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ペトラ夫人②
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「リリア、どうする?」
「そうね、明日にしましょうか。まだ食べ物のお店しか見て回ってないしね」
「おお、それなら私の商会も見に来て下さいよ。きっと満足してもらえる商品があるはずですよ。品ぞろえならどこにも負けません」
そんな話をしている間に、ハウジンハ伯爵夫妻は正気に戻ったらしい。目を腫らしていたが、落ち着きを取り戻していた。
「お見苦しいところを見せてしまって申し訳ない。治癒師殿に何かお礼をしたいのだが……」
「ええ、ええ、ラウレンスの言う通りですわ。恩人に何もできないなんて、あってはなりませんわ」
この展開は予想していたけど、どうしたものかな。何かお礼をもらった方が後腐れなくて良いんだろうけど、特に欲しい物はないんだよね。
あ、そうだ、一個だけあるな。でもアレはさすがに高いかな? でもあれば便利だし、聞くだけ聞いてみようかな?
「それではあの、小さい容量でも構わないので、魔法袋をいただけませんか?」
ハウジンハ伯爵とペトラ夫人がにこやかな笑顔を作った。
「もちろんですとも。すぐにご用意いたしましょう」
やったぞ。まさかこんなに早く手に入るとは思わなかった。貴族では持っている人もそれなりにいたが、さすがに冒険者の中で持っている人はほとんどいなかった。それだけ流通量が少なく高額なのだ。
ハウジンハ伯爵はすぐに魔法袋を用意してくれた。説明によると、どうやら倉庫一軒分くらいの物を入れることができるそうである。呪いを解除したお礼にしては高すぎるのではなかろうか? 何だか申し訳なく思ってしまった。
もっと容量の小さい、それこそ「チェスト一個分ぐらいの容量のものでももらえたら」と思っていたのに思わぬ誤算だ。だが今さら「やっぱり要らないです」とも言えず、受け取ることにした。相手は喜んでいたことだし、ヨシとしよう。
報酬の魔法袋を受け取ると、俺たちは早々にハウジンハ伯爵邸を去ることにした。ハウジンハ伯爵とサンチョさんは最初からそうするように話をしていたらしく、特に引き留められることなくサンチョ邸に帰ることができた。
「フェルさん、本当にありがとうございます。ペトラ夫人は声が出なくなってから、社交界に全く参加できなかったのですよ。呪いが移る、なんて、根も葉もないウワサが広がっていたようなのです」
「それも相手側の戦略だったんでしょうね。でも大丈夫なのですか? また呪われたりする危険があるのではないでしょうか」
「それは大丈夫です。ペトラ夫人は呪い避けのネックレスを付けていますから。あれがあれば、もう呪いにかかることはないでしょう」
やっぱり貴族は大変だな。呪い呪われ、どこかでだれかの恨みを買うことになるのだ。それを防ぐために、お金をかけて対策をしなければならない。どうりで貴族はこぞってお金を欲しがるわけだ。
「ねえ、フェル、やることは終わったし、せっかく魔法袋も手に入ったし、時間もありそうだから買い物の続きに行こうよ」
「そうだね。そうしようか。それではサンチョさん、ちょっと出かけて来ますね」
「分かりました。馬車と案内人を付けましょうか?」
「その必要はありませんよ。好きなところに行って、好きなときに戻って来ますから」
冒険者の特権、それは何にも縛られない自由であることだ。こればかりはたとえ貴族でもかなわないだろう。サンチョさんに挨拶をすると、エベランの街に出かけて行った。
まずはサンチョ商会に行ってみようかな? 品ぞろえがすごく良いみたいだしね。その場にサンチョさんがいれば「何でも持ってけ」って言われそうなので、やはり案内人を断っておいて良かったと思う。
自分の力で稼いだお金で物を買うのも冒険者の醍醐味だ。それで少しずつ生活が便利になっていけば「なお良し」だ。まあ、魔法袋をもらったので、ずいぶんと飛び級した感じはあるけどね。
「そうね、明日にしましょうか。まだ食べ物のお店しか見て回ってないしね」
「おお、それなら私の商会も見に来て下さいよ。きっと満足してもらえる商品があるはずですよ。品ぞろえならどこにも負けません」
そんな話をしている間に、ハウジンハ伯爵夫妻は正気に戻ったらしい。目を腫らしていたが、落ち着きを取り戻していた。
「お見苦しいところを見せてしまって申し訳ない。治癒師殿に何かお礼をしたいのだが……」
「ええ、ええ、ラウレンスの言う通りですわ。恩人に何もできないなんて、あってはなりませんわ」
この展開は予想していたけど、どうしたものかな。何かお礼をもらった方が後腐れなくて良いんだろうけど、特に欲しい物はないんだよね。
あ、そうだ、一個だけあるな。でもアレはさすがに高いかな? でもあれば便利だし、聞くだけ聞いてみようかな?
