必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
上 下
532 / 541
~三月某日~(全九話)

──その後のおまけSS──

しおりを挟む



 荻蔵から奪った小瓶片手に、葉璃の待つ部屋に戻った聖南は、ベッド中央に盛られた布団に勢い良く飛び付いた。


「はるー!  ……んっ!?」


 予想に反し、ばふっと聖南自身の身体だけがベッドに沈んで盛大に首を傾げる。

 ……葉璃が居ない。


「葉璃っ?  葉璃っ!」


 ホテルの一室に聖南の大声が轟く。

 飛び付きが空振りに終わってしまい、ここに居るはずの葉璃の姿がない事に激しく狼狽えた。

 たった十分ほどの間に一体どこへ行ってしまったのか。


「もしかして……」


 ……抱き過ぎたのか。

 ベッド脇に、自身が飲んだと思われるグラスに注がれた白ワインを発見して立ち止まる。

 媚薬入りのココアを一気飲みして我を忘れた聖南は、約九時間に渡って葉璃を貫き続けた。

 とうとう嫌になったのかもしれない。

 日頃から「しつこい」「長い」「疲れた」と葉璃は涙ながらに聖南に訴えてくるが、嫌よ嫌よも何とやらかと都合よく解釈していた。

 昨夜の聖南は半分意識がないような状態で、どんな風に葉璃を抱いたのか記憶が朧気だ。

 通常は一滴使用のものを五滴も盛られたのだから、当然と言えば当然である。

 酒のほとんど入っていない、かつ体の大きな聖南だからこの程度で済んだものの、記憶が所々飛ぶほど効果抜群だったアレのせいで──葉璃がどこかへ消えた。


「あの野郎……殺すか」


 聖南は握り拳を作って震え、サイドテーブルの上のグラスを見詰めた。


「いや、殺す前に葉璃探さねぇと!」


 今は怒りに任せてスキャンダル俳優に気を取られている場合ではない。

 徹夜で聖南からの激しい愛を受け止め続けた葉璃を探すべく、部屋を出て行こうとした聖南はふと足を止める。


「……なんだ……シャワー浴びてんのか」


 扉を入ってすぐのバスルームから流水音が聞こえて、心底ホッとした。

 そうだ、葉璃は何かとシャワーを浴びたがる綺麗好きさんだった。

 聖南が一晩中離さなかったせいで、体中がベタベタな葉璃があのままベッドでおとなしくしているわけがない。

 軍服衣装の下の聖南の素肌も汗で気持ちが悪いので、一緒に入っていいかと尋ねようと磨りガラスの前に立つ。


「はーるちゃ……ん……っ!?」


 早くも衣装に手を掛けていた聖南が、中から聞こえた魅惑の声に動きを止めて磨りガラスに張り付いた。


「……んんっ……ん、んんっ……」


 ……たちまち、胸が早鐘を打つ。

 これは明らかに葉璃の喘ぎ声だ。


『えっ、えっ、えっ、えっ?  は、葉璃が啼いてる!?  オナってんのか!?  いやもう何も出ねぇだろ、さすがに!』


「んっ……っ、……もう……っこんなのできないよぉ……」


『おぉぉっっ?  なんだ、何が出来ないって!?  すげぇ見てぇ!  ……ちょっと覗いちゃお……』


 昨夜の大暴れが嘘のように、葉璃の啼き声だけでスラックスの前がキツくなる。

 隙間から中を覗いてみると、こもった湯気で葉璃の姿は半分しか見えなかった。


『天使……!  天使がいるぞ……!!』


 聖南の目がカッと見開かれ、ひとりで何をしているのか可愛く啼いている天使を凝視する。


「……ふっ……っ……ぅぅ……できないぃいー……っ」


『か、か、かわいー!  何が出来ないんだ!  聖南さんに見せてみなさい!』


「届かないよぉ……っ、聖南さん……っ」


『呼ばれた!  俺の事呼んだ!  て事は入っていいよな!?』


 可愛く名前を呼ばれてしまっては、もう我慢出来ない。

 湯気で肝心な所が見えなかった聖南は、三秒で衣装を脱いで中へと入った。


「──っっ? 聖南さん……!」


 驚いて目を丸くする葉璃は、バスルームの床に四つん這いになり、自身の穴に中指を挿れようと奮闘中であった。


「葉璃ちゃん……そんなやらしい格好して……何してんの……?」
「あっ、いや、これ、これは……!」
「オナってた?」
「違いますよ!  ……そ、その……お腹痛くなっちゃうって、聖南さん言ってたから……」
「あー……俺のを出そうとしてたのか」


 出しっぱなしのシャワーにあたりながら、葉璃がペタンと床に座る。

 この真っ赤に染まった顔色は、バスルームにこもる熱気のせいか。

 それとも後処理する現場を聖南に見つかった羞恥のせいか。

 ──どちらにしても、可愛い。


「指入れてみた?」
「それが……俺の指じゃ、奥まで届かなくて……」
「そうかそうか、そうだろうな!  葉璃ちゃんの小さいおててじゃ無理だ、うん」
「……あの……聖南さん……してくれませんか……?」
「か、ッッ」

『かわいーーーーっっっ!』


 必殺上目遣いで困ったように言う葉璃に、聖南は悶絶した。

 ただしその興奮は表には出さない。

 葉璃を四つん這いにさせた聖南は、ボディーソープを指先に纏わせ、ヒクつくそこへぐちゅっと躊躇いなく挿入して掻き回した。


「んぁっ……っ……んっ……」
「ごめんな、葉璃。  気持ち悪かったろ」
「んん……っ……ん、ん……っ」
「疲れただろうし、早く寝たいよな」
「……っ?  せ、せなさ、ん……?」


 夜通し貫いたはずなのに、そこはすでにキツく窄まりかけていた。

 手早く中を慣らして、立ち上がった自身にもボディーソープを塗りたくる。


「これが終わったら朝メシ食って、二人で夜まで寝ちまおうな」
「え、ちょ、待って、……っ、せなさんっ……中の出してくれるって……っんぁぁ──っ」


 葉璃の体に覆い被さった聖南は、細過ぎる腰を持ってずぶずぶと中を分け入る。

 仰け反った小さな顎を支え、葉璃の耳に口付けて囁いた。


「なぁ葉璃ちゃん。  葉璃ちゃんにメロメロな俺に、あんな刺激の強いおねだりしちゃダメだぞ♡」
「おねだりなん、て……っしてない!  も、もうっ……せなさん……っっ」


 床についた膝が擦りむいてしまわぬよう、聖南は葉璃を抱え上げて背後から抱き締めた。

 何度放ったか分からないが、九時間抱いた後にも関わらず媚薬が抜けてもこんなに欲は尽きない。

 証拠として奴にこの現場を見せてやりたいくらいだ。


 ───どんな事があっても、葉璃の乱れた姿は誰にも見せはしないけれど。












~三月某日~終
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる

KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。 ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。 ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。 性欲悪魔(8人攻め)×人間 エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

えっちな美形男子〇校生が出会い系ではじめてあった男の人に疑似孕ませっくすされて雌墜ちしてしまう回

朝井染両
BL
タイトルのままです。 男子高校生(16)が欲望のまま大学生と偽り、出会い系に登録してそのまま疑似孕ませっくるする話です。 続き御座います。 『ぞくぞく!えっち祭り』という短編集の二番目に載せてありますので、よろしければそちらもどうぞ。 本作はガバガバスター制度をとっております。別作品と同じ名前の登場人物がおりますが、別人としてお楽しみ下さい。 前回は様々な人に読んで頂けて驚きました。稚拙な文ではありますが、感想、次のシチュのリクエストなど頂けると嬉しいです。

処理中です...