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盗賊団②

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 次の日も快晴だった。昨日よりも多少雲があるが、雨が降ることはないだろう。
 俺たちが護衛する隊商は朝食を食べるとすぐに出発した。今日の俺たちはなるべく隊商の先頭を進んだ。この位置なら盗賊団が現れてもすぐに分かる。
 町から出るとすぐにレイザーさんが近づいて来た。

「どうだ、フェル、来てるか?」
「来てますね。前方の左手の草むらにいます。こちらと同じくらいの速さで、同じ方向に移動してますね」
「それじゃ、間違いないか。ライナー、抜かるなよ」
「わ、分かってますよ」

 ライナーの緊張感が高まっている。本当に大丈夫かな? 何だか心配になってきたぞ。ルシアナとベールスは落ち着いた様子をしている。こっちは問題なさそうだ。

「サンチョさんに知らせた方が良いんじゃないですか?」
「そうだな。一応、知らせておくか。今日のところは引き返すという判断もあるかも知れない。だが、いつまでもあの町にとどまるわけには行かないからな。どうなることやら」

 レイザーさんがそうぼやくと、サンチョさんが乗る馬車へと向かった。どのような結果になっても良いように、周囲の警戒は怠らない。俺たちの前方には別の隊商が進んでいる。もしかすると、そちらを狙っている可能性もあるだろう。

 程なくしてレイザーさんが戻って来た。できれば先に進みたいとのことだった。
 あれかな、初日の俺との約束がサンチョさんを急がせているのかな? どうも、奥さんの調子は良くないみたいだったし、できるだけ早くエベランに戻りたいのかも知れない。

 それでも、盗賊団に襲われて死んでしまったらどうしようもないと思うんだけどね。こちらにシルバーランクの冒険者が二組いることも、サンチョさんを前に進ませる要因になっているのかも知れない。

 シルバーランクの冒険者ともなれば、その辺りのごろつきには絶対に負けないだろうからね。凶暴な魔物と日々戦っているのはだてじゃないと言うことだ。

「大変よ! 前の人たちが襲われているわ!」

 リリアが声を上げた。リリアのアナライズの範囲は俺よりも一回りほど大きい。俺がまだ気がつけない範囲でも、リリアは見通すことができるのだ。さすがは妖精といったところである。

「リリア、盗賊団の数と、前の隊商の人数は?」
「盗賊団は三十人くらいね。あたしたちを見張っているヤツは、そのままこっちを見張ってるみたい。前の人たちは七人よ。どうする?」
「このままだと、前方の隊商が全滅してしまうかも知れない。もしかすると、そのままの流れでこっちに来るかも知れないね。今から反転して戻っても、追いつかれるんじゃないかな?」

 町を出発してからそれなりに進んでいる。それに引き返すにしても、反転するまでには時間がかかるだろう。レイザーさんはあごに手を当てて考えている。
 俺たちのリーダーはレイザーさんだ。方針が決まるのを静かに待った。

「よし、町まで戻る途中で追いつかれる危険性があるなら、前のヤツらと合流して盗賊団をたたこう。前の隊商を助けることができたら報酬をガッポリもらえるぞ。ついでに冒険者ギルドの評価も大幅アップだ!」

 レイザーさんは俺たちを鼓舞するかのように言った。それもそうか。危険なところにわざわざ向かうんだからな。それなりの餌がないと食いつかないか。

「そうですね。助けに行きましょう!」

 そう言ったライナーの目には曇りはなかった。これなら大丈夫そうだな。ルシアナとベールスの二人もうなずいている。

「急いで依頼主に報告してくる。お前たちは先に行け! 油断するなよ!」

 そう言うと、レイザーさんが風のように走って行った。俺たちはお互いにうなずくと、前方に向かって走り出した。

「それじゃ、見張り役とはここでさよならね」

 リリアがつぶやくと見張り役の反応が消えた。
 走り出してすぐに俺のアナライズにも反応があった。前方の隊商の護衛はまだ戦っている様子だ。

「ルシアナ、魔法で相手をかき乱してくれ。ベールス、俺の援護を頼む」

 ライナーが走りながら叫んだ。すでに剣を抜いている。

「フェル、あたしたちはどうする?」
「俺たちは隊商の救護に当たろう。ケガ人がいるはずだからね」

 盗賊たちが見えた。
 ルシアナがストーン・ランスを密集した盗賊たちに向けて撃った。突然の不意打ちに盗賊団の数人がなぎ倒された。
 盗賊団の動きが止まる。

「くそっ、あいつは何をしているんだ! 動きがあったらすぐにのろしを上げるように言っていただろうが!」

 盗賊団の頭らしい人物が叫び声を上げた。たぶんその「あいつ」は、すでに土の中に埋葬されていると思う。
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