僕らのプライオリティ

須藤慎弥

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後日猥談

─初夜─16

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「僕たちのセックスって……大変なんだね」
「あぁ、いや……まぁ……、はい……」


 お尻を揉んでたりっくんが、ふと手を止める。僕の感想に同調して苦笑いを浮かべた。

 僕の初体験の感想は一言。──〝大変〟。

 回数を重ねていったら、慣れるものなのかな。

 もっとりっくんが積極的に動いたり、僕は息を吸ってばかりじゃなくなる?

 合間にたっぷりディープキスしちゃったりして、お互いに「好き」って言い合ったりなんかもして。

 いろんな体位を試したり、ちょっとアブノーマルなことに手を出したりもするの?

 少しだけ経験しちゃった僕は、そんなことを想像するだけで頭が爆発しちゃいそうだ。

 持ち主の承諾を得ないままりっくんのモノを咥えたあの日の僕は、どうかしていたとしか思えない。

 今やれって言われても、恥ずかしくてムリだもん。

 コンドームを脱いだ立派なモノが、どうしても視界に入ってくるんだけど……それを発散させてあげる手立てが今の僕には思いつかない。


「……りっくん、まだまだ元気そうだね」


 意識を飛ばした僕は間違いなくセックスってものを体感したけど、りっくんのはまだツヤツヤでギンギン。

 ……不完全燃焼、なのかもしれない。

 イく時信じられないくらい締めちゃったから、りっくんはそれで射精を煽られた形になってる。

 一緒にイくって目標は達成したものの、明らかに二回戦目を熱望してるモノを見ていると、知らず僕の片手がお尻に向かう。

 ……濡れは問題ない。りっくんはすごくゆっくり動いてくれてたから、足も腰も痛くない。

 ……に、二回目……するのかな? 僕、正気保ってられそ……?


「どうしよう、あの……えっと……りっくん、もう一回……?」
「い、いえっ、これはじきに治まりますのでお気になさらず! 初回からがっつくなんて大人げないことはしません! あぁいやっ、挿れたいと騒いだ手前偉そうなことは言えませんが……! ともかく今日は、これでおしまいです!」


 俺のことは気にしないで、と笑顔を見せてくれたりっくんは、お尻をやらしく揉んでた手のひらで優しく僕の頭を撫でた。

 脱力してる僕を見かねてそう言ってくれてるんだろうけど……じゃあそのギンギンでご立派なモノはどうする気なの。

 あれ、待って。もしかしてりっくん……。


「ちょっ、確認だけど、りっくん……イった?」
「えっ? イきましたよ!? 証拠見せましょうかっ?」
「いやいい! そ、そそそれは見せなくていい!」


 りっくんは、上部に手をかざすと勝手に蓋が開くハイテクなゴミ箱に手を伸ばそうとした。そこから取り出そうとした物くらい、僕にだって見当がつく。

 僕の慌て具合にクスクス笑ってるりっくんが、それを本気で見せようとしたのかどうかまでは読めないんだけど。


「射精する時、恥ずかしながら意識が飛びかけました」
「えぇっ? そうなの?」
「はい。あまりに気持ちよくて」
「あっ……うっ? そ、そうなんだ……」


 ……良かった。僕だけが気持ちいいわけじゃなかったんだ。

 りっくんも、ちゃんと……。


「冬季くんのイイところを発見できたので、次回からは我慢させずにイかせてあげられます」
「そ、そうしてくれると嬉しい……。寸止めツラかったもん……」
「すみません。初めては冬季くんと一緒に果てたかったんです。どうしても」
「…………っ」


 そっ、その顔はずるい……!

 お伺いを立てるような神妙な表情は、りっくんの髪色も相まってどこか忠誠的なワンコを思わせた。

 イケメンの自覚が無いってこわい。

 年下の僕にも平気でそんな可愛い顔をしてくるりっくんは、自分のことをスパダリだって絶対に認めない。


「……っ、冬季くんっ?」


 だるい体を起こした僕は、りっくんの足の間に座ってぎゅっと抱きついた。



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