迅雷上等♡─無欠版─

須藤慎弥

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②迅が不機嫌なんですけど

─雷─

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… … …



「んあっ♡」
「ここ? 雷にゃんここが弱えの?」
「翼! もうやめろってば!」
「あと少しだけ」
「あっ……やだ……っ」
「雷にゃんかーわいぃ~~。 やだ? やだって?」


 こんのぉっっ、エロエロピアス野郎めぇぇ!!

 放課後になったら現れるエロマシーン翼が、今日もお目見えした。

 迅と翼が無断で秘密基地にしてるこの空き教室を、俺は魔の手から走り回って逃げている。

 でも結局、俺と翼じゃ歩幅が違うからすぐに捕まって、後ろから羽交い締めにされてシャツの上からコシコシっと乳首を擦られた。


「はぁ、はぁっ、……このぉっ、マジで明日から教室でもエロピアスって呼ぶからな!! なんで翼は俺ばっか狙うんだよ! 迅の事も狙えよ!」
「迅でけぇじゃん。 押さえつけようとしたら秒で返り討ち食らうし」
「お、押さえつけようとした事があんのか!?」
「無ぇよ。 キモい」
「俺にセクハラすんのもキモいだろ!? なぁ、言えよ! キモいって!」
「キモくねぇから毎日触ってんだろーがっ」
「あ、……やだっ、やだってばぁ!」


 暴れても何しても全然ビクともしない。

 しまいには耳たぶをチロッと舐められて、無駄だと分かってるけど翼の腕を解こうと躍起になった。

 なんで今日は迅が居ねぇのっ?

 いつも "俺様は王様だ" みたいなツラして「よぉチビ。お前は毎日チビだな」って嫌味かましながら俺と翼のクラスまで来るのに、今日は来なかった。

 放課後は翼がエロピアスマシーンになるって分かってんだから、最近は迅がストッパーになってくれたのに……居てくれないと困んじゃん!

 ───ガラガラガラッ。


「……何してんの」
「よっ、迅~」
「迅!! 助けろ! 今すぐ助けろ!」
「………………」


 良かった。 俺様な迅様がやっと来た。

 遅えよ!と言おうとした俺は、もっと耳をしゃぶられる前に翼より背がデカい迅に助けを求めた。

 するとブスッとした仏頂面で、俺じゃビクともしなかった翼の腕を簡単に解いてくれる。

 力じゃ到底敵わないと、翼が肩をすくめた。


「番犬現る、かぁ」
「誰が番犬だ」


 た、助かった……!

 俺は急いで、迅のカッターシャツの裾を犠牲にして自分の耳を拭く。

 何してんだよ、って聞かれても無視だ。

 だって迅のダチが、俺の耳を食べようとした。 そこに迅は居なかった。

 ほらな、ぜんぶ迅のせいじゃん。


「迅、遅かったじゃん。 呼び出し食らってた?」
「そ。 担任にな。 進路希望出してねぇの俺だけだって」


 翼が定位置のヒョウ柄ラグの上に胡座をかいた。

 迅は見慣れた椅子に座ったから、俺はその上に座る。 迅の太ももはなかなか座り心地がいい。

 そしてもう、翼のそばには寄れない。 寄りたくない。 乳首イジくられて声が出るの、マジで勘弁なんだよ。


「このガッコで進学する奴なんか居ねぇから分かんだろうにな。 ま、俺は底辺私立大に進学予定だけど~」
「金持ちは大変だな」
「とりあえず大学は出とけって親父がうるせぇのよー。 勉強なんてウンザリだってのに」
「分かる」


 頷いた迅が、鞄をゴソゴソし始めた。

 おっ。 待ってました。

 今日のおやつは何かな。 ……おぉ! メロンパンだ!

 迅はそのメロンパンの袋を開けて、半分だけ出したそれを後ろから俺に差し出してかじらせた。

 自分で持とうとしても、持たせてくれない。

 ま、いいや。 俺様な迅様からいたれりつくせりなのも悪くないしなっ。


「へぇ~翼は進学するのかぁ。 迅は? 就職?」
「あぁ。 今のバイト先にそのまま正社員で雇ってもらう」
「え、えぇ!? 迅ってバイトしてたのか!?」


 そんな事、俺がここに越して来てもう三ヶ月は経つのに知らなかったんだけど!!

 振り返った拍子に、口からポロポロっとメロンパンの粉々が迅に飛んだ。

 「おい」って低い声で怒られたけど、俺に内緒にしてた事実の方が罪は重い。

 エロピアス翼は俺の反応見て笑ってるし。


「雷にゃん知らなかったんだ? 迅は高校入ってすぐからモールのメンズ服売り場でバイトしてんだよなー」
「バラすなよ」
「はぁっ? 俺にバレちゃいけなかったっての!? 今の今までナイショにしてた理由はなんだ! 白状しろっ」
「白状って大袈裟な。 今言った事が全部だよ。 高一からバイトしてて、そこに就職決まってるってだけ」


 えー。 えー。

 バイトしてた事も知らなかったのに、就職が決まってる事も知らなかった。

 俺と迅の仲なのに……って、そんなに深い話はしたことなかったか。

 迅はとりあえず、女とエッチしまくってるリア充。 あと喧嘩がめちゃめちゃ強い。

 俺が知ってるのはそれだけ。


「なんだよ……全然知らなかった……。 って事は毎日リア充エッチに行ってるんじゃなかったんだ? ちゃんと働いてたわけかぁ」
「バイトは金土日。 週に三日だけなんだよ。 平日はリア充エッチ」
「ぐっ、ぐぬぅぅーーー!!」
「何だよその変な叫び声」


 やっぱりリア充に変わりなかったかぁぁ。

 最近あんまりスマホイジってないから、ついに迅のモテ期も終わったかって笑ってやろうと思ったのに。

 ちくしょぉ。 リア充はリア充のままか。

 



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