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船の旅②
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小舟や荷物を上げ下げする用の魔道具も設置されているらしい。それが動いているのも迫力があるらしく、多くの人が見学に来るそうである。俺も見てみたいな。
「すごい魔道具があるもんだね。リリアもビックリしたんじゃないの?」
「ビックリしたわよ。またこんなすごい物を作れるようになっているんだもの。でも、昔はもっとすごい魔道具があったわよ。あの頃は機械って言っていたけど」
「機械? 魔道具と違うの?」
「魔道具なんかよりももっと複雑な作りをしているのよ。作り方は絶対に覚えられないわ。精巧な設計図が必要ね」
どうやらこの世界には、その昔、機械と呼ばれる魔道具を使ったものすごい文明があったみたいだ。だが、今はもう存在していないようである。その名残が魔道具なのかも知れないな。
それにしても、どうしてそんなすごい文明がすっかりと消えてしまったのだろうか。
「リリア、どうして機械を使っていた時代の文明はなくなったの?」
「怒らせちゃダメな人を怒らせたからよ」
「だれなの?」
「それは……あたしの口からは言いたくないわ」
うーん、残念。だがリリアの口から言いたくないってことは、リリアにとって縁の深い人物なのだろう。妖精の王様か何かかな? 確かに妖精を怒らせたら、妖精のイタズラによって、全部の機械が動かなくなってしまうかもね。俺もリリアを怒らせないように気をつけないと。
「ほらリリア、この果物、おいしいよ」
リリアが食べやすいように切った果物を、リリアの口元に持っていった。
「どうしたのよ、急に。何か下心があるのかしら?」
リリアのご機嫌を取ろうとしたことがバレたようである。鋭い。リリアはずっとリリアのままでいて欲しいかな。
「フェルさん、船内にいるときは自由行動で構いませんからね。さすがに問題は起こらないでしょうし、ハウジンハ伯爵のそばには常に何人かの護衛がついているはずですからね」
「サンチョさんの護衛は大丈夫ですか?」
「私にも護衛がいますからご心配なく」
「あの……俺って必要でした?」
ハッハッハと笑うサンチョさん。どういうことなの?
「何かあったときの切り札ですよ。切り札は常に取っておくべきですからね。何事もなければそれで良いじゃないですか」
再び笑うサンチョさん。確かにそうなのだが、何だか仕事をしていないようで気が重い。かと言って、何か大きな問題が起こっても困る。考えてみれば贅沢な悩みだな。
思わず苦笑いしていると、リリアがほっぺたに顔をこすりつけてきた。どうやら慰めてくれたらしい。
お返しをしたいところだが、リリアの顔が小さすぎて難しい。せめて俺が小さくなることができたら良かったのに。……いや、もしそれができたら理性が失われそうだから、できない方が良いのかも知れない。
魔導船の中にはお風呂まであった。川からくみ上げるので、水は実質使い放題だ。だが、火を使うのは禁止されている。火事になったら大変だからね。
そのため、料理を作るときも火を使わない「加熱の魔道具」が使われているそうである。
もちろん、お風呂の湯を沸かすのも魔道具だ。魔導船の乗船券が高いのは、魔石を大量に使うからなのかも知れない。だがそのおかげで、魔石の需要が尽きることがなく、冒険者たちが魔石を売ってお金を稼ぐことができるのだ。
魔道具師と冒険者はお互いに持ちつ持たれつの関係なのかも知れない。そうなると、魔石を生み出し続けている魔物の存在は、非常にありがたい存在だと言えるだろう。
魔物は一体何のために生まれてくるのだろうか。そんなことを考えると、夜眠れなくなりそうである。
「すごい魔道具があるもんだね。リリアもビックリしたんじゃないの?」
「ビックリしたわよ。またこんなすごい物を作れるようになっているんだもの。でも、昔はもっとすごい魔道具があったわよ。あの頃は機械って言っていたけど」
「機械? 魔道具と違うの?」
「魔道具なんかよりももっと複雑な作りをしているのよ。作り方は絶対に覚えられないわ。精巧な設計図が必要ね」
どうやらこの世界には、その昔、機械と呼ばれる魔道具を使ったものすごい文明があったみたいだ。だが、今はもう存在していないようである。その名残が魔道具なのかも知れないな。
それにしても、どうしてそんなすごい文明がすっかりと消えてしまったのだろうか。
「リリア、どうして機械を使っていた時代の文明はなくなったの?」
「怒らせちゃダメな人を怒らせたからよ」
「だれなの?」
「それは……あたしの口からは言いたくないわ」
うーん、残念。だがリリアの口から言いたくないってことは、リリアにとって縁の深い人物なのだろう。妖精の王様か何かかな? 確かに妖精を怒らせたら、妖精のイタズラによって、全部の機械が動かなくなってしまうかもね。俺もリリアを怒らせないように気をつけないと。
「ほらリリア、この果物、おいしいよ」
リリアが食べやすいように切った果物を、リリアの口元に持っていった。
「どうしたのよ、急に。何か下心があるのかしら?」
リリアのご機嫌を取ろうとしたことがバレたようである。鋭い。リリアはずっとリリアのままでいて欲しいかな。
「フェルさん、船内にいるときは自由行動で構いませんからね。さすがに問題は起こらないでしょうし、ハウジンハ伯爵のそばには常に何人かの護衛がついているはずですからね」
「サンチョさんの護衛は大丈夫ですか?」
「私にも護衛がいますからご心配なく」
「あの……俺って必要でした?」
ハッハッハと笑うサンチョさん。どういうことなの?
「何かあったときの切り札ですよ。切り札は常に取っておくべきですからね。何事もなければそれで良いじゃないですか」
再び笑うサンチョさん。確かにそうなのだが、何だか仕事をしていないようで気が重い。かと言って、何か大きな問題が起こっても困る。考えてみれば贅沢な悩みだな。
思わず苦笑いしていると、リリアがほっぺたに顔をこすりつけてきた。どうやら慰めてくれたらしい。
お返しをしたいところだが、リリアの顔が小さすぎて難しい。せめて俺が小さくなることができたら良かったのに。……いや、もしそれができたら理性が失われそうだから、できない方が良いのかも知れない。
魔導船の中にはお風呂まであった。川からくみ上げるので、水は実質使い放題だ。だが、火を使うのは禁止されている。火事になったら大変だからね。
そのため、料理を作るときも火を使わない「加熱の魔道具」が使われているそうである。
もちろん、お風呂の湯を沸かすのも魔道具だ。魔導船の乗船券が高いのは、魔石を大量に使うからなのかも知れない。だがそのおかげで、魔石の需要が尽きることがなく、冒険者たちが魔石を売ってお金を稼ぐことができるのだ。
魔道具師と冒険者はお互いに持ちつ持たれつの関係なのかも知れない。そうなると、魔石を生み出し続けている魔物の存在は、非常にありがたい存在だと言えるだろう。
魔物は一体何のために生まれてくるのだろうか。そんなことを考えると、夜眠れなくなりそうである。
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