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第一章
弟子入り志願①
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二階級昇進の話の後、ダナイはDの文字が書かれた冒険者証明書を受け取り、ブラックベアと道中で倒した魔物の魔石、薬草の束を冒険者ギルドで売却すると宿へと戻った。今、ダナイの手元には約十万Gという大金が握られている。
夕食と風呂を済ませると、ようやくリラックスすることができた。
気軽に小銭を稼ぐつもりが思わぬ事態となり、気がつかないうちに緊張が張り詰めていたのだろう。肩の力が抜けて緊張感がほぐれたのを感じていた。ダナイは金庫にお金を入れると、布団の上に仰向けになり、これからの方針を改めて考えた。
聖剣を作るからにはイーゴリの街で一番の鍛冶屋に弟子入りしたい。明日からは街一番の鍛冶屋を探すところから始めないといけないな。
そう思ったところで『ワールドマニュアル(門外不出)』が頭の中で答えを出した。
問)イーゴリの街で一番の鍛冶屋は誰か?
答)鍛冶屋ゴードン・モルチャノフ
節操ねぇなあと思いつつも、ひとまず人捜しの目処が立ったので良しとすることにした。ここは異世界、自分の常識が通用しない世界なのだ。深くは考えないことにした。なるようになるさ。そう思うと、急に眠気がダナイを襲った。
翌日、ダナイは鐘の音と共に目を覚ました。昨日は気がつかなかったのだが、どうやら定期的に鐘の音で時刻を知らせているようだった。ダナイは小銭と冒険者証明書を掴むと一階にある食堂へと向かった。
クリスに朝食の注文を頼むと、ついでとばかりに尋ねた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだが、ゴードンという鍛冶屋を聞いたことがあるかね?」
「ゴードン? うーん、聞いたことないなあ」
思い出そうとしていたが、どうやら記憶の中にはないようだった。これは女将にも聞いた方が良さそうだと思っていたところに、都合良く女将がやってきた。ダナイはクリスと同じ質問をしたが、知らないという答えだった。何だか雲行きが怪しくなってきたぞ、と思いつつ、ダナイは二人にお礼を言った。
街へと繰り出したダナイは『ワールドマニュアル(門外不出)』に頼るべきかと思ったが、ここは一つ自力でやってみて、それでも駄目ならそれに頼ることにした。せっかく異世界に来たのに、何から何までそれに頼り切るのは気が引けたのであった。
情報が集まりそうなところと言えば冒険者ギルドだろう。ダナイはさっそく冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドは多くの冒険者達で大変賑わっていた。昨日訪れたときは昼頃であり、それほど人が居なかったのだが、時間帯でこんなにも違うのかと内心驚いていた。どうやら冒険者の朝は早いらしい。もっとゆっくりできるかと思っていたダナイは出鼻を挫かれた形となった。
忙しいところ申し訳ないな、と思いつつダナイは冒険者ギルドの職員に声をかけた。
「ちょっと聞きたいんだが、ゴードンという鍛冶屋を知らないかね?」
「鍛冶屋ゴードンですか? ちょっと待って下さいね」
そう言うとギルド職員はこの街の地図を取り出した。地図上で見るイーゴリの街はダナイが予想していたよりも広かった。おそらく適当に街中をふらついていたら見つからなかっただろう。
「ここが冒険者ギルドです。そしてここが鍛冶屋ゴードンですね。武器を買いに行くつもりですか? どうも最近はゴードンの具合が良くないようで、もしかしたら取り合ってもらえないかも知れません。念のため、別の武器屋も紹介しておきましょうか?」
「いや、大丈夫だ。ありがとう。さっそく行ってみることにするよ」
これは困ったぞ。ダナイは内心ヒヤリとしている。もし、具合が悪くて鍛冶屋としての技術を教えてもらえない状態だったらどうするべきか。不吉な考えが頭をよぎったが、今は一刻も早く彼に会うべきだと道を急いだ。
大通りから小道に入り、そこからいくつかの裏通りを行くと、目の前に「鍛冶屋ゴードン」の名前が見えて来た。しかし、店の扉は固く閉ざされていた。ダナイは一縷の望みをかけて扉を叩いた。すると中から一人の老婆が出てきた。
「ゴードン・モルチャノフさんにお願いがあって参りました」
ダナイはその老婆をジッと見つめた。ダナイの真剣な表情に何かを感じ取ったのか、少し目を見開くと部屋の中へと案内してくれた。案内された場所には一人の白髪交じりの眼鏡をかけた老人が居た。
「どちらさんかね?」
ゴードンは優しい声色でダナイに尋ねた。ダナイは間髪を容れずに土下座の体勢をとって、額を床に擦りつけた。
「私はダナイと申します。どうか私を弟子にして下さい!」
有名な職人に弟子入りするならば、誠心誠意頼むしかない。そう思っているダナイは、弟子にしてもらうまではこのまま梃子でも動かないつもりでいた。
「ダナイさん、ひとまず顔を上げて下さい」
ゴードンの言葉に反して、ダナイは決して頭を上げなかった。ゴードンは何とかダナイの顔を上げさせようとしていたが、ついに根負けした。
「分かりました、ダナイさん。あなたを弟子として認めましょう」
その言葉に、ダナイがパッと顔を上げた。その目は爛々と輝いており「ありがてえ!」としっかりと書いてあった。ゴードンはハァとため息を吐いた。
改めて店内を見渡すと、ダナイが案内された部屋は居住区のようであり、奥に扉が二つと、先ほど通り抜けてきたカウンターのある店側があった。工房は店側にあるのだろう。この部屋からは工房がどのようになっているのかを知ることはできなかった。
夕食と風呂を済ませると、ようやくリラックスすることができた。
気軽に小銭を稼ぐつもりが思わぬ事態となり、気がつかないうちに緊張が張り詰めていたのだろう。肩の力が抜けて緊張感がほぐれたのを感じていた。ダナイは金庫にお金を入れると、布団の上に仰向けになり、これからの方針を改めて考えた。
聖剣を作るからにはイーゴリの街で一番の鍛冶屋に弟子入りしたい。明日からは街一番の鍛冶屋を探すところから始めないといけないな。
そう思ったところで『ワールドマニュアル(門外不出)』が頭の中で答えを出した。
問)イーゴリの街で一番の鍛冶屋は誰か?
