10 / 68
第一章
改めまして
しおりを挟む
「黙って聞いてればなんなの!?私は!あなたが倒れたまま動かなかったからここに連れてきてあげたの!
もう暗くなってたから、このままだと虫とか動物とかに襲われちゃうかなって思って、大変な思いしてここまで運んできたの!!
それなのにありがとうの一言もなく、人のこと奴隷だ人攫いだって!!
それに!!この子たちは奴隷じゃない!!アイドルっていう、世界中で最も尊い存在なの!!
失礼なこと言わないで!!
ほんっとに!あんた何様のつもりよ!!」
「何様って……俺のこと、知らないのか?」
「知らないわよあんたなんか!!」
「……そうか。」
それ以降、目の前のこいつは黙り込んだ。
言いたいことを言った私も、黙り込む。
……そういえば、こんなに怒鳴ったのははこの世界に来てから初めてかもしれない。
かなりスッキリした。
スッキリしたらお腹が空いた。お腹はいつもペコペコだけど、怒鳴ると体力消費が激しい。生き残るためにも、今後は気をつけよう。
さて、尊い尊いアイドルたちにあんな発言したのは許せないが、これがこの世界の常識だというのなら、ちょっと私も大人気なかったかもしれない。
「で、あなたはなんでこんな所にいるの?迷子?」
「迷子じゃない。」
「そう。このままここに泊まっても大丈夫なの?そんな綺麗な服着てるってことは、この辺の村の人じゃないでしょう?あなたのこと、心配して探してるんじゃない?
気絶してたんだし、ここにはちゃんとした医療を受けられるような場所もない。今日はしょうがないとしても、明日には帰ったほうがいいんじゃない?」
この綺麗な身なりといい、不遜な態度といい、自分のことを知っているであろうという傲りといい、明らかにいい所のお家のお坊ちゃんだ。
絶対、いなくなったら心配される立場にいる人間だと思う。
「体調は問題ない。お前こそ、なんでこんな所にいる。この森がどんな場所か知らないのか?」
「この森?知らない。私が魔法具召喚の儀でのこの耳飾りを召喚しちゃって、村の外にバレてしまったら大変だからって、村長さんが子供の頃に見つけたこの小屋に来ることになったの。
ここに来て、もう3ヶ月になるかな?」
「……この森は、王族を処刑する処刑場だぞ。」
「へぇ……処刑場……え゛?」
衝撃の事実。
え、大丈夫だよね?この世界って、魔法はあるけど幽霊はでたりしないよね?一気にここにいるのが怖くなったじゃん!
「まさか、森の物食べたりしてないだろうな?」
「してないよ。毒だもん。」
「へぇ、知識はあるんだな。しかも、よく3ヶ月も持ったな。まだ子供なのに。」
……子供に子供と言われた。
「なんで、この森が処刑場なの?小屋まであるし……ま、まさか、この小屋で処刑が行われていた……とか?」
「いや、ここは罪を犯した王族が送られる場所なんだ。
処刑は本来魔法によって行われるが、この国の魔法は全てクロス様からいただいたお力だ。クロス様の御加護を受けている王族を、魔法で処刑することは神に背く行いだ。
だから、この森に送られる。何も持たずにこの森に送られた王族は、やがて空腹に耐えかねてこの森のものを食べ、毒によって天に召される。
そのために、この森には毒のあるものしかないんだよ。」
なんてこった。
本当に呪われた(物理)土地だった。
私これ、スマ本がなかったら今ごろあの世行きだったよね。
「ん?ということは、あなたも王族?何が悪いことでもしたの?」
「……違う。ここなら誰も来ないと思って逃げてきたんだよ。」
「何から?」
「………」
その質問に、目の前の彼は黙り込んでしまった。
聞かれたくないことだったのかもしれない。
私は、前世も今世も一般階級の人間だから、彼のような上流階級の人間の事情はよくわからない。
いろいろあるのだろう。聞きすぎるのもプライバシーの侵害になりかねない。
「ごめんね、踏み込みすぎた?言いたくないならいいよ。」
「……とにかく、俺はしばらくここにいる。お前もここにいることを許そう。」
……後から来たくせに偉そうだな。
まぁ、今の話が本当なら、この小屋はガラク村のものじゃないし、よそ者はこっちだ。
「うん、ありがとう。あ、でもしばらく一緒にいるなら名前だけでも教えてよ。本名が嫌なら偽名でもいいからさ。
改めて、こんにちは。私の名前はルナ・ハリス。ガラク村の出身で、今は6歳。あなたは?」
「シーだ。……年は10歳。」
……なんてこった。もっと上だと思ってた。
この国の人たちは日本人から見たらかなり上に見える。
「……あの、さっきは怒鳴ってごめんね、シーくん。」
「は……?」
10歳の子に対して、私本当に大人気なかったかったです。反省。
もう暗くなってたから、このままだと虫とか動物とかに襲われちゃうかなって思って、大変な思いしてここまで運んできたの!!
それなのにありがとうの一言もなく、人のこと奴隷だ人攫いだって!!
それに!!この子たちは奴隷じゃない!!アイドルっていう、世界中で最も尊い存在なの!!
失礼なこと言わないで!!
