150 / 539
14♡思案
14♡5
しおりを挟む… … …
「葉璃! ……葉璃! 葉璃!」
「…………?」
翌朝、ただでさえそんなに寝起きが良くない聖南が、俺の名前を呼びながらめちゃくちゃ怒っていた。
リビングや書斎を走って移動する聖南の足音が聞こえて、寝ぼけながら洗面所で歯磨きをしていた俺はその声で一気に目が覚めた。
一体何事かと、俺は何も考えずにひょいっと扉から顔を覗かせる。
「聖南さーん、おはようございます。 俺ここですよ。 どうしたんですか?」
すると、俺と目が合うなりキッと目尻を吊り上げた聖南がのしのしと歩いてきて、……一言目がこれだ。
「なんで俺に黙って居なくなんの?」
「……えっ?」
「起きたら葉璃が居なかった。 俺、寂しかったんだけど」
「えぇぇっ?」
そんな、……い、居なくなるって、ベッドから出ただけだよ。
しかも寝室からはすぐの洗面所に居て、歯磨きしたらシャワーでも浴びて目を覚まそうかなって、久しぶりの休日にワクワクしてただけ。
今日は聖南も一日お休みだって言ってたし、気持ち良さそうに寝てるところを朝から起こすなんて出来なかった。
聖南の優しい気使いであれからすぐにグッスリと眠った俺は、昨日の疲れを引き摺る事なく動けてる。
ほんとはもっとエッチしたいって、俺の腰にずーっとあたっていた聖南のものが訴えてきてたけど、我慢してくれた。
俺には特別優しくて甘い聖南には、朝一番に「昨日はありがとうございました」ってお礼を伝えようと思ってたのに……。
口の中をすすいで振り返ると、盛大に拗ねた聖南が勢いよくぎゅぎゅっと抱き付いてきた。
その勢いがあんまり強くて、持ってたコップから水が溢れて俺も聖南もびっしょりと濡れてしまう。
「むぁっ……ちょ、っ……聖南さん! 俺うがいしてたからびしょびしょに……っ」
「知るか。 慰めて、葉璃。 俺寂しかった。 葉璃が居なくなったら生きていけねぇって言ってんだろ。 何回言えば分かんの? 離れるなよ、葉璃……」
「えぇ……俺は歯磨きしてただけですよ」
そんな大袈裟な……と言い返す冷静な俺は、抱き付いてくる聖南の向こうにある棚に、歯ブラシとコップをしまった。
それから大きな子どもの背中をよしよし、トントンっと擦って叩いて、宥めてあげる。
悪い夢でも見たの?なんて聞いてみたところで、返ってくる台詞は大体分かる。
綺麗な顔をこれでもかと歪めて、「葉璃が居なかったからだろ!」と寂しかったアピールを強化するんだよね。
ほんとに、可愛くて困った人だ。
この家に俺と居るときだけ、『CROWNのセナ』がどっかに行っちゃうんだから。
「はーるちゃん。 体力回復したみたいだな?」
「さ、さぁ?」
「休憩欲しかったらおとなしく俺について来い」
「………………っ」
怒って、拗ねて、最大限に甘えん坊をぶつけてきたかと思えば、いきなり獣の目をして俺をドキッとさせる。
大きなタオルを二枚手に取り、ギラギラした目で「ついて来い」と言われた俺は否応なしにときめいた。
甘くてとろとろな聖南も好きだけど、たまにしか見せない強い物言いにキュン…となる俺って変なのかな。
「あ、ごめん。 ついて来て、葉璃ちゃん」
「そんな……言い直さなくても良かったですよ。 聖南さんの命令口調って、結構……好き、です」
「うわ、何それ。 朝勃ち中の俺にそんな事言っていいの?」
「あ、あさだち……! ほんとだ……っ」
手を引かれてベッドルームに連れ込まれると、聖南はすぐにあれやこれやと準備し始めた。
言われて見てみると、聖南の股間がたしかにもこっと膨らんでいる。 男の生理現象にしては、聖南の動きが機敏だ。
ベッドに腰掛けた聖南の隣に、そこから目が離せない俺もちょんと座ってみる。
シャツを脱いで上半身を顕にした、聖南の首元に在るシルバーのネックレスがキラッと光った。
やらしい。 なんてやらしいんだろ、聖南。
視線も、俺の手を握ってくる大きな手のひらも、微かに香るいつもの大人な匂いも、ぜんぶが色っぽいなんてズルイ。
俺は、釘付けだった。
いつの間にか聖南の表情が穏やかになってる事にも気付かないで、俺は、───。
「やーっぱ葉璃には敵わねぇな。 一言で俺の機嫌治しちまうなんてもう……」
「舐めたい!」
「……は、?」
「舐めたいです! 聖南さん、舐めさせて!」
「えっ、あ、いや、……はっ?」
俺はベッドから降りて、聖南の足元に正座してお願いした。
予期せぬ俺の淫らな懇願に、ローションのボトルを掴んだまま聖南は固まってしまい目を丸くしている。
さっきまでの勢いはどうしたの。
「そんなに言うなら舐めろ」くらい、言ってくれてもいいよ。
「お願いっ! 聖南さん!」
「だめ! それはしなくていい!」
いつものように、聖南は及び腰で俺から離れようとする。
すぐにでも快楽を欲しているはずの中心部をさっと隠して、俺の視界から遮った。
「聖南さん、昨日言いましたよね! 俺の言う事何でも聞いてやるって!」
「言ってねぇ! あ、いや…………言ったか……?」
「言いました! 俺の望みはこれだけです!」
「葉璃……もっと高望みしろよ……」
「だって聖南さん、いつも舐めさせてくれないもん! こんな時じゃないと……っ」
「マジでダメ。 嫌だから拒否ってるわけじゃないんだからな? 悪い事させてる気になるって俺ずっと言ってんだろ?」
それは耳にたこが出来ちゃうくらい何回も言われてるから、そんな事分かってるもん、としか返せない。
……どうしたら舐めさせてくれるんだろう。
下手なりに絶頂を迎えさせてあげる事もあったし、いざ咥えてみたら気持ち良さそうに天井を仰ぐし、色っぽい吐息は漏らすし……ほんとは嫌いじゃないと思うんだけどな。
とろとろで甘々な聖南は、俺の髪を撫でて「落ち着け」と言ってくる。
聖南を意味深に見詰めて、お願い光線を出してみたけどこれもダメだ。
「葉璃ちゃんはそんな事しなくていい」
「………………」
ちゅ、っとやわらかなキスをくれる聖南が、俺にはどこまでも優しいから罪悪感を抱いちゃうのかな。
──そっか、分かった。
ちょっと危険なやり方だけど、聖南の性格を誰よりも把握してる俺は閃いてしまった。
10
お気に入りに追加
226
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)
藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!?
手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる