迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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⑦曲解

─迅─②

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 いや、さすがに二週間はおかしい。

 これは避けられてんのか?

 柄にもなくポジティブに考えてた俺が、彼氏の座を射止めて浮かれてたから気付かなかっただけ?

 雷を育てた陽キャ丸出しな親が、そう毎日溺愛息子に用事なんか頼むか?

 学校で出くわす度に見られるいかにもな反応が可愛くて、俺は余裕ぶっこいて寛大な彼氏を演じてたがそろそろ我慢の限界。

 下半身も爆発寸前だし、明らかに俺を避けてる雷の素早い逃げ足を褒めてやる気も失せた。

 何がイヤって、付き合ってるうちの三分の二は雷が俺にウソ吐いてること。


「──雷にゃん」
「……ヒッ!!」


 俺のクラスを覗くキンキラキン頭の上に、ぽんっと掌を乗せた。

 ビクゥッと肩を揺らして振り返った雷が恐る恐る見上げてくると、思わず絞め殺したくなるぐらい、めっちゃくちゃ抱きしめたい衝動に駆られる。

 放課後の教室の中を窺って、俺が居ない隙に今日もこっそりご帰宅か? そんで駅に着いた頃メッセ寄越す気だった?

 お前の動向は全部分かってんだよ、雷にゃん。


「今週の土日は来るよな?」
「いッ、いや、む、むむむムリかも!」
「かも?」
「あぁッ、ウソ! かもじゃねぇ! ムリだ!」
「……家の用事?」
「そうそうそうそうそう!!」
「へぇ?」
「なんか最近忙しくてさぁ、俺ひっぱりだこなんだよねー! もっさん達は元気にしてるかいッ?」


 何気ない会話をするフリで、隙あらば逃げようとする雷にピタッとついて歩く。

 相変わらず分かりやすい。

 どこの誰からひっぱりだこなんだよ。

 お前いっつも、家から一歩も出てねぇだろ。


「毎晩写真送ってんじゃん」
「うんうん♡ ぜんぶ保存して毎晩見てる♡ モフりてぇなぁ♡」
「今から家来れば?」
「うん、行く行く!♡ ……あッ、……あ、うッ! ムリ! ……うぉっ!?」


 墓穴を掘った瞬間あたふたし始めた雷を、予定通りトイレの個室に引っ張り込んだ。

 今日こそ付き合ってる実感味わわせてもらう。

 十四日も待ったんだ。

 自分で言うのもなんだが、俺ってかなり辛抱強くて包容力満点な彼氏じゃね?


「雷にゃん」
「ひぇっ!?」


 ここがトイレなのはいただけねぇ。

 でも壁ドンは、どんな時でも有効らしい。

 ほんとはガチギレして問い詰めてやりたい気持ちでいっぱいなんだが、真っ赤になった雷のツラ見てるとそこまでの感情が湧かねぇから不思議だ。

 両肘を壁について、挙動不審に目玉を動かしながら見上げてくる雷のツラに迫る。


「俺、一応広ーい心で雷にゃんのこと信じてんだけど、信じさせてくんねぇのはあんまよくねぇと思う」
「信じさせ……? 信じてる? ん、っと……? えっと……」
「雷にゃん、もしかして俺から逃げてんの?」
「いぃッッ!? い、いぃッッ?」
「……どうもさっきから会話出来ねぇな」
「ぴよっ!?」
「ん、今度はヒヨコ?」
「違ぇよ! 髪はそれっぽいかもしんねぇけど!」
「あぁ、ほんとだ。 そういう意味で言ったんじゃねぇけど。 可愛いな、ヒヨコか」
「…………ッッ!」


 それ以上ツラが赤くなったら倒れちまうよ。

 俺にドキドキして、噛み合わねぇ会話を繰り広げる雷とまともに話したの久々なんだけど。

 お前は寂しくなかったのか?

 ウソ吐いて俺から逃げて家ン中で閉じこもってる時、お前はどんな事を考えてた?

 ヤリチンな俺の浮気心配して嫉妬したりとかしてねぇ?

 俺は……知りてぇよ。

 雷が今、どんな思いで俺の壁ドンを受けてんのか。


「なぁ、雷にゃん。 最近抜いてんの?」
「え……ッ? あ……いや、ぜんッぜん!」
「抜いてんだ。 ちゃんと乳首も触ってるか? どう摘むか、どう動かすか、もう分かんだろ?」
「なッ、なんで触んなきゃ……んっ♡」


 ムムッと尖らせた唇に、俺はあえなく誘われた。

 コイツ……俺の目の届かねぇとこで抜いてたのか、自分で。

 それなら俺にヤらせろよ。

 聞くまでもなくソッチは奥手な童貞男子を急かしたりしねぇから、逃げんじゃねぇよ。

 前歯の隙間から舌を差し込んで、俺を待ってたとは思えねぇ引っ込み具合のソレと絡ませる。

 俺が必死で絡ませようとしても、会話と同じでなかなか絡み合わない雷はキスが下手だ。

 十日以上もキスしてねぇから、舌の遊び方も呼吸の仕方も忘れてる。


「ふ……ッ……っ、んっ……♡」
「雷にゃん、俺もっと雷にゃんとの時間欲しいんだけど」
「ふぁ……♡ ンッ、んっ……ん、っ……♡」
「俺とは居たくねぇか?」
「んーん、っ……んーんっ、も、……っ、お前ここガッコ……ッ!」
「逃げてるだけじゃ分かんねぇよ。 俺に言いてぇことあんならハッキリ言え。 雷にゃんと俺の仲だろ?」
「ぐぬぬぬ……ッッ」


 細い腰を抱いて、キスの合間に質問攻めすると雷のツラが可哀相に歪んだ。

 ピアスごと耳たぶを触って、おとなしく喘ぐその声に気持ちが昂る。

 背伸びしても足りねぇチビさが可愛くて、がっついた俺を突き飛ばしもしねぇでしがみついてくる掌が可愛くて、何よりウソを吐き通せねぇ素直さが可愛い。

 控えめにしてやったキスだけでトロ顔を見せる雷は、俺がどんだけ〝可愛い〟と思ってるか、最後までヤっちまいてぇの我慢してるか、多分まだ分かってねぇんだよな。


「……別に、……何も無ぇよ」
「何も無くて二週間以上逃げ回るヤツが居るか。 ウソはダメだ。 俺にウソは吐くな」
「…………ッッ」
「おら、早く吐いちまえ。 何言われてもキレたりしねぇから」
「そんなこと言われても……ッ! 俺も分かんねぇんだよ! なんで迅のこと見てたら心臓痛くなんの!!」
「心臓?」
「そうだよ!! 心臓チクチクチクチクしてきやがって! あのいわくつきの宿で俺に何か呪いかけたろ!」
「………………」




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