必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 不埒な王子様スタイルの聖南は、ほとんど辺りを汚す事なく行為を終わらせた。

 俺がはしたなく放ったものは掌で受け止めてくれてすぐにティッシュで拭っていたし、聖南は「中でイきてー」って漏らしてたけどちゃんと外で出してくれたから、俺の体もそれほど汚れず済んでる。

 たぶん俺が聖南にねだってから一時間も経ってないんだけど、俺がツラくないようにって色んな体位で試して(最終的にバックが一番楽だった)、体力の無い俺は力無くソファにくたりと横になっていた。


「中は帰ってから洗ってやるけど……気持ち悪りぃならここのシャワールーム行くか?」


 後始末を全部してくれた聖南が、片膝をついて横になってる俺の髪を撫でた。

 はだけたシャツから覗く鎖骨がいやらしい。

 まったく情事を匂わせない表情が、今の今まで激しく求めてくれてた欲にまみれたそれとのギャップに身悶えそうだ。

 ……ほんとに、王子様みたい。

 優しいその手付きと目前の聖南にうっとりした。


「いえ……今動けないから後でいいです……」


 まだ聖南の先走りが中にあるのは分かってたけど、もうすべて帰ってからでいいやってくらい、下半身が動かせそうになかった。

 脱力してそう言うと、無表情だった聖南がふわりと笑う。

 男に対して言うのはおかしいのかもしれない。 でも聖南の笑顔は「綺麗」という言葉がぴったりだった。


「そか、じゃあとりあえず俺の楽屋行こ。  葉璃は嫌かもしんねぇけどこれ着替えないと」
「……私服がそれだったらいいのに」
「あはは……! 無茶言うなよ」


 聖南の言う通り、俺はちょっとコスプレ趣味があるのかもしれない。

 どんな格好でもかっこよく見えるんだけど、普段とちょっと違う装いなだけでクラクラしてしまう。

 それというのも、ずっと燻っていた佐々木さんとの事が解決した解放感と、何も聞かずにぜんぶ俺に任せてくれた聖南の愛を感じた……っていうのが根底にあって、それが俺にそこはかとない余裕を持たせてくれた。

 俺を信じてくれて、理解してくれて、背中を押してくれて、しかも困った時はいつも助けてくれる、そんな聖南を改めて大好きだって自覚するのも当然だった。

 俺を軽々とお姫様抱っこしてCROWNの楽屋へ行く道中、行き交うスタッフさんから俺の事で声を掛けられても、「事務所の後輩。 貧血っぽいから休ませるわ」ってうまく誤魔化してくれていた。


「あれっ?  ハル君?  どうしたんだよ」


 楽屋へと入るなり、帰る寸前だったらしいケイタさんがグッタリな俺の姿を見て駆け寄ってきた。

 CROWNの楽屋はさっきのこじんまりとした殺風景な楽屋とは雲泥の差で、広々とした座敷があったから、聖南はそこにゆっくり俺を寝かせてくれた。


「………………セナ、まさかお前……」


 ペットボトルのお茶を飲む手が止まったまま、アキラさんが聖南を睨む。

 聖南の衣装が崩れているのを見て、さらに目を細めた。


「えっ、まさかって何?」
「はぁぁ……。  ケイタ見ろ、獣がいるぞ、獣が」
「獣?  獣って……なっ、えっ!?  セナ、マジでぇぇ!?」
「なんだよ獣って。  人聞き悪りぃな」


 アキラさんは溜め息を吐き、ケイタさんは驚いて鞄を落とし、それでも聖南は飄々と着替えを始めて、横たわっていた俺はその三人三様な姿を見て可笑しくなった。

 聖南は何を言われてもこたえない。 二人が呆れたと言わんばかりにたっぷりと聖南を窘めても、どこ吹く風だった。

 胸のドキドキも下半身の感覚もいくらかマシになってきた俺は、ほんとに仲良しな事が窺えるCROWNのやり取りに耳を澄ます。

 三人はまるで兄弟みたいに言い合っていて可笑しくて、俺は贅沢にも特等席でトップアイドル達の会話を聞いて笑っていた。




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