迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑬クラスマッチ

─迅─⑤

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 俺はそんなに熱くなれねぇんだって。

 スポーツにおいての勝ち負けなんか、ぶっちゃけどうでもいい。 俺の性格上、誰かとの協力プレイ、チーム戦なんてのはたとえゲームでもムリだ。

 十代の大半を喧嘩とセックスに費やしてたんだぞ。

 この俺に協調性ってもんが培われてるわけねぇだろ。


「……フッ、見てみろよ」


 翼に言われて、体育館の中に戻る。

 俺を放ったらかしてる雷はまだ、袖と裾を捲くった中坊みてぇなナリで元気にバレーボールと戯れている。

 ニコニコで可愛い。 そんな楽しいかってくらい笑ってやがる。

 コート内に張られたネットを、屈まずに難無くくぐれそうなチビさも可愛い。 背もそうだけど、ツラがまるで野郎じゃねぇんだよな。

 それが可愛いえくぼをほっぺたにほがして笑ってんだ。

 カレシじゃなくても見惚れる。


「バレーの知識なんか無ぇくせに、コーチ面して張り切ってんの」
「………………」
「おい雷にゃーん! お前が前いくと集中的に狙われっぞー!」


 揶揄い混じりで雷に声を掛けた翼に、戯れていたボールをガシッと掴んだチビが猫目を吊り上げた。

 可愛い。 キスしてぇ。

 ……畜生、俺は明らかに欲求不満だ。


「うるせぇぇ!! それはコイツらがフォローすっからいいんだよ!!」
「なんで俺らが水上のペースに合わせなきゃなんねぇんだよ」
「なんだぁ!? お前らは俺に無い身長ってもんを持ってんだろーが! なんのためにそんなデカくなったんだ! 俺を守るためだろ!?」
「ブハッ……! そんなつもりサラサラ無ぇけど?」
「はぁ~ッ!? ったく、しょうがねぇな! 二週間でその根性鍛え直してやる!!」
「水上に鍛え直されるほど落ちてねぇわ」
「無駄口叩いてねぇでレシーブ練習するぞ! 二週間しか無ぇんだからな!」
「熱血ウゼェ~~!」


 ……おい、俺の雷にゃんに気安く触るな。

 優勝を掲げた二組だからって、雷が生意気で可愛いからって、クラスメイトだからって、練習に付き合ってやってるからって、俺の許可なく雷に触るなんざ百年早えだろ。

 ウゼェと言いながら、張り切る雷を取り囲んで〝練習〟してるくせに。

 てか俺がここで見張ってるの、雷は気付いてんじゃねぇの?

 それなのに、この一週間一回も近寄って来ねぇのは何でなんだ。

 俺はお前のカレシだろ?

 しばらく夜の大会開いてねぇから溜まってんだろ?

 指一本レッスンからこんなに日が空いたら、前立腺開発の前にまた慣らす工程から入んねぇとだぞ?

 今日にでも復習レッスンしてぇんだが?

 ……いや、マジで俺は欲求不満か。


「………………」


 俺と目が合っときながら、雷は茶髪のクラスメイト達とボールで戯れる練習を再開した。

 マジでクラスマッチまで俺を放ったらかす気かよ。

 ……フンッ。 バイトだから俺はもう行くけど。

 いいんだな? 行っちまうぞ?

 とりあえず今近付いてくれば、バイバイのハグくらいはしてやってもいいんだけど?


「……迅、今にも人殺しそうなツラしてるぞ。 どういう心境?」


 近付いてきたのは可愛いカレシじゃなく、ヒマな悪友、翼だけだった。

 手でマイクを作って、ニヤニヤしながら俺にそれを向けてくる。 どこぞの記者か。

 俺は不機嫌丸出しで鞄を脇に挟み、回れ右する。

 過去最高に学校行事が憎い。

 欲求不満な上に、チビ助を抱きしめる事も出来ねぇなんて、何が〝高校生活最後の大切な思い出を作りましょう〟だ。

 笑わせるな。


「俺はクラスマッチなんかどうでもいい」
「はいはい、それで?」
「でも雷にゃんがあんなに楽しそうにしてんならいいと思ってる。 〝今年で最後〟だし」
「……迅も雷にゃんの魔性にかかってんのな」
「………………」


 そう、俺は雷がはしゃいでる姿見るのは好きだから、いいんだ。

 まったくイチャイチャ出来なくて欲求不満で爆発しちまいそうだけど、雷が楽しければそれでいい。

 優勝してぇならすりゃいいじゃん。

 二組以上に気合入ってるクラスは無ぇんだし、その願望は案外楽勝だと思うよ。


「ただ一つ、キレそうな事がある」
「お、待ってました」
「なんで俺と雷にゃんは同クラじゃねぇんだ」


 この学校で唯一、俺の不機嫌オーラを面白がってる翼にも腹が立つ。

 コイツは雷とそれらしい〝思い出〟が作れるから羨ましい。

 卒業まであと四ヶ月。

 俺と雷はエロい思い出はたくさん作れても、何かを協力して成し遂げるっつー〝学生らしい〟事は一つも出来やしねぇ。

 はしゃいでる雷の周りに居たクラスの連中に、激しい嫉妬を覚えた。

 俺のもんに触るな──よりも、俺にはどう足掻いても不可能な協力プレイを雷と出来る二組の連中が、羨ましくてしょうがねぇんだ。


「迅、俺も一つ言っていい?」
「何だよ」
「……ガキか」
「……うっせ」


 ンなの俺が一番分かってる。

 勝ち負けがどうでもいいと思ってるのはホントだ。 けどな、雷とだったらあんなアオハル経験してみたかった。

 同クラじゃねぇ事にこんだけムカついてるとか、俺だって自分がキモい。

 はぁ……。

 金髪チビヤンキーな転校生と俺を〝混ぜたら危険〟だと判断したのは、どこの誰だっつの。

 混ぜた結果、めちゃくちゃ仲良しこよしなんですけどねぇ?





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