ほんっとに!あんた何様のつもりよ!!」
「何様って……俺のこと、知らないのか?」
「知らないわよあんたなんか!!」
「……そうか。」
それ以降、目の前のこいつは黙り込んだ。
言いたいことを言った私も、黙り込む。
……そういえば、こんなに怒鳴ったのははこの世界に来てから初めてかもしれない。
かなりスッキリした。
スッキリしたらお腹が空いた。お腹はいつもペコペコだけど、怒鳴ると体力消費が激しい。生き残るためにも、今後は気をつけよう。
さて、尊い尊いアイドルたちにあんな発言したのは許せないが、これがこの世界の常識だというのなら、ちょっと私も大人気なかったかもしれない。
「で、あなたはなんでこんな所にいるの?迷子?」
「迷子じゃない。」
「そう。このままここに泊まっても大丈夫なの?そんな綺麗な服着てるってことは、この辺の村の人じゃないでしょう?あなたのこと、心配して探してるんじゃない?
気絶してたんだし、ここにはちゃんとした医療を受けられるような場所もない。今日はしょうがないとしても、明日には帰ったほうがいいんじゃない?」
この綺麗な身なりといい、不遜な態度といい、自分のことを知っているであろうという傲りといい、明らかにいい所のお家のお坊ちゃんだ。
絶対、いなくなったら心配される立場にいる人間だと思う。
「体調は問題ない。お前こそ、なんでこんな所にいる。この森がどんな場所か知らないのか?」
「この森?知らない。私が魔法具召喚の儀でのこの耳飾りを召喚しちゃって、村の外にバレてしまったら大変だからって、村長さんが子供の頃に見つけたこの小屋に来ることになったの。
ここに来て、もう3ヶ月になるかな?」
「……この森は、王族を処刑する処刑場だぞ。」
「へぇ……処刑場……え゛?」
衝撃の事実。
え、大丈夫だよね?この世界って、魔法はあるけど幽霊はでたりしないよね?一気にここにいるのが怖くなったじゃん!
「まさか、森の物食べたりしてないだろうな?」
「してないよ。毒だもん。」
「へぇ、知識はあるんだな。しかも、よく3ヶ月も持ったな。まだ子供なのに。」
……子供に子供と言われた。
「なんで、この森が処刑場なの?小屋まであるし……ま、まさか、この小屋で処刑が行われていた……とか?」
「いや、ここは罪を犯した王族が送られる場所なんだ。
処刑は本来魔法によって行われるが、この国の魔法は全てクロス様からいただいたお力だ。クロス様の御加護を受けている王族を、魔法で処刑することは神に背く行いだ。
だから、この森に送られる。何も持たずにこの森に送られた王族は、やがて空腹に耐えかねてこの森のものを食べ、毒によって天に召される。
そのために、この森には毒のあるものしかないんだよ。」
なんてこった。
本当に呪われた(物理)土地だった。
私これ、スマ本がなかったら今ごろあの世行きだったよね。
「ん?ということは、あなたも王族?何が悪いことでもしたの?」
「……違う。ここなら誰も来ないと思って逃げてきたんだよ。」
「何から?」
「………」
その質問に、目の前の彼は黙り込んでしまった。
聞かれたくないことだったのかもしれない。
私は、前世も今世も一般階級の人間だから、彼のような上流階級の人間の事情はよくわからない。
いろいろあるのだろう。聞きすぎるのもプライバシーの侵害になりかねない。
「ごめんね、踏み込みすぎた?言いたくないならいいよ。」
「……とにかく、俺はしばらくここにいる。お前もここにいることを許そう。」
……後から来たくせに偉そうだな。
まぁ、今の話が本当なら、この小屋はガラク村のものじゃないし、よそ者はこっちだ。
「うん、ありがとう。あ、でもしばらく一緒にいるなら名前だけでも教えてよ。本名が嫌なら偽名でもいいからさ。
改めて、こんにちは。私の名前はルナ・ハリス。ガラク村の出身で、今は6歳。あなたは?」
「シーだ。……年は10歳。」
……なんてこった。もっと上だと思ってた。
この国の人たちは日本人から見たらかなり上に見える。
「……あの、さっきは怒鳴ってごめんね、シーくん。」
「は……?」
10歳の子に対して、私本当に大人気なかったかったです。反省。
0
お気に入りに追加
564
あなたにおすすめの小説
おっさんの転生珍道中
dai
ファンタジー
神様の不手際で死んでしまった。
38歳既婚者子持ちの笑いあり、涙ありの転生珍道中!
主人公藤木大樹(フジキダイキ)がおりなす、ハチャメチャ痛快冒険活劇。
藤木大樹はどうなる?
家族はどうなる?
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜
霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……?
生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。
これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。
(小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
記憶喪失の転生幼女、ギルドで保護されたら最強冒険者に溺愛される
マー子
ファンタジー
ある日魔の森で異常が見られ、調査に来ていた冒険者ルーク。
そこで木の影で眠る幼女を見つけた。
自分の名前しか記憶がなく、両親やこの国の事も知らないというアイリは、冒険者ギルドで保護されることに。
実はある事情で記憶を失って転生した幼女だけど、異世界で最強冒険者に溺愛されて、第二の人生楽しんでいきます。
・初のファンタジー物です
・ある程度内容纏まってからの更新になる為、進みは遅めになると思います
・長編予定ですが、最後まで気力が持たない場合は短編になるかもしれません⋯
どうか温かく見守ってください♪
☆感謝☆
HOTランキング1位になりました。偏にご覧下さる皆様のお陰です。この場を借りて、感謝の気持ちを⋯
そしてなんと、人気ランキングの方にもちゃっかり載っておりました。
本当にありがとうございます!
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる