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大商人②
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俺たちは依頼人が待っているという宿へと移動した。その宿はコリブリの街でも一位、二位を争うほどの高級宿だった。受付に断りを入れると、すでに依頼人は一階のラウンジで待っているとのことだった。
「お待たせしてしまい、申し訳ありません。代表のレイザーです」
「いやいや、問題はありませんよ。今回は私の依頼を引き受けてくれてありがとうございます。私の名前はサンチョ・ガリンドです。以後、お見知り置き願います」
「もしかして、大商人のサンチョ・ガリンドさんですか!?」
ライナーが驚きの声を上げた。聞いたことがある。確か、フォーチュン王国で五本の指に入るほどの大商人だったはずだ。
「大商人とは……私はまだまだその領域には達していませんよ」
ホホホと笑うサンチョさんだったが、その表情は満更でもなさそうだった。どうやら本物らしい。これはしっかりと護衛して、評価を上げておくに限るな。リリアには絶対にイタズラをしないように言い聞かせておかないと。
今回、サンチョさんがコリブリの街を訪れたのは、良質な魔石を安く買い求めるためだったそうである。ここで購入した魔石を商業都市エベランに持ち帰り、そこからさらに王都まで運んで高く売る予定だそうだ。
さらに話を聞いていると、どうやら質の悪い魔石も大量に購入しているようであり、そちらは他の魔石の魔力を補充するために使うそうである。
どうやら魔力がなくなった魔石に再び魔力をそそぎ込む、何らかの方法があるらしい。それなら大きな魔石を長く使うことができる。
大きな魔石は放出される魔力も強いため、大きな魔道具を動かすのに使われているそうである。今のところそんな大きな魔道具を見たことはないのだが、王都に行けばお目にかかれるかも知れない。そのうち王都にも行ってみたいな。
「ところで先ほどから気になっていたのですが、もしかして、妖精ですか?」
先ほどからチラチラとリリアを見ていたサンチョさんがこちら側に体を向けた。どうやらコリブリの街以外でも妖精は珍しい存在のようである。
「そうです。どうやらあまり見かけないみたいですね」
「ええ、ええ、そうですとも。私も一度しか見たことがありませんよ」
サンチョさんは妖精を見たことがあるのか。それならリリアは孤独ではないということだ。これは希望が出てきたぞ。リリアもきっと喜ぶはず……と思っていたのだが、特に何の反応も示していなかった。
「妖精をどうやって手に入れたのですか?」
「封印されていたのを助け出したのですよ。そしたらなんだかんだあって、一緒に行動することになりました」
「な、なるほど」
サンチョさんが苦笑いしている。封印された妖精など、滅多に見つかるものではないだろう。俺とリリアがお互いに契約を結んでいるのは、極めて稀な事例なのだ。他の人ではおそらくまねできないだろう。
お母様も、まさかあの本にリリアが閉じ込められているとは思ってもみなかったはずだ。そうでなければ、封印を解く方法を探していただろう。
準備が整ったところで俺たちは出発した。馬車は全部で五台。どうやら今回は魔石の買い付けを重点的に行ったようである。そのうちの三台が商品を積載していた。残りの二台にサンチョさんと、お付きの人たちが乗っている。
護衛役は俺たち冒険者以外にも、サンチョさんが個人で雇っている傭兵が五人ほどいた。どれも歴戦の戦士のようである。渋い顔をしていた。これはもしかすると、俺たちの出番はないかも知れないな。
コリブリの街の西門を抜けて、そのまま街道に出る。この道をひたすら西進すると、フォーチュン王国で有数の商業都市、エベランに到着する。フォーチュン王国内ではコリブリの街以外にはまだ行ったことがなかったでとても楽しみだ。
「レイザーさん、何でサンチョさんは護衛依頼を出したんですか? 十分な戦力がありそうですけど」
西に向かう道を進みながら、先ほどから気になっていたことを尋ねた。
「フェルは知らないのか? どうも最近ではこれから俺たちが通る道が騒がしいらしい。それで念には念を入れたんだろう」
「それって、盗賊が出るってことですか?」
ライナーが青い顔をして聞いてきた。それを見てニヤリと笑うレイザーさん。すごく悪い顔をしている。まるでリリアがイタズラを思いついたときの顔のようである。
「そうだ。そうでなくては、訓練にならないだろう? なに、相手は俺たちと違って、殺しのプロじゃない。魔物よりもずっと弱いはずさ。ゴブリンみたいに人数だけはいるかも知れないけどな」
