婚約者は破滅フラグ持ちの転生者。それでも俺はキミが好き。

えながゆうき

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ダンジョン②

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 どれくらい森の奥地まで進んだだろうか。サラの目的地がどの辺りなのかが分かってきた。
 
「レオ様、今、向かっているところはもしかして……」
「うん、どうやら、モニカが召喚魔法の儀式を行った場所に近いみたいだね。そのときは全く気がつかなかったけど、あの場所には何かがあったんだろうね」
 
 コソコソとモニカと話していると、どうやら目的地へと到着したようだ。サラがその動きをとめた。
 俺達がたどり着いた場所は、大きな岩山があること以外には特筆すべきところがない場所だった。

「殿下、ここに何かがあるのですか?」
「ああそうだ。だが、これは困ったぞ。どうやらダンジョンがあるようだ」
「ダンジョン!? ダンジョンって、あのダンジョンですか?」
 
 ギルの質問に、俺が感じた感想を率直に述べたところ、聞いていた全員からもれなく大きな反応が返ってきた。
 
「本当にそんなものがここに? しかし、ただの岩山にしか見えませんね」
 
 確かにアルが言った通り、ただの岩山にしか見えない。
 ピーちゃんに確認すると、間違いないとのことであった。しかし、どう見ても入り口らしきものは見つからなかった。
 
「モニカ、ゲームにはダンジョンなんてあったの?」

 コソコソと耳打ちした。
 
「いえ、そのようなものはなかったはずですわ。もし、ダンジョン攻略などがあるのなら、条件次第では魔物の氾濫が起こらないことになりますわ。そうなると、ヒロインの覚醒イベントが絶対に発生しないことになってしまいますわ」
 
 なるほど。と言うことは、このダンジョンはイレギュラーなものなのだろう。ここはゲームマスターのサラに聞いてみるべきだな。
 
「サラ、ちょっといいかい?」
 
 そう言って、サラをみんなから離れたところに連れて行った。その間にみんなには休憩をとってもらう。
 
「サラ、少し説明が欲しい。このダンジョンは攻略しても問題ない?」
「問題ありません。このダンジョンはゲームクリア後のオマケ要素として考案されたものです。ですが、乙女ゲームに戦闘色の強いやりこみ要素はいらないだろうということになって、ボツになった設定です」
 
 おおう、男性向けならダンジョンで強化できたり、強い装備をもらえたりするのはロマンがあるけど、女性向けだとちょっとどうかな? と考えたんだろうな。
 それじゃあ、ダンジョンを壊してしまっても構わないかな。このまま放っておくと、また魔物の氾濫が起きてしまうからね。
 将来起こる火種は、完全に消してしまっていた方がいいに決まっている。

 
 休憩も終わり、俺達は動き出すことにした。まずは入り口を探さないといけないな。
 
「う~ん、ここがダンジョンの入り口の扉みたいなんだけど、開かないですね」
 
 岩山の前で色々と試してみるものの、何も手がかりはつかめなかった。事前に魔法で調査した限りでは、この先に間違いなく通路が続いていることを確認することができていた。
 
「何か隠し扉を開くための魔法があるのかも知れませんね」
 
 アルが丁寧に不審な点がないかを調べていたが、特に怪しいところは見つかっていないようだ。
 
「扉を開けるための呪文ですか? それなら、「開けゴマ!」とか、「オーブンセサミ!」とかで……す?」
 
 モニカが全ての言葉を発する前に、これまでビクともしなかった大きな岩が動き出した。そして、俺達の目の前で、大穴がポッカリとその不気味な口を開けたのだった。
 
「さすがはモニカ様! ダンジョンの入り口を開く魔法を知っているとは!」
 
 ブルックが興奮してモニカに詰め寄った。その勢いに思わず仰け反った状態になるモニカ。
 その今にも倒れそうなモニカの腰を、慌てて俺が支えた。
 
「ブルック、興奮するのは構わないが、周りは良く見ろ」
 
 思わず鋭い口調になってしまった。
 その声にハッとブルックが我に返る。
 
「も、申し訳ございません、モニカ様」
「い、いえ、いいのですよ」
 
 引きつった顔でモニカが答える。モニカとしてはブルックが言うような魔法を使ったわけではないので困惑しているのだろう。
 俺がチラリとサラを見ると、目と目が合って、目礼された。
 どうやらタイミングを見計らってダンジョンの入り口を開けたらしい。全てはモニカの手柄にするために。
 さすがは優秀なメイドのサラだ。主を立てることを良く分かっている。やるじゃない。

「なかなか広い入り口ですね。殿下、どうしますか?」
 
 ギルがウキウキとした目をしてこちらに聞いてきた。その目が、冒険の匂いがする、と物語っていた。
 
「ダンジョンは、出現してから時間が経てば経つほど、攻略が難しくなるそうだね?」
 
 この情報の確認のため、みんなを見渡すと、一様に頷いていた。
 
「このダンジョンの扉はさっき開かれたので、たった今、出現したと言っていいだろう。ということは、今なら最弱のダンジョンに挑戦できるということだ」
「まさか……」

 アルの顔が青ざめた。
 
「それじゃあ今から入って、最弱ダンジョンの味見と行きますか!」
 
 ギルが嬉しそうに言った。それを聞いたみんながざわついた。
 それはそうだ。俺達は森の探索の許可はもらっているが、ダンジョン攻略はそれとは別だ。それに、皇太子の俺がいるのだ。危険なところへわざわざ足を運ぶのは、誉められた行為ではないだろう。
 
「今調べた感じでは、まだ魔物の数も少なく、階層も五階層くらいのようですわね。これなら短期決戦も可能ですわ」
 
 いつの間に調べたのか、モニカがギルの案に補足を加え、賛成を表明した。その情報にみんな覚悟を決めたように頷いた。
 
「では決まりだね。早いところこのダンジョンを潰すとしよう。これでこのキリエの森の驚異はなくなるはずだよ」
 
 こうして俺達は謎のダンジョンへと足を踏み入れた。
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