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それぞれの思い②

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 そして、その日はすぐにやってきた。
 シュークリーム事件以降、モニカは定期的にお母様による王妃教育を受けていた。
 モニカは公爵家のご令嬢であるため、マナーは完璧であり、転生者ブーストも相まって学力も非常に高い。
 そんな完璧超人のモニカでも、やはり王妃になるためには、また別の視点からの教育が必要なようである。
 大変そうだが、俺のためにも、モニカのことがお気に入りのお母様のためにも、ぜひ頑張ってもらいたい。
 
「モニカ、お母様とのお茶会の間、サラを借りたいんだけど、いいかな?」
 今日はその王妃教育のある日。サラから話を聞くには、またとないチャンスだった。

「え? それはもちろんよろしいですけど……」
 
 チラリとサラを見るモニカ。サラはこちらをジッと見つめていた。

 
「すまないね、サラ。モニカのことが心配だろうけど、そこはうちの王妃殿下の親衛隊を信頼して欲しいかな」
 
 王妃殿下には万が一のことがないように、強力な親衛隊がいつもついている。お母様と一緒にいれば、まずモニカは大丈夫だろう。
 
「どう言ったご用件でしょうか?」
 
 相変わらずの無表情でサラが言った。
 モニカの話ではサラの表情は豊かだということだが、とてもそうは思えないなぁ。
 
「まどろっこしいのは無しだ。サラ、残りの二人の攻略対象は誰だ?」
「東国からの留学生、カイエンと一歳年下の見習い騎士、ロランです」
 
 スッパリとサラは言い切った。
 
【主様、その名に聞き覚えは?】
「どちらも聞いたことないな。東国があるのは知っているが、今はそれほどの交流はないからね。そのロランという子は、おそらくまだこの城に来てないね」
 
 これは困った。どちらも今は手が出せないな。
 カイエンの情報はこれから集めるとして、ロランは城下、下手すればこの国のどこかにいるということになる。探し出すのは不可能に近いな。
 
「やはりレオンハルト殿下は、モニカお嬢様と同じく、転生者だったのですね」
「そうだよ。もしかして、気がついてなかった?」
「おそらくそうだと思ってましたが、確信に変わったのは今です」
 
 なるほど、GMでも相手が転生者なのかはハッキリとは分からないのか。これはちょっと気に留めておかないといけないな。
 
「そのことをモニカお嬢様には言わないのですか?」
 
 どうやらサラは、俺が転生者である可能性があることを、モニカには言わないでおいてくれたみたいだ。ありがたい。
 
「ゲームスタートの学園に入る前までには必ず言うつもりだよ。モニカの協力無しにはモニカの安全を確保できないだろうからね」
「それがいいと思います。その頃までにはモニカお嬢様も諦めがついているでしょうから」
「モニカはまだ諦めてないのかい?」
「はい。諦めたらそこでゲームは終了だと言ってました」
 
 その心意気は素晴らしいと思うが、今はその心意気はなくて良かったかな。
 
【まだまだ時間がかかりそうですね】
 
 ピーちゃんも複雑そうな顔をしている。俺は一つため息をついた。
 
「モニカはどうしてそこまでゲームのシナリオにこだわるんだい?」
「モニカお嬢様がレオンハルト殿下と結ばれれば、この国が滅ぶと考えているようです」
【まあ!】
「そんなバカな。むしろ、モニカと結ばれない方がこの国が滅ぶことになると思うんだけど?」
 
 二人はそうだと首を縦に振った。
 俺達の心は一つ。三つの心が一つになれば、敵対するものは滅びることになるだろう。それだけの強さを俺達は持っていた。

 
 ****

 
「サラ、レオ様とはなんの話をしたのですか?」
 
 私はギクリとした。
 まだ、モニカお嬢様に言うわけにはいかない。
 あの抜け目のないレオンハルト殿下が、最適なタイミングでモニカお嬢様に告白するはずだ。それを邪魔してはいけない。
 
「モニカお嬢様のスリーサイズの話を……」
「ちょっとサラ! まさか言わなかったでしょうね?」
「もちろんです。ご自身でお確かめ下さいと言っておきました」
「ご自身で確かめるって……サラのバカー!」
 
 何を想像したのか、モニカお嬢様が顔を赤くしてポコポコと叩いてきた。
 もしかして、レオンハルト殿下がモニカお嬢様を丸裸にして、隅から隅まで採寸されるところを想像したのだろうか?
 思ったよりもモニカお嬢様はムッツリのようである。
 これはレオンハルト殿下の評価が下がってしまったかもしれない。
 一応、謝っておこう。
 出汁に使ってごめんね。
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