迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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④監視が強化されたんですけど

─雷─3

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「もう番犬来た」
「~~迅ッ! 助けろ! 今すぐ助けろ!」


 鬼瓦迅之助……もとい、教室の扉にもたれてスカしていた迅が、ゆらりと歩いてくる。

 いやいや、そんなのんびりモデルウォークするなよ! ここはくたびれた創立百年近いオンボロ校舎の中!

 顔は今日も相変わらずモデル張りにイケメンだけど、お前の大好きな俺の耳がピンチに見舞われてるぞ!

 鬼瓦どころか普通のイケメンで現れるってどういう事だ!


「──なんかデジャヴだな」
「デジャンって何だよ!! いいから助け……ッッ」


 意味不明なカタカナを使う迅は、いつかと同じくあっさり翼から俺を解放してくれた。 ……わけじゃなく、俺はさらに高い位置から辺りを見回すことになった。

 さっきより軽々と抱っこされた、この安定感。

 男らしい肩に乗せた手のひらが緊張するくらい、迅の香水の匂いが間近だった。

 俺の身長プラス二十七センチの世界。 いや今は迅の頭より目線が高いからもっと上だ。

 ムカつくぜ……。

 俺を見下ろしてる迅の顔はいっつもしれっとスカしてたけど、俺が逆の立場になっても同じに見えるって訳が分かんねぇ。

 イケメンはどの角度から見てもイケメンって事か? ついでに匂いまでイケメンだなんてマジで嫌味な野郎だ。 フンッ。


「翼。 俺をけしかけようとしても無駄だからな」
「なんのこと~?」
「とぼけんじゃねぇよ」
「てか迅雷コンビ、夏休みのあいだ毎日一緒に居たらしいじゃん。 それなのに "まだ"  なんだ?」
「まだも何も、これからも無えよ」
「おいぃぃ? 何の話してんの? 二人とも、俺の存在忘れてねぇ!?」


 "まだ" って何だ。

 けしかけるって言葉をリアルで聞いたの生まれて初めてなんですけど。

 二人にしか分かんねぇ会話はたまにしてるけど、今日のは俺も関係ありそうだから黙ってらんなかった。

 ……のに、ヤリチン二人組は俺を軽やかにスルーする。


「とにかくもう雷にゃんイジんのやめろ」
「あれあれ~? なんでそんな事言うのかなぁ~? イジるってか俺は可愛がってるだけなんだけどー」
「そうは見えねぇから言ってんの」
「えー、別に雷にゃんは嫌がってねぇよなぁ?」
「いや俺はめちゃめちゃ嫌がってるぞ! 「エロピアスやめろ」って何回も言ったじゃん!」
「え、そうなの? てことは、迅に舐められるのは嫌じゃないんだ?」
「は?」
「いっ、いっ!? えッ!?」


 待て待て待て待て!

 俺、返事間違えた!?

 翼から舐められるのは嫌だけど、迅から同じことされても嫌がってねぇだろって、そう言ってる?

 その前に俺は否定したよな?

 迅とエロエロした覚えなんかありませんって、ちゃんと……。

 じわ、と迅を見ると、見事にバチッと目が合った。


「お前どこまで喋ったの」
「ど、どこまでって……! 俺はしてないって言ったぞ!!」
「何を?」
「み、みみ、耳、舐める、……やつ」
「……その顔で?」
「その顔でって……! てめぇぇッ、俺の顔をディスんなっつの!! 悪かったな! イケ迅から見たら俺の顔なんて下の下かもしんねぇけど!」
「暴れるなよ」
「な? 分かりやすいんだよ、雷にゃん。 迅もさぁ、イジりたくなる俺の気持ち分かんだろ?」
「分かんねぇな」
「素直じゃないねぇ~? うわ、てかもうこんな時間じゃん。 親父にキレられる前に帰んねぇと。 じゃな、迅雷!」


 ──やっと嵐が去った。

 顔が熱っちぃ。

 否定が肯定で受け取られたあげく、なぜか即バレして迅にも揶揄われた。

 「その顔で?」って、前にも言われたけどちょっと傷付く。

 "俺こんな不細工と付き合ったこと無え。下の下かわいそー。ププッ……"って、言われてるみたい。

 いいもん、いいもん。

 俺自身は自分の顔を中の中だと思ってるけど、ここにこーんなモデル顔のイケメンが居たら自動的にランクは下がるってことくらい、理解してるもんッ。


「……お、俺らも早く行かねぇと」
「カラオケはキャンセルだ」
「はっ!? なんで……ッ」


 まさかの発言に、俺は目ん玉が飛び出そうだった。

 せっかく誘ってくれたのに、せっかく言いつけ通り迅にも報告したのに、何を言い出すんだコイツは。

 抱っこされたまま、何秒間か睨み合う。

 迅は普通に見てきただけかもしれねぇが、俺には睨んでるように見えた。

 いきなり現れる不機嫌な迅様が、これみよがしにでっけぇ溜め息を吐く。


「はぁぁ。 夜さぁ、お前が居ねえから大会が開催されてねぇだろ。 四日も抜いてなくて頭おかしくなりそうなんだよ、俺」
「なっ……んなの知るか!! 迅ならいっぱい相手してくれる子いんだろ!? 俺もう約束しちまったからキャンセルなんてしたくな……ッ」
「…………消した」
「……え?」
「女の連絡先、片っ端から全部消した」
「え、え? な、なななんで……? お前……そんな事したら伝説がストップしちまうじゃん……?」
「伝説って何」
「ヤリチン伝説」
「………………」
「………………」


 女の連絡先を片っ端から消した、だとぉ?

 なんだ、自慢か? そんな風には見えねぇけど、"俺には連絡すればいつでも何人でも相手が見つかるんだぜ" ってマウント取ってんの?

 そんな事されても、女に興味が持てない悲しい童貞男子には何にも響かねぇでございますけど?


「いいからキャンセルしろ」
「それは無理だって言ってんだろ! 俺遊びたいの!」
「俺は遊びたくない」
「じゃあ来なきゃいいじゃん! 監視も程々にしろ!」
「メシ食わせる」
「…………は?」
「デザート付き」
「…………え?」
「ついでにその後シコってやる」
「それはお前が溜まってるから……ッッ」
「キャンセルするのか、しねぇのか」
「うぅぅぅ~~~~!!」


 どうしよう……!! 交換条件が魅力的過ぎる……!!

 そういえば夏休み前のいつからか、放課後の腹の虫を収めてくれてたのは迅だった。

 六時間目からグウグウ鳴ってた腹の虫が、「メシ」「デザート」に目ざとく反応しちまった。


「…………デザートって何?」
「アイスが三つのったチョコパフェ」
「行く!!♡」


 なんだよぉ、そんなすげぇ切り札持ってんならはじめから言っとけよぉ。

 とびっきり豪華そうなパフェに、聞いただけでよだれが出そうになっちまったじゃんかぁ。

 えへえへ。


「……チョロいな」
「なんか言った?」
「いや、なんでも」


 こんな切り札で気が変わったなんて、俺だって信じたくねぇよ。

 ダチとの約束は絶対。

 キャンセルなんてあり得ねぇ。

 でもな、迅のイケボで発せられた「チョコパフェ」って単語が、ものすごいパワーワードに聞こえちまったんだよなぁ。

 だって、アイスが三つものってんだぜ?

 三つも!!




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