必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
上 下
227 / 541
39☆

39☆ 7・大塚事務所主催、仮装パーティー♡

しおりを挟む



 アキラも目を凝らして遠くを見ていると、人波からチラと覗いた白いうさぎの耳があちこちに移動していた。


「あれ誰だろ、うさ耳がぴょこぴょこしてる」
「あ?  どれ?」
「ほら、あそこ」


 そのうさ耳をセナに指差して教えてやると、隣で息を呑んだのが分かった。


「…………っっ」
「何、ハルだったのか?」
「……あぁ。  何だあれ……めちゃくちゃかわいーかっこしてんぞ」


 頷いたセナがゆっくりそのハルの元へ歩き出したので、アキラもそれに付いて行った。

 恭也とはぐれたのか、不安そうにキョロキョロしながら移動しているハルは、白くて長いふわふわなうさぎの耳を付けていた。

 恐らく不思議の国のアリスの、例のうさぎではないだろうか。 幼い頃に観た記憶のあるコスチュームでウロウロする様は、確かにとても可愛らしかった。


「……葉璃」
「あっ……聖南、聖南さんっ?」


 腕を取られて驚いたハルが、瞳をまんまるにしてセナを見上げて、こちらも息を呑んでいる。

 アキラを見付けてペコっと頭を下げてきたが、うさ耳がセナの衣装に擦れてアワアワする姿に、セナもアキラもほっこりした。


「聖南さんそれ、何ですか?  海賊?  船長?」
「船長かどうかは分かんねぇけど、海賊」


 ハルは見所が一味違う。

 セナの仮装はひと目で海賊だと分かるのだが、「船長?」と付け加えられてセナも笑いをこらえている。

 そんなハルはアキラに向き直って、また違う視点からの切り口で微笑まれた。


「アキラさんはお金持ちっぽいですね、似合ってます」
「何それ、俺お金持ちキャラに見えてたの?」
「はい、なんとなく……」


 金持ちキャラとかウケる、と隣でゲラゲラ笑い始めたセナの小脇を突きながら、ハルの衣装の着こなしにひどく感動した。

 当然ながらあのうさぎのように丸い鼻メガネはしていないし、コスチュームも今風なデザインで可愛くまとまってはいるが、色合いがまさにそれで。

 アキラはこっそり、そのアニメ映画が大好きだったのだ。


「ハルは不思議の国のアリスのうさぎだろ?  時計は無かった?」
「あ、これですか?」
「そう!  それそれ!  これちゃんと腕にな、こうして……巻いとくんだよ」


 あのうさぎは時間に追われていて、いつも時計を手にしていた。

 胸ポケットではなくカッターシャツの腕部分にその時計を引っ掛ける場所を見付けて、アキラが装着してやった。


「ここに付けるんですね!  一緒に置いてあったからとりあえず持ってきましたけど、これ何の意味があるんだろーって思ってたんですよ」
「ハル、不思議の国のアリス観た事ない?」
「……ないです。  これが出てくるんですか?」


 ハルが自身を指差して首を傾げるので、アキラは大袈裟に大きく頷いた。


「ハルのが可愛いけど、出てくるよ。  でもマジで、ハルのが可愛い」
「えぇ~そんな事ないですよ。  鏡見たくなかったから見て来てないですけど、出来ればこれ脱ぐまで絶対に自分の姿見たくないです」
「なんで?  めちゃめちゃ似合ってるよ?  可愛い」
「おい、俺の前で二人でイチャつくな。  アキラ、俺の葉璃に可愛い連呼すんな。  葉璃、その甘えた顔やめろって前も言っただろ」


 大好きなアニメ映画から飛び出してきた可愛いうさぎに感動していたところに、セナがずいっと前に出てその姿を遮断してきた。

 まったく。 これだから嫉妬深い男は嫌なんだ。

 やれやれと肩を竦めながらも、アキラは阻まれても尚、セナの背後を覗き込んでハルうさぎに心を奪われていた。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

くまさんのマッサージ♡

はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。 2024.03.06 閲覧、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。 2024.03.10 完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m 今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。 2024.03.19 https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy イベントページになります。 25日0時より開始です! ※補足 サークルスペースが確定いたしました。 一次創作2: え5 にて出展させていただいてます! 2024.10.28 11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。 2024.11.01 https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2 本日22時より、イベントが開催されます。 よろしければ遊びに来てください。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる

KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。 ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。 ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。 性欲悪魔(8人攻め)×人間 エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

えっちな美形男子〇校生が出会い系ではじめてあった男の人に疑似孕ませっくすされて雌墜ちしてしまう回

朝井染両
BL
タイトルのままです。 男子高校生(16)が欲望のまま大学生と偽り、出会い系に登録してそのまま疑似孕ませっくるする話です。 続き御座います。 『ぞくぞく!えっち祭り』という短編集の二番目に載せてありますので、よろしければそちらもどうぞ。 本作はガバガバスター制度をとっております。別作品と同じ名前の登場人物がおりますが、別人としてお楽しみ下さい。 前回は様々な人に読んで頂けて驚きました。稚拙な文ではありますが、感想、次のシチュのリクエストなど頂けると嬉しいです。

僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした

なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。 「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」 高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。 そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに… その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。 ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。 かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで… ハッピーエンドです。 R18の場面には※をつけます。

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

処理中です...