必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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〜七月二十九日〜(全六話)

〜その晩〜③ ♡※

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   葉璃の意識は飛ぶ寸前だった。

   強烈な射精感の余韻に浸っていると、「指ちぎれそう」と言いながらニヤニヤした聖南に激しく口付けられた。

   葉璃の精液を飲んだあと、いつもこうして自身の風味を感じさせようとしてくる聖南を、この時ばかりは「意地悪!」と心の中で叫ぶ。


「指だけじゃ物足んねぇだろ? 何がほしい?」
「んっ……ん、ん、ふっ……んんっ……!」
「言ってよ、誰のナニがほしいのか」
「……っ! んっ、んんんーっ……!! しゃべ、れな……っ」


   キスをやめてくれないと、言えない。

   恥ずかしくて言いたくないけれど、言えと言うわりには唇から離れないのでどうにも出来なかった。

   聖南の膝が葉璃の腿を上げさせ、中からズルッと指を引き抜くと熱いものがあてがわれた。

 しかしあてがうだけで挿入しない聖南が、先端で葉璃の秘部をくぷくぷと弄ぶ。

   照れてどうしようもない事を言わなければ挿れてもらえないのかと、葉璃は全身を赤く染めた。


「はーる、待ってんだけど」


   自身を握って穴をツンツンしてくる聖南が、チロ、と葉璃の顎先を舐めた。

 欲する言葉を誘い出そうとしているのが見え見えである。

 眼鏡の奥の瞳が葉璃を捕えた瞬間、その洗練された美形にハッとなり恥ずかしさよりも興奮が勝った。


「……っ。 ……せ、聖南さんの、……いれて……」
「……かーわいぃっ♡ 喜んで♡」
「んぁぁっ……ちょっ、ゆっ、ゆっくり……あっ……!」


   聖南の瞳に吸い込まれそうになり、まるでうわ言のように呟くとすぐさま熱い昂ぶりを押し込んでくる。

   太く長い大きなそれは、葉璃の恥部を限界まで拡げさせていた。

   いくらローションで滑らかになっていても、受け入れるのは容易ではない。

   聖南のものは、立派過ぎるのだ。


「ちょっと緩めて。 動けねぇ」
「で、できな……っ、そんなの……! あっ、せなさんっ、……まだ、動かないで……っ」
「えぇ……この状況で動くなって……んな殺生な。 ……聖南さん泣いちゃう」
「ふっ……ふふっ……それ言わないでよ……!」
「わっ、ちょっと葉璃ちゃん、緩めてって言っただろ。 なんでまた締めんの」


   またもや聖南が自分を「聖南さん」と言うので可笑しくて笑ってしまったが、ついついアソコに力が入った。

   眼鏡聖南は今すでにセクシーなのに、瞳を細めてツラそうな表情を見せられると、葉璃の背筋がゾクゾクして震える。

   我が恋人ながらあまりにもカッコ良くて、素敵で、こんな状況でも惚れ惚れしてしまう。

 あげく、「なんでそんなにカッコいいの」とキレてしまいそうだった。


「おーい、葉璃ちゃん、なんで下唇出てんの」
「んあっ、……奥……っ、奥まで……っ」


   聖南の背中を抱き寄せてムッとすると、唇を舐められた。

   力が抜けた一瞬の隙をついて、聖南は葉璃の最奥目掛けて腰を動かす。

   襞が聖南の動きに合わせて脈打ち、貫かれた葉璃の体は大きくしなった。


「あー……気持ちいー……ヤバイな、一回目そんな保たねぇかも」
「あっ、待って、……やっ、ほんとに……待って……っ、そんな動いたら……! ダメ、……ダメっ」


   ローションの摩擦音と、襞を擦る聖南の熱は余裕も正気も失わせていく。

   右肩を下にして横を向かされ、葉璃は両腕で枕にしがみついた。

   聖南は、葉璃と体格差があるからか松葉くずしの体位も好きなようで、しばしばこれをやりたがる。

   だが葉璃も、正常位ともバックとも座位とも違う、前立腺が絶妙に擦られるこの体位が実はかなり好きだった。


「うぅっ……っ、これ、すき……っ、変になるよ……! せなさ、ん……っ!」
「ん、気持ちいいな? 葉璃のトロ顔さいこー♡ いいとこあたってる?」
「ぅ、んっ、……あたって、る……あっ……やっ……おかしくなる……っ」

「葉璃、あんま言うなってー。  我慢できなくなるじゃん」
「あぁぁっ、そん、な、っ……つよくしないで……っ……こわれる……!」
「壊れたら俺が責任持って治してやっから安心しろ。 てか葉璃ちゃん……ごめんな、余裕無ぇ」


   葉璃の左足を肩に掛けた聖南が詫びたと同時に、猛烈な勢いでピストンを開始した。

   絶え間ない熱情に侵されて、葉璃は声すら発する事が出来ない。

   枕を握り締めている手が痺れてきても、背中が震えるほどの快感は己の二度目の射精がいつだったのかすら分からなかった。

   強く優しく、快楽の渦に巻き込む聖南の迸りを体の中に感じたその時など、息も絶え絶えに目の前がキラキラした。

   時間にして数十分。

   下腹部が僅かに痙攣するほどの強烈なセックスだった。


「葉璃、唾液ちょうだい」
「ん……っ」


   ゆるやかに腰を動かして自身を抜き差ししている聖南から、舌ごと唾液を奪われる。

   苦しいけれど、愛おしくてたまらない。

   欲しがる聖南の肩に手をやり、葉璃も夢中で舌を絡ませた。


「かわいーんだけど。 かわい過ぎるんだけど。 葉璃、やめろよ。 もう充分煽られてっから、これ以上煽るな」
「……何……?」
「傷痛くない? お尻持ち上げてたからシーツとは擦れてないだろ?」
「ん……だいじょぶ……」


   右肩を下にしてくれたのは、右足を高く上げた方が痛みが走るかもと気遣ってくれていたらしい。

   フッと穏やかに笑んだ聖南が、眼鏡を外した。

   外さないで、と言おうと葉璃が口を開けば、すぐさま聖南の舌が滑り込んでくる。

   眼鏡を外したという事は、いよいよ本気で朝までコースが開始されるのかもしれない。


「良かった。 もう動いていい?」
「へっ? もうっ? ……あっ、まだ、早いって……!」
「無理。 葉璃が無意識に煽るから、無理」
「そんな……っ! あぁっ、やっ、せなさん……っ」


   葉璃の中を堪能するようにゆっくり動いていた聖南の腰が、またも最奥を貫く。

   仰け反った葉璃の首筋にキスを落としながら、聖南は囁いた。


「葉璃、好き。 好き」
「ん、んん……っ! 好き、聖南さん、好きっ」
「あー……かわい。 朝までがんばろうな♡」
「休憩、ほしい、っ、」
「はいはい。 任せとけ」


   まるで心のこもっていない返答に、葉璃は絶句して聖南を睨んだ。

   聖南が動かないでいる間だけ、休憩。

   それはもはや二人の中では完全に意見が不一致となっている所ではあるが、葉璃は聖南に貫かれているのでどうする事も出来ない。

   何でも器用にこなす恋人は夜の性生活まで器用でそつなく、そしてまた絶倫なので抵抗するだけ無駄なのである。










~七月二十九日~
・聖南の手作り朝食
・その晩

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