答)鍛冶屋ゴードン・モルチャノフ
節操ねぇなあと思いつつも、ひとまず人捜しの目処が立ったので良しとすることにした。ここは異世界、自分の常識が通用しない世界なのだ。深くは考えないことにした。なるようになるさ。そう思うと、急に眠気がダナイを襲った。
翌日、ダナイは鐘の音と共に目を覚ました。昨日は気がつかなかったのだが、どうやら定期的に鐘の音で時刻を知らせているようだった。ダナイは小銭と冒険者証明書を掴むと一階にある食堂へと向かった。
クリスに朝食の注文を頼むと、ついでとばかりに尋ねた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだが、ゴードンという鍛冶屋を聞いたことがあるかね?」
「ゴードン? うーん、聞いたことないなあ」
思い出そうとしていたが、どうやら記憶の中にはないようだった。これは女将にも聞いた方が良さそうだと思っていたところに、都合良く女将がやってきた。ダナイはクリスと同じ質問をしたが、知らないという答えだった。何だか雲行きが怪しくなってきたぞ、と思いつつ、ダナイは二人にお礼を言った。
街へと繰り出したダナイは『ワールドマニュアル(門外不出)』に頼るべきかと思ったが、ここは一つ自力でやってみて、それでも駄目ならそれに頼ることにした。せっかく異世界に来たのに、何から何までそれに頼り切るのは気が引けたのであった。
情報が集まりそうなところと言えば冒険者ギルドだろう。ダナイはさっそく冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドは多くの冒険者達で大変賑わっていた。昨日訪れたときは昼頃であり、それほど人が居なかったのだが、時間帯でこんなにも違うのかと内心驚いていた。どうやら冒険者の朝は早いらしい。もっとゆっくりできるかと思っていたダナイは出鼻を挫かれた形となった。
忙しいところ申し訳ないな、と思いつつダナイは冒険者ギルドの職員に声をかけた。
「ちょっと聞きたいんだが、ゴードンという鍛冶屋を知らないかね?」
「鍛冶屋ゴードンですか? ちょっと待って下さいね」
そう言うとギルド職員はこの街の地図を取り出した。地図上で見るイーゴリの街はダナイが予想していたよりも広かった。おそらく適当に街中をふらついていたら見つからなかっただろう。
「ここが冒険者ギルドです。そしてここが鍛冶屋ゴードンですね。武器を買いに行くつもりですか? どうも最近はゴードンの具合が良くないようで、もしかしたら取り合ってもらえないかも知れません。念のため、別の武器屋も紹介しておきましょうか?」
「いや、大丈夫だ。ありがとう。さっそく行ってみることにするよ」
これは困ったぞ。ダナイは内心ヒヤリとしている。もし、具合が悪くて鍛冶屋としての技術を教えてもらえない状態だったらどうするべきか。不吉な考えが頭をよぎったが、今は一刻も早く彼に会うべきだと道を急いだ。
大通りから小道に入り、そこからいくつかの裏通りを行くと、目の前に「鍛冶屋ゴードン」の名前が見えて来た。しかし、店の扉は固く閉ざされていた。ダナイは一縷の望みをかけて扉を叩いた。すると中から一人の老婆が出てきた。
「ゴードン・モルチャノフさんにお願いがあって参りました」
ダナイはその老婆をジッと見つめた。ダナイの真剣な表情に何かを感じ取ったのか、少し目を見開くと部屋の中へと案内してくれた。案内された場所には一人の白髪交じりの眼鏡をかけた老人が居た。
「どちらさんかね?」
ゴードンは優しい声色でダナイに尋ねた。ダナイは間髪を容れずに土下座の体勢をとって、額を床に擦りつけた。
「私はダナイと申します。どうか私を弟子にして下さい!」
有名な職人に弟子入りするならば、誠心誠意頼むしかない。そう思っているダナイは、弟子にしてもらうまではこのまま梃子でも動かないつもりでいた。
「ダナイさん、ひとまず顔を上げて下さい」
ゴードンの言葉に反して、ダナイは決して頭を上げなかった。ゴードンは何とかダナイの顔を上げさせようとしていたが、ついに根負けした。
「分かりました、ダナイさん。あなたを弟子として認めましょう」
その言葉に、ダナイがパッと顔を上げた。その目は爛々と輝いており「ありがてえ!」としっかりと書いてあった。ゴードンはハァとため息を吐いた。
改めて店内を見渡すと、ダナイが案内された部屋は居住区のようであり、奥に扉が二つと、先ほど通り抜けてきたカウンターのある店側があった。工房は店側にあるのだろう。この部屋からは工房がどのようになっているのかを知ることはできなかった。
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