「それではあの、小さい容量でも構わないので、魔法袋をいただけませんか?」
ハウジンハ伯爵とペトラ夫人がにこやかな笑顔を作った。
「もちろんですとも。すぐにご用意いたしましょう」
やったぞ。まさかこんなに早く手に入るとは思わなかった。貴族では持っている人もそれなりにいたが、さすがに冒険者の中で持っている人はほとんどいなかった。それだけ流通量が少なく高額なのだ。
ハウジンハ伯爵はすぐに魔法袋を用意してくれた。説明によると、どうやら倉庫一軒分くらいの物を入れることができるそうである。呪いを解除したお礼にしては高すぎるのではなかろうか? 何だか申し訳なく思ってしまった。
もっと容量の小さい、それこそ「チェスト一個分ぐらいの容量のものでももらえたら」と思っていたのに思わぬ誤算だ。だが今さら「やっぱり要らないです」とも言えず、受け取ることにした。相手は喜んでいたことだし、ヨシとしよう。
報酬の魔法袋を受け取ると、俺たちは早々にハウジンハ伯爵邸を去ることにした。ハウジンハ伯爵とサンチョさんは最初からそうするように話をしていたらしく、特に引き留められることなくサンチョ邸に帰ることができた。
「フェルさん、本当にありがとうございます。ペトラ夫人は声が出なくなってから、社交界に全く参加できなかったのですよ。呪いが移る、なんて、根も葉もないウワサが広がっていたようなのです」
「それも相手側の戦略だったんでしょうね。でも大丈夫なのですか? また呪われたりする危険があるのではないでしょうか」
「それは大丈夫です。ペトラ夫人は呪い避けのネックレスを付けていますから。あれがあれば、もう呪いにかかることはないでしょう」
やっぱり貴族は大変だな。呪い呪われ、どこかでだれかの恨みを買うことになるのだ。それを防ぐために、お金をかけて対策をしなければならない。どうりで貴族はこぞってお金を欲しがるわけだ。
「ねえ、フェル、やることは終わったし、せっかく魔法袋も手に入ったし、時間もありそうだから買い物の続きに行こうよ」
「そうだね。そうしようか。それではサンチョさん、ちょっと出かけて来ますね」
「分かりました。馬車と案内人を付けましょうか?」
「その必要はありませんよ。好きなところに行って、好きなときに戻って来ますから」
冒険者の特権、それは何にも縛られない自由であることだ。こればかりはたとえ貴族でもかなわないだろう。サンチョさんに挨拶をすると、エベランの街に出かけて行った。
まずはサンチョ商会に行ってみようかな? 品ぞろえがすごく良いみたいだしね。その場にサンチョさんがいれば「何でも持ってけ」って言われそうなので、やはり案内人を断っておいて良かったと思う。
自分の力で稼いだお金で物を買うのも冒険者の醍醐味だ。それで少しずつ生活が便利になっていけば「なお良し」だ。まあ、魔法袋をもらったので、ずいぶんと飛び級した感じはあるけどね。
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