4 / 137
第一章
冒険者ダナイ
しおりを挟む
「何とか金を稼がないといけないな。アベル、何か簡単にお金を稼ぐ方法はないのか? そうだ、こいつは売り物にならないのか?」
そう言うと懐からいくつかの魔石を取り出した。
「売ることはできますが、基本的に冒険者か商人でないと取り引きできないですね」
「それじゃあアベル、これを売るのを頼めるか? 報酬は売値の一割でどうだ?」
アベルとマリアは顔を見合わせた。
「それよりも、ダナイさんが冒険者になった方が良いんじゃないですか? そうすれば、今後も自分で売ることが出来るようになりますしね」
「え? 俺が冒険者に? そうだな……」
ダナイは考えた。頼まれたのは聖剣を作れということだった。自分が目指すべきは、まずはどこかの鍛冶屋に弟子入りすることだろう。何をするのかもよく分かっていない冒険者になる必要は今のところはないように思えた。
しかし、どこかに弟子入りするにしても何にしても、お金をどうにかする必要があった。手に入れた魔石を売ることができるのならば、冒険者になっても損はないのかも知れない。
「よし、分かった。俺も冒険者になろう。すまないが、どうやって冒険者になるのか教えてくれないか?」
「もちろんですよ。と、言っても書類に名前を書くだけですけどね」
そう言うと二人は冒険者ギルドの中へとダナイを引っ張って行った。
冒険者ギルドの中には見たこともない人種の人たちがまだ日が落ちていないにもかかわらず酒を飲んでいるようだった。よく見ると、受付カウンターと少し離れた場所にお酒を提供する場所が設けてあった。
三人は真っ直ぐに受付カウンターの方へと進んだ。その中でも、何人もの人たちが並んでいる美人受付嬢のところではなく、スキンヘッドの厳ついオッサンが睨みを利かせている受付カウンターへ向かうと、アベルがスキンヘッドに声をかけた。
「ロベルトさん、冒険者登録をお願いします」
声をかけられたスキンヘッドのロベルトは、チラリとダナイを見て、スッと紙を差し出した。
「俺は冒険者ギルドの職員のロベルトだ。これに名前を書いてくれ」
ダナイは『ワールドマニュアル(門外不出)』から自分の名前となる文字を探し、たどたどしい筆遣いで名前を書いた。
それを見たロベルトは、少し待つように言うと、カウンターの奥へと歩いて行った。
「アベル、本当に大丈夫か?」
「大丈夫だよ。年齢さえ満たしていれば、誰でも冒険者になれるからね。ただし、冒険者になってから先はどうなるかは誰にも分からないけどね」
そんなものなのか、と慣れない文化に戸惑いを隠せずにいると、ロベルトが一枚の金属プレートを持ってやって来た。
「これがダナイの冒険者証明書だ。なくさないようにしろよ」
そこには名前と「G」の文字が書いてあった。これが冒険者ランクの最低ランクを表していることは、先ほど名前を調べたときにチラリとマニュアルを見て調べておいた。
「魔石を売りたいんだが、ここでいいのか?」
「素材の買い取りは向こうだ」
ロベルトが示した先は、先ほどのお酒を提供している場所のすぐ近くだった。なるほど、売ったお金で一杯やろうぜということなのだろう。
「それじゃ、ここまでだな。色々と世話になったな。アベル、マリア。助かったぜ」
「いいえ、たいしたことじゃないですよ」
「またね、ダナイさん!」
こうしてダナイはアベルとマリアと別れた。
しかし、そう遠くなくダナイは二人と再会するのであった。
そう言うと懐からいくつかの魔石を取り出した。
「売ることはできますが、基本的に冒険者か商人でないと取り引きできないですね」
「それじゃあアベル、これを売るのを頼めるか? 報酬は売値の一割でどうだ?」
アベルとマリアは顔を見合わせた。
「それよりも、ダナイさんが冒険者になった方が良いんじゃないですか? そうすれば、今後も自分で売ることが出来るようになりますしね」
「え? 俺が冒険者に? そうだな……」
ダナイは考えた。頼まれたのは聖剣を作れということだった。自分が目指すべきは、まずはどこかの鍛冶屋に弟子入りすることだろう。何をするのかもよく分かっていない冒険者になる必要は今のところはないように思えた。
しかし、どこかに弟子入りするにしても何にしても、お金をどうにかする必要があった。手に入れた魔石を売ることができるのならば、冒険者になっても損はないのかも知れない。
「よし、分かった。俺も冒険者になろう。すまないが、どうやって冒険者になるのか教えてくれないか?」
「もちろんですよ。と、言っても書類に名前を書くだけですけどね」
そう言うと二人は冒険者ギルドの中へとダナイを引っ張って行った。
冒険者ギルドの中には見たこともない人種の人たちがまだ日が落ちていないにもかかわらず酒を飲んでいるようだった。よく見ると、受付カウンターと少し離れた場所にお酒を提供する場所が設けてあった。
三人は真っ直ぐに受付カウンターの方へと進んだ。その中でも、何人もの人たちが並んでいる美人受付嬢のところではなく、スキンヘッドの厳ついオッサンが睨みを利かせている受付カウンターへ向かうと、アベルがスキンヘッドに声をかけた。
「ロベルトさん、冒険者登録をお願いします」
声をかけられたスキンヘッドのロベルトは、チラリとダナイを見て、スッと紙を差し出した。
「俺は冒険者ギルドの職員のロベルトだ。これに名前を書いてくれ」
ダナイは『ワールドマニュアル(門外不出)』から自分の名前となる文字を探し、たどたどしい筆遣いで名前を書いた。
それを見たロベルトは、少し待つように言うと、カウンターの奥へと歩いて行った。
「アベル、本当に大丈夫か?」
「大丈夫だよ。年齢さえ満たしていれば、誰でも冒険者になれるからね。ただし、冒険者になってから先はどうなるかは誰にも分からないけどね」
そんなものなのか、と慣れない文化に戸惑いを隠せずにいると、ロベルトが一枚の金属プレートを持ってやって来た。
「これがダナイの冒険者証明書だ。なくさないようにしろよ」
そこには名前と「G」の文字が書いてあった。これが冒険者ランクの最低ランクを表していることは、先ほど名前を調べたときにチラリとマニュアルを見て調べておいた。
「魔石を売りたいんだが、ここでいいのか?」
「素材の買い取りは向こうだ」
ロベルトが示した先は、先ほどのお酒を提供している場所のすぐ近くだった。なるほど、売ったお金で一杯やろうぜということなのだろう。
「それじゃ、ここまでだな。色々と世話になったな。アベル、マリア。助かったぜ」
「いいえ、たいしたことじゃないですよ」
「またね、ダナイさん!」
こうしてダナイはアベルとマリアと別れた。
しかし、そう遠くなくダナイは二人と再会するのであった。
0
お気に入りに追加
83
あなたにおすすめの小説
燃えよドワーフ!(エンター・ザ・ドワーフ)
チャンスに賭けろ
ファンタジー
そのドワーフは熱く燃えていた。そして怒っていた。
魔王軍の侵攻で危機的状況にあるヴァルシパル王国は、
魔術で召喚した4人の異世界勇者にこの世界の危機を救ってもらおうとしていた。
ひたすら亜人が冷遇される環境下、ついに1人のドワーフが起った。
ドワーフである自分が斧を振るい、この世界の危機を救う!
これはある、怒りに燃えるドワーフの物語である。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。


お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる