハ伯爵が笑い始めた。サンチョさんも笑っている。
「サンチョから聞いていたが、フェル殿は実に面白い人だな。魔導船を守ってくれた恩人にお金を請求する人などいないだろう。もしそんな輩がいたとしたら、代わりに私が全額を支払おう」
良かった。どうやら修理代を支払わなくて済みそうだ。あとはどうやってリリアのご機嫌を取るかだな。……お酒でも飲ませちゃうか? うん、何だかいけそうな気がしてきたぞ。
10
お気に入りに追加
3,290
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
俺だけに効くエリクサー。飲んで戦って気が付けば異世界最強に⁉
まるせい
ファンタジー
異世界に召喚された熱海 湊(あたみ みなと)が得たのは(自分だけにしか効果のない)エリクサーを作り出す能力だった。『外れ異世界人』認定された湊は神殿から追放されてしまう。
貰った手切れ金を元手に装備を整え、湊はこの世界で生きることを決意する。
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる