狂愛サイリューム

須藤慎弥

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20❥不穏

20❥10※

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 鼻先でキスをしたまま、腰を絶え間なく動かしつつ近距離で見詰め合っていると、時間の感覚がなくなってくる。

 火照った身体を撫で回すだけでなく、可愛らしくツンと育った胸の突起を舐めて食みたいけれど、葉璃の潤んだ瞳に囚われて目を逸らせないでいた。

 時折腰を回し、ぐちゅぐちゅっと中を掻き回しては最奥を貫いて葉璃の体を震わせる。

 日頃から射精までが長い聖南の性器も、意識と同様に快楽に従順ではあるが、なんと言っても今日は一枚薄い膜越しでの挿入。

 設けたタイムリミットを超過しそうな気配を、葉璃でさえ勘付いているに違いない。


「葉璃ちゃん……俺、ゴムしてっから一時間じゃ終わんねぇかも」
「え、っ……あっ、んん……っ」
「延長は? オッケー?」
「っ、だめ、……!」


 そんな事を言って可愛く睨んでくるも、葉璃の両脚は聖南の腰にしっかりと巻き付いている。

 見詰め合いの最中、聖南がよそ見を許さなかったので時計は見ていないと思うが、そろそろ件の一時間が経過しようとしていた。


「ダメかぁ。 そっかぁ。 じゃあ、葉璃の精液枯れるまで突きまくっちゃおー」
「あ、うそ、っ……だめ、っ……やっ……せな、さん……っ、そんな……ぁぁあ……っ」


 延長の許可が下りないならば仕方ないと、渋々見詰め合いから離れた聖南はおもむろに葉璃の細腰を掴んだ。

 それからすぐ、肌のぶつかる音が速くなる。 腰を打ち付けるごとにパンパンとピストン音が立ち、内側で感じる前立腺の膨らみから最奥までを幾度も激しく貫いた。

 ゆるく突いては引き、時々奥をぐぽぐぽとこじ開けて互いを昂ぶらせていたが、聖南の底無しの欲求はそれだけでは満たせなかった。

 素早く襞を擦り上げ、ローションと粘液をぐちゅぐちゅと混ぜ合わせる。

 腰を掴んでいる聖南の両腕に葉璃がひっしとしがみついていなければ、律動についてこられない。

 食みたかった左胸の突起を味わい、その数センチ下に真っ赤な痕を二つ残す。 横目に時刻を確認すると、すでに延長へと入っていたが聖南は何も見ていないフリをした。

 二人のセックスには何より重要なことを、まだしていないからだ。


「葉璃、唾液ちょうだい」
「……っ、……ふぁ……んっ……」


 ゆるやかなピストンに変え、堕ちる寸前の葉璃にキスと唾液を強請る。

 虚ろな葉璃の唇を舌で割り、呼吸諸とも奪いにかかった。 葉璃はほとんど無意識に聖南の舌に応えている。


「もっと」
「んんっ! ……んっ……んっ……」
「まだ足んねぇ。 舌動かして」
「んむぅっ……っ、はぅっ……んくっ」


 唾液の分泌まで促した聖南は、葉璃の舌を吸い上げて自身のそれも彼の口腔内に送り込んだ。 「飲め」と言わずとも、開いた喉に聖南の唾液は落ちていく。

 お決まりの粘液の交換でさらに興奮を煽られ、呼吸も絶え絶えな葉璃を再び激しく揺すった。

 嬌声が掠れている。 薄い腹に三度散った葉璃の精液が、揺れに耐え切れずあちこちに飛び散った。

 生々しい行為のあらゆる音が寝室に響き渡り、耳に入る粘膜音に頬を染めた葉璃はしきりに聖南に向かって両腕を伸ばす。

 その腕を取ってやりながら、恋人を超越し〝家族〟に一歩近付けたと喜ぶ聖南の想いを、まさに一心にぶつけていった。


「気持ちぃ? 葉璃ちゃん、気持ちぃ?」
「あっ……っ、んっ……ん、ん、んっ……っ」
「俺もー♡」
「やぁっ……っ……っ、はぁ、っ……」
「震えてんな。 葉璃、イってる?」
「はぁっ、……っ……ぁ、……っ」


 問い掛けても反応が無くなった。

 気持ちいいかの問い掛けには頷いていたが、それどころではないと掠れた嬌声を上げている。

 内壁の絶妙な締め付けと熱さにより、聖南も次第に意識がぼんやりとしてきた。

 体内を巡る血流が性器に集中し、ひと突きするごとにゴムの先端へカウパーが溜まっていく。 下半身をビクビクと震わせ、先程から何度も射精せずに絶頂を迎えている葉璃が、内側で聖南の性器をぐにぐにと圧迫してくるのだ。


「葉璃、そんな絞るなよ……っ」
「んぁ……っ、……っ……ぁっ……」
「あー……イきそ……」
「ん、っ……んっ……ん──っ」


 葉璃の耳元で囁き、耳たぶを唇で食んだ瞬間だった。

 ドクンドクンと速まった心臓の鼓動と同じくして、蠢く壁に絞り取られるように、性器に集中していた熱が放たれる。

 シーツの上で膝を踏ん張っていた聖南は、何度か腰を動かして余韻を楽しんだ。

 いつもの半分ほどしか開いていない天井を見上げて、上体を上下させて呼吸する葉璃に口付ける。

 虚ろな葉璃は当然、微動だにしなかった。


「……葉璃」
「…………はい、……」
「また風呂入んなきゃだな」
「……はい。 ……あ、っ……」


 葉璃の迸りで胸元まで濡れたいやらしい体を眺め、性器の根元を持ってじわりと引き抜く。

 その時、まるで真っ最中のような嬌声が上がって聖南のモノがビクッと反応した。


「葉璃ちゃん……なんでいっつも、抜く時かわいー声出すんだよ」
「えっ、……いや、だって……聖南さん、かたいまんま抜くから、ずるずるって……気持ちよくて……」
「………………」


 視点の定まってきた魅惑の瞳が、まだまだ足りないが甘んじようとしていた聖南の欲望をこれでもかと揺さぶった。

 先端がその証で膨らんだコンドームを始末していた聖南に、もじもじしながらそう告げた恋人はまったく自覚が無い。

 精液を纏った真っ白な肌を露出し、疲れきったトロトロな表情で聖南を見、性欲が底無しな恋人の前で〝抜く時が気持ちいい〟など、絶対に白状してはならなかった。


「あっ……え、っ! 聖南さんっ、なんでまた……っ」
「今のは葉璃が悪い」
「やっ、やっ……せなさん……っ」
「あと三十分延長で」
「え、んんっ……ん、っ、聖南さんのうそつきー!」
「俺、完璧な男にはなれねぇみたい」


 我慢の効かない子どものように、新しいコンドームを装着する間も惜しいと性欲を突き立てた聖南に、葉璃は遠慮なく怒っていた。

 しかし、〝そんなの知ってます!〟と絶え絶えにキレた葉璃はやはり、聖南を甘やかしている。

 三十分、一時間と延長時間が延びても、葉璃は最後には「好きにしてください」と頬を染めて言うからだ。






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