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第二章

招待状②

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 一度だけ魔物の襲撃があったが、特に問題なく領都へと到着した。ダナイが安堵のため息を吐いたのは言うまでもなかった。そんな様子を苦笑しながら見ていたリリアも何事もなく到着できたことを素直に喜んでいた。

 一行は手紙に書いてあった宿へと向かった。手紙には領都に着いたらその宿を使うようにと書いてあった。到着したころはすでに日が傾き始めており、のんびりとはしていられない。

 手紙に書いてあった宿は領都でも一、二位を争うほどの豪華な温泉宿だった。本当にここで合っているのか? とキョロキョロとせわしなく辺りを見回す男二人をあきれた様子で女性陣が見ていた。

「ちょっとダナイ、田舎者に見えるからやめてよね」
「そうよアベル。格好悪い……」

 そう言われましてもね、とダナイとアベルはお互いに目をやった。この辺りの肝の据わり具合は女性陣に軍配が上がった。

 どこか腰が引けた様子でダナイが受付カウンターへと向かう。その足取りはどこかヨロヨロとしており、見るからに怪しかった。

「えっと、そのう、この手紙を見てもらえませんかねぇ?」

 うさんくさく上目遣いで見るドワーフを、受付嬢が訝しそうな目で見ていたが、手紙に目を通すと目の色を変えた。

「ダナイ様ですね。ライザーク辺境伯様よりあなた様が到着したら世話をするようにと伺っております。すぐに部屋を用意致しますので、少々お待ち下さい!」

 そう言うと慌ただしく奥へと走って行った。隣の受付カウンターに座っていた従業員もただ事ではないと察したのだろう。ロビーのソファーへとダナイ達を誘導すると、すぐに飲み物を用意してくれた。

 従業員のその態度だけで、ライザーク辺境伯がどれだけ大物なのかを思い知ったダナイは引きつった顔でお茶をすすった。

「ほら、大丈夫だったでしょ? ダナイは心配し過ぎなのよ」
「そうは言うがよ、俺は庶民出なんだよ。庶民には荷が重すぎる」

 ウンウンとダナイに同意するアベルとマリア。どうやら二人も同じ心境のようである。やっぱりリリアは……と思っていると、支配人がやって来た。

「ようこそいらっしゃいました、ダナイ様。部屋の準備ができましたのでこちらへどうぞ。ライザーク辺境伯様にはこちらから連絡を入れておきます。今後の日程が決まりましたら連絡致しますので、それまではどうぞ当宿でごゆっくりとされて下さい」

 どうやらライザーク辺境伯とのやり取りはこの宿が代わりにやってくれるらしい。ダナイはホッと胸をなで下ろした。面会というイベントは残っているが、すぐ目の前にあった面会手続きの問題は解決したようだった。

 案内された部屋に四人が向かうと、その豪華な装いに歓喜の声を上げた。四人部屋ではあったが、ベッドもテーブルもソファーも書棚もどれも高級品であることが見て取れた。家にあるものとは大違いだった。

 座り心地が大変素晴らしいソファーに腰掛けながらリリアが言った。

「家にこんなソファーが欲しいわ」
「お、おう、そうだな」

 一体このソファーいくらするんだ? と内心冷や汗をかいていると、マリアがテーブルの上にあった館内案内を見つけた。

「見てよこれ! ここのお風呂は貸し切りができるみたいよ。せっかくだからみんなで入ろうよ~」

 え? と三人の声が見事にハモった。四人で? 同時に? どうやらマリアはこの部屋の豪華さに正気を失っているのだろうと判断した。

「マリア、四人で入るのはちょっとどうかと思うわよ。入りたいならアベルと二人で入りなさい」
「そう? じゃあ、ダナイとリリアが一緒に入るのね?」

 どうしてそうなった、とダナイが言いかけたそのとき、

「そうなるわね」

 とリリアがダナイの方に目を向けた。満更でもないその物言いにダナイはドキリとした。
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