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新しい生活①
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冒険者ギルドを後にした俺たちはその足で森へと入った。もちろん俺は走っている。小走りだけど。
「ほら、頑張って、あっちに薬草があるわよ!」
「はぁはぁ、分かったよ。もっと、はぁ、もっと近いところに生えている薬草はないの?」
「あるけどそれじゃ訓練にならないでしょ!」
現実は非情だ。ちょっと走るつもりだったのに、リリアの監修により、かなりの距離を走っている。
まあ、リリアがアナライズの魔法を使ってくれているおかげで、俺は周りを警戒する必要も足下の草をいちいち確認する必要もないんだけどね。
リリアが指差した方向に進むと、ようやく薬草を見つけた。それをむしりながら休憩する。
「周りに魔物はいない?」
「いないわね。昨日ゴブリンの数をずいぶん減らしたから、しばらくはゴブリンを見かけないでしょうね。狩るならフォレストウルフかしら? もっと森の奥に行けば、ワイルドボアやブラウンベア、フォレストスネイクがいるみたいだけどね」
どちらも魔物図鑑でしか見たことがない魔物だな。確かどれも複数人で相手する魔物だったはずだ。それだけ厄介な魔物なのだろう。
魔石の大きさはどのくらいなのかな。ちょっと気になる。強い魔物ほど魔石が大きくなるみたいだけど、どうしてそうなるのかは不明らしい。
「お、魔力草をみーつけた! あれを採取して今日は終わりにしましょう。ほら、走った走った」
「お、鬼……」
「何言ってるのよ。かわいい妖精さんだぞ?」
俺はリリアに指示されるがままに走った。そして魔力草を入手してコリブリの街へと帰った。これで少しは体力がついたかな? そうでなければ報われないぞ。もちろんお金は手に入ったけど。
街に戻ると、銀の居待ち月亭付近にある飲食店を探した。これからはこの近辺の店を利用することになるはずだ。今のうちにマッピングしていても損はないだろう。
リリアもそのことは分かっているらしく、真剣な表情で周囲を見ていた。
「あそこにお風呂屋さんがあるわ」
「そんなにお風呂に入りたいの? 時間はあるし、せっかくだから入って行く?」
「んー、男女で別れてるみたいだからやめておくわ」
「そ、そうだね」
どうやらリリアは、何が何でも俺と一緒にお風呂に入りたいようである。……もしかして、俺って男として見られていない? ひょっとしたら弟としか思われていないのかも知れない。それはちょっと困るぞ。何とか意識してもらえるように頑張らないと。
付近には風呂屋だけでなく、洗濯代行や、預かり所なんかもあった。他にも魔道具屋に家具屋、武器屋、防具屋、宝石店もある。
静かな場所だったが、それなりににぎわいがあるようである。商品を見ると、どれも品質が高く、値段もそれ相応に高かった。
この辺りはどうも、中級所得者が利用するお店が並んでいるようである。確かによく見れば、着ている服もおしゃれなものが多い。幸運にも俺が着ている服もそこそこ上等なものだったので、浮いてはいなかった。
「お金に余裕ができないと、どれも買えそうにないな」
「何か武器を持っていた方が良いんじゃないの?」
「魔法があるからいらないと思うけど……杖くらいは持っておこうかな」
ものは試しとばかりに武器屋に入った。奥のカウンターにいる、職人のようなおじさんがこちらにチラリと目を向けた。おじさんはすぐに目をそらしたが、再び驚愕の瞳でこちらを見た。
ハッキリと分かる二度見だった。間違いなくリリアに驚いているのだろう。
「あ、大丈夫ですよ。イタズラしないように言い聞かせてますから。そうだよね?」
「ええ、イタズラはしないわ。約束する」
リリアが改めてそう言った。おじさんが引きつった笑顔をしている。これはしばらくの間はリリアのことで驚かれるんだろうな。リリアが不愉快な思いをしなければ良いんだけどね。
「ほら、頑張って、あっちに薬草があるわよ!」
「はぁはぁ、分かったよ。もっと、はぁ、もっと近いところに生えている薬草はないの?」
「あるけどそれじゃ訓練にならないでしょ!」
現実は非情だ。ちょっと走るつもりだったのに、リリアの監修により、かなりの距離を走っている。
まあ、リリアがアナライズの魔法を使ってくれているおかげで、俺は周りを警戒する必要も足下の草をいちいち確認する必要もないんだけどね。
リリアが指差した方向に進むと、ようやく薬草を見つけた。それをむしりながら休憩する。
「周りに魔物はいない?」
「いないわね。昨日ゴブリンの数をずいぶん減らしたから、しばらくはゴブリンを見かけないでしょうね。狩るならフォレストウルフかしら? もっと森の奥に行けば、ワイルドボアやブラウンベア、フォレストスネイクがいるみたいだけどね」
どちらも魔物図鑑でしか見たことがない魔物だな。確かどれも複数人で相手する魔物だったはずだ。それだけ厄介な魔物なのだろう。
魔石の大きさはどのくらいなのかな。ちょっと気になる。強い魔物ほど魔石が大きくなるみたいだけど、どうしてそうなるのかは不明らしい。
「お、魔力草をみーつけた! あれを採取して今日は終わりにしましょう。ほら、走った走った」
「お、鬼……」
「何言ってるのよ。かわいい妖精さんだぞ?」
俺はリリアに指示されるがままに走った。そして魔力草を入手してコリブリの街へと帰った。これで少しは体力がついたかな? そうでなければ報われないぞ。もちろんお金は手に入ったけど。
街に戻ると、銀の居待ち月亭付近にある飲食店を探した。これからはこの近辺の店を利用することになるはずだ。今のうちにマッピングしていても損はないだろう。
リリアもそのことは分かっているらしく、真剣な表情で周囲を見ていた。
「あそこにお風呂屋さんがあるわ」
「そんなにお風呂に入りたいの? 時間はあるし、せっかくだから入って行く?」
「んー、男女で別れてるみたいだからやめておくわ」
「そ、そうだね」
どうやらリリアは、何が何でも俺と一緒にお風呂に入りたいようである。……もしかして、俺って男として見られていない? ひょっとしたら弟としか思われていないのかも知れない。それはちょっと困るぞ。何とか意識してもらえるように頑張らないと。
付近には風呂屋だけでなく、洗濯代行や、預かり所なんかもあった。他にも魔道具屋に家具屋、武器屋、防具屋、宝石店もある。
静かな場所だったが、それなりににぎわいがあるようである。商品を見ると、どれも品質が高く、値段もそれ相応に高かった。
この辺りはどうも、中級所得者が利用するお店が並んでいるようである。確かによく見れば、着ている服もおしゃれなものが多い。幸運にも俺が着ている服もそこそこ上等なものだったので、浮いてはいなかった。
「お金に余裕ができないと、どれも買えそうにないな」
「何か武器を持っていた方が良いんじゃないの?」
「魔法があるからいらないと思うけど……杖くらいは持っておこうかな」
ものは試しとばかりに武器屋に入った。奥のカウンターにいる、職人のようなおじさんがこちらにチラリと目を向けた。おじさんはすぐに目をそらしたが、再び驚愕の瞳でこちらを見た。
ハッキリと分かる二度見だった。間違いなくリリアに驚いているのだろう。
「あ、大丈夫ですよ。イタズラしないように言い聞かせてますから。そうだよね?」
「ええ、イタズラはしないわ。約束する」
リリアが改めてそう言った。おじさんが引きつった笑顔をしている。これはしばらくの間はリリアのことで驚かれるんだろうな。リリアが不愉快な思いをしなければ良いんだけどね。
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