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しおりを挟む怖い、怖すぎる……。
聖南の目がイッちゃってる。
「んっっ……んん、……んっ……」
肩口を壁に押さえ付けられた俺は、怒りのまま強引に口付けられた。
何度も角度を変える、ベッドの上でするような腰砕けなキスを受けると足が震えて立っていられない。
ぎゅっと目の前の聖南の衣装にしがみつくと、顎を持たれてさらに上向かされた。
「目の前で見せやがったな、他の男とのキス」
「それは仕方な……っんっ……やめっ……」
「仕方なくねぇ! 咄嗟に顔背けんだよ、普通は!」
「んん……わかんな、……もん……っ」
乱暴に舌をぶつけ合わされて、唾液を飲まされて、唇を開き過ぎてさっき噛んだ端がヒリヒリした。
やっぱり俺が怒られるんだ……。 納得いかない……。
「分かんないで許されるか! ……ったく。 帰るぞ、荷物は?」
唇を離してぎゅっと押しつぶされそうなくらい抱き締めてきたけど、まだまだ怒っているのは心臓の音で分かった。
聖南がドキドキしてるのに気付いてしまうと、俺も途端に緊張してくる。
「ふぅっ……はぁ、……スマホと財布、ポケットにあります」
「駐車場行って先に乗ってろ。 これ持ってドア開けたらいい」
「分かりました……」
車の鍵を渡され、「車はエレベーターからすぐ見える位置にある、ナンバーは1」と言って聖南が離れていこうとしたんだけど……。
俺は無意識に、ひらりと揺れたマントを掴んで引き止めてしまった。
「聖南さん、それ……もう着替えちゃうんですよね?」
「あぁ、秒で着替えてくっから車で待ってろ」
どうしよう…………待てない。
聖南の久々の衣装姿にムラムラする。 本番前にキスされた時からヤバかったんだ。
どこかの王子様みたいな出で立ちの聖南に熱いキスなんかされたら、もう動けない。
さっきだって、反応した自身を必死で宥めるためにしゃがんでたんだ。
今だってそう。 足に全然力が入らないし、何より、……聖南からのぎゅっが足りない……っ。
「聖南さん、舌」
「…………は……?」
「聖南さん……っ」
怒った顔はすごく怖かった。 でも睨み合う横顔にはいつも以上に見惚れた。
どうしてあんなに怒ってたのか分かっちゃうと、抱きついて甘えたくなるのもしょうがないよね……?
急な俺からの誘いに、聖南は呆然と見下ろしてる。
目一杯つま先立ちして聖南の首元に腕を回し、薄っすら開いた唇を舐めてみるとようやく抱き締めてくれた。
「……我慢できねぇの?」
「…………うん……」
顔を覗き込まれると、積極的にキスをせがんだ事が今さら恥ずかしくなってくる。
頷くのも取り消すのも照れた俺は、時間稼ぎにとりあえず俯いてモジモジした。
すると、小さく「このやろ……」と呟いた聖南が俺から離れて扉の鍵を締め、電気を消して戻って来た。
「……可愛過ぎ。 葉璃は存在が罪」
「なっ……」
つ、罪って……なんも悪い事してないよ、俺。
こんなところで自分から誘ってしまった事にこれ以上ないほど照れてしまうけど、聖南も余裕がない事くらい、顔を見てれば分かる。
手を引かれて奥の小さなソファへ連れて行かれると、あっという間に押し倒されてつぶされちゃいそうなほどの勢いで抱き締められた。
「…………声、少し抑えろよ。 俺の体噛んでいいから」
「え、やだ、聖南さんのこと噛みたくないです」
「ワガママ言うな。 お前が傷付く方がヤダ」
「俺もイヤです」
聖南が痛い思いをするくらいなら、自分の唇でも腕でも噛んでやる。 その痛みなんて、聖南がくれる快楽に比べたらなんて事ない。
怒りの感情を少し和らげてくれた聖南が、熱と欲に濡れた瞳でジッと見詰めてきながら、時折重なるだけのキスをしてくる。
ソファはやりにくいけど仕方ない、って呟く聖南が衣装を脱ごうとボタンに手を掛けていて、ぼんやりその姿を見ていた俺は慌ててそれを止めた。
「あっ! 待って、脱がないでください!」
「……なんで? って、あぁ……これ? 葉璃ってコスプレ趣味でもあんじゃないの」
「……否定できないです…」
聖南は自身の王子様衣装を指差して俺を笑うけど、ほんとにかっこいいんだからしょうがないと思う!
この衣装といい、昨日のフォーマルスタイルといい、眼鏡掛けた姿といい、大前提で聖南がイケメン過ぎるのがいけないんだ。
俺のコスプレ趣味疑惑が発覚しても聖南は付き合ってくれるみたいで、スーツとカッターシャツのボタンを外して前だけ肌けるというセクシー過ぎる格好になった。
「これは取るぞ、動きにくい」
そう言うと、肩口に掛かる大きなもふもふを取り外した。 真っ白でふわふわなそれを触ってみたかった俺は、感触を確かめるようにもふっと掴んでみた。
「わぁ……! ふわふわ……」
「……葉璃さぁ、……何してもかわいーな」
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