僕らのプライオリティ

後日猥談

─初夜─９

「う、んくっ……！　あっ……」
「指の向きを変えます。君のいいところを探さなくては」
「あっ……ちょっ……ぁんっ……！　やぁ……っ」
「そんなに声が出てしまうほど気持ちいいんですか？」
「んっ、だ、だめ……っ？　僕、声……っ、我慢してた方がいい、……っ？」


　今さら自分の口を塞いでみても遅い。

　ついうっかり好きに喘いでたけど、実は僕の声がりっくんにとって耳障りだったのかもしれない。

　でも……りっくんの指が入ってるんだよ。

　抑えられる自信は無かったけど、りっくんが「我慢して」って言うなら僕は喜んで従う。出来るか分からないけど、口塞いで頑張る。

　二本に増やされた指を締め付けて、今嗜められたばかりの〝余計なこと〟を膨らませた僕は、りっくんを涙目で振り返った。


「……とんでもない。異常なほどに興奮していますので、どうぞ好きなだけ喘いでください。我慢なんてさせませんけどね」
「あぁっ……！　あぅっ……ん、ん……っ！」
「この声を上げさせているのは俺なんだ、もっと啼かせたい、俺の手でもっと狂わせたいという、そうですね……支配欲に似たものが湧き上がってくるんですよ。興奮しないはずありません」
「ひぁ……っ！　あっ……」


　りっくんが言うとマジに聞こえちゃう恐ろしい単語も、ナカを蠢いてる二本の指と同じくらい僕の胸を熱くした。

　拓くための行為に移ると吐息が多くなったりっくんは、言葉通りすごく興奮してくれてるんだと、顔を見なくても分かる。

　ローションを足して滑りがよくなったナカを、ぐちゅぐちゅとかき回されて意識が飛びかけた僕もそうだ。


「あっ……りっくん……！　だめ、そんなにした、ら……！　やぁ……っ」
「余計なことは、考えないように」
「ん、んんっ……！」


　ただ抜き挿しされてるだけで気持ちよかったのに、僕の〝いいところ〟を探す指は容赦が無い。

　……あんなにじっくり動いてくれてたのは何だったの。

　誘うようにお尻を揺らさなくても、りっくんの指がナカを擦り上げるたびに勝手に腰がゆらゆらしてしまう。


「冬季くんの声もそうですが、この扇状的な光景……たまらない。君のナカも、俺の指がふやけてしまいそうなほど熱くて狭い……。こんなの興奮するなという方が無理です」
「あぁっ……だめっ、押しちゃ……だめっ」


　僕自身でさえ知らない場所を探ろうと、りっくんは何の躊躇いもなく指の腹を使ってナカをグニグニ押してくる。

　実況めいた言葉に恥ずかしくなって枕に顔を埋めると、「声が聞こえない」と不満を吐かれた。

　でもそんなの気にしていられない。

　指を抜き挿しする音が激しくなると同時に、敏感なナカを擦られる快感も強くなる。

　今まで知らなかった場所まで届くりっくんの指が、狭い襞を拡げるようにやらしくバラバラの動きをした。

　ビクビクっと背中を震わせた僕は、枕にしがみついてくぐもった声で喘いだ。

　だってまるで、りっくんの指に犯されてるみたいなんだもん……！　


「んー……どこなんでしょう……？　はじめはそうそう見つけられないものなんでしょうか？　専門外だと難しいですね」
「し、知らな……っ、あっ……んッ……！」


　きっとそれは前立腺のことを言ってるんだろう。

　二本の指が躍起になって探してるものは、自分でアナルを慰めて早四年の僕自身でさえも見つけられてない。

　ただ僕は、自分でナカをこんなに強く刺激したことがなかったから、りっくんの声と指に身を任せてるしかなくて……。


「ナカは順調に拡がっているし、そんなに焦って探すものでもないか……」
「ぁあ……っ！　りっく、ん……っ、んん……っ」


　僕に話しかけてるのかと思ったら、りっくんには珍しい独り言だった。

　意思を持ってるみたいにバラバラに蠢いていた指が、途端におとなしくなってゆるゆるとナカにローションを押し込んでいく。


「冬季くん、痛くはありませんか？」
「へっ？　ぜ、全然……っ！」
「そうですか。では三本目、挿れてもいいですか？」
「あぅっ……？　も、もう、いれてる、でしょっ？」
「……すみません。堪え性が無くて……」


　三本目、なんて……僕には未知の世界だったのに。

　ズプンッと入ってきたのは確かに三本だって分かるのに。

　どうしてこんなに簡単に入っちゃうの……？

　狭かったのは入り口だけで、入ってしまえばバラバラに動いていたずらが出来るくらいになってしまっている。

　そこだけに集中しようとしても、僕にはりっくんと同じくらい堪え性の無い分身が居て。


「ひぁ……っ！　あっ、あっ……ヤバイ、りっくん……っ、りっくん……！」
「どうしました、何がヤバいんですか」
「だめ、イく……っ！　そんなに、ナカ……っ、ぐちゅぐちゅされたら……！　気持ちよくて、出ちゃ……うっ……！」


　寸止めされたモノに、いよいよ限界が迫っていた。

　蠢く指がぐちゅぐちゅと出し入れされて、触れてもないのに勃ったままだった僕のモノがずっとカウパー垂れ流してたの、りっくんは気付いてたでしょ……？


「わ、分かりました。抜きます」
「えっ？　抜いちゃうのっ、……あぁっ……！」