ハッハッハとレイザーさんが笑う。盗賊とゴブリンを一緒にするレイザーさんは、間違いなくこの道のベテランだと思った。しっかりとその姿勢を学ばないといけないな。
「お待たせしてしまい、申し訳ありません。代表のレイザーです」
「いやいや、問題はありませんよ。今回は私の依頼を引き受けてくれてありがとうございます。私の名前はサンチョ・ガリンドです。以後、お見知り置き願います」
「もしかして、大商人のサンチョ・ガリンドさんですか!?」
ライナーが驚きの声を上げた。聞いたことがある。確か、フォーチュン王国で五本の指に入るほどの大商人だったはずだ。
「大商人とは……私はまだまだその領域には達していませんよ」
ホホホと笑うサンチョさんだったが、その表情は満更でもなさそうだった。どうやら本物らしい。これはしっかりと護衛して、評価を上げておくに限るな。リリアには絶対にイタズラをしないように言い聞かせておかないと。
今回、サンチョさんがコリブリの街を訪れたのは、良質な魔石を安く買い求めるためだったそうである。ここで購入した魔石を商業都市エベランに持ち帰り、そこからさらに王都まで運んで高く売る予定だそうだ。
さらに話を聞いていると、どうやら質の悪い魔石も大量に購入しているようであり、そちらは他の魔石の魔力を補充するために使うそうである。
どうやら魔力がなくなった魔石に再び魔力をそそぎ込む、何らかの方法があるらしい。それなら大きな魔石を長く使うことができる。
大きな魔石は放出される魔力も強いため、大きな魔道具を動かすのに使われているそうである。今のところそんな大きな魔道具を見たことはないのだが、王都に行けばお目にかかれるかも知れない。そのうち王都にも行ってみたいな。
「ところで先ほどから気になっていたのですが、もしかして、妖精ですか?」
先ほどからチラチラとリリアを見ていたサンチョさんがこちら側に体を向けた。どうやらコリブリの街以外でも妖精は珍しい存在のようである。
「そうです。どうやらあまり見かけないみたいですね」
「ええ、ええ、そうですとも。私も一度しか見たことがありませんよ」
サンチョさんは妖精を見たことがあるのか。それならリリアは孤独ではないということだ。これは希望が出てきたぞ。リリアもきっと喜ぶはず……と思っていたのだが、特に何の反応も示していなかった。
「妖精をどうやって手に入れたのですか?」
「封印されていたのを助け出したのですよ。そしたらなんだかんだあって、一緒に行動することになりました」
「な、なるほど」
サンチョさんが苦笑いしている。封印された妖精など、滅多に見つかるものではないだろう。俺とリリアがお互いに契約を結んでいるのは、極めて稀な事例なのだ。他の人ではおそらくまねできないだろう。
お母様も、まさかあの本にリリアが閉じ込められているとは思ってもみなかったはずだ。そうでなければ、封印を解く方法を探していただろう。
準備が整ったところで俺たちは出発した。馬車は全部で五台。どうやら今回は魔石の買い付けを重点的に行ったようである。そのうちの三台が商品を積載していた。残りの二台にサンチョさんと、お付きの人たちが乗っている。
護衛役は俺たち冒険者以外にも、サンチョさんが個人で雇っている傭兵が五人ほどいた。どれも歴戦の戦士のようである。渋い顔をしていた。これはもしかすると、俺たちの出番はないかも知れないな。
コリブリの街の西門を抜けて、そのまま街道に出る。この道をひたすら西進すると、フォーチュン王国で有数の商業都市、エベランに到着する。フォーチュン王国内ではコリブリの街以外にはまだ行ったことがなかったでとても楽しみだ。
「レイザーさん、何でサンチョさんは護衛依頼を出したんですか? 十分な戦力がありそうですけど」
西に向かう道を進みながら、先ほどから気になっていたことを尋ねた。
「フェルは知らないのか? どうも最近ではこれから俺たちが通る道が騒がしいらしい。それで念には念を入れたんだろう」
「それって、盗賊が出るってことですか?」
ライナーが青い顔をして聞いてきた。それを見てニヤリと笑うレイザーさん。すごく悪い顔をしている。まるでリリアがイタズラを思いついたときの顔のようである。
「そうだ。そうでなくては、訓練にならないだろう? なに、相手は俺たちと違って、殺しのプロじゃない。魔物よりもずっと弱いはずさ。ゴブリンみたいに人数だけはいるかも知れないけどな」
ハッハッハとレイザーさんが笑う。盗賊とゴブリンを一緒にするレイザーさんは、間違いなくこの道のベテランだと思った。しっかりとその姿勢を学ばないといけないな。
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