必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 もう何時間ベッドの上で愛し合ってるんだろう。

 そろそろ俺もヘトヘトで、脚を開きすぎて感覚が無くなってきたし、この調子だとバスルームまで歩けるか分からないくらい骨盤と腰が痛くなり始めていた。

 どれくらい時間が経ったんだろ……。

 興奮したままの聖南の体力にはとてもついていけなくて、何回も頭の中が真っ白になって記憶も朧気だ。

 今まで加減してくれてたのかなって、思い知った。

 何故なら、信じられないくらい元気いっぱいな聖南が、抜かずの四回目に突入しようと態勢を整え始めてギョッとした俺はフラフラの両腕をバタつかせ慌てて止めた。


「ちょちょちょっ、待って、待って下さいっ。  もう勘弁してください……」
「あぁ?  なんで?」
「なんでって……ほら、明日立食パーティーでしょ?  腰とか足とかフラフラのまま行けないし」
「ん~~……。  葉璃、年末年始はここにいるか?」
「ええっ?  分かんないですよっ」
「じゃああと二回してい?  そしたら俺もちょっとは落ち着く……」
「分かりました!  年末年始は一緒に居ます!」


 だから今日はほんとに勘弁して…と目で訴えると、聖南は仕方なしといった風にズルズルっと自身を引き抜いた。

 まだ十分強度を保ったままで、内壁を擦られるゾワゾワっとした感覚に思わず目を瞑る。


「んんん……っ」
「やめてほしいんならかわいー声出すなよ」


 横目で楽しげに言われ、つい喘いでしまった俺は自身を恨んだ。

 ちょっとだけこの行為に慣れてきてしまって、気持ち良かったらすぐに声が出てしまうなんて……こらえきれないのが恥ずかしい。

 むくれて時計を確認すると、もう明け方四時になっていて、軽く四時間以上は愛し合ってた事になる。


「聖南さん大変!  もう四時ですよ!  仕事何時からですかっ?」
「あーっと、今日一本目はバラエティの早朝ロケだったからー……六時集合だ」
「え!?  少しでも寝ないと!  もしかして家出るまでする気だったんですか!?」


 早朝ロケとは知らなくて、お尻の違和感を引き摺ってだる重な上体を起こすと聖南がニヤリと笑った。

 早くシャワーを浴びて!と呑気な聖南を急かす。

 立ち上がった聖南はチラッと視線をくれると、驚いて固まった俺をギュッと抱き締めてきた。

 ベッドに舞い戻ってしまった聖南から俺は、「当たり前じゃん」と怖い事を囁かれてドキッとする。

 声までカッコいいなんて卑怯だ。

 たった今まで愛されてた俺の体が、またもや芯から疼いてくる。

 俺の照れなんかお構いなしの聖南は、ちゅっ、ちゅっと顔中にキスの雨を降らせてきて、最後に唇をかぷっと食んでニコニコと嬉しそうに微笑んだ。

 聖南……なんでこんなにハツラツとしてるの……? 全然疲れてない……?


「葉璃、今日もめちゃくちゃ可愛かった。  お仕置きなんて柄にもねぇ事するもんじゃねぇな」
「だ、だから、俺には十分お仕置きになりましたってば!  ほらほら、聖南さん先に浴びて下さいっ」


 やっとの事でご機嫌な聖南をバスルームに連れて来るも、なかなか俺から離れない。

 仕事があるなら急がなきゃ!と鬼気迫る感じで言ってみたのに、どこ吹く風の聖南には困ったもんだ。

 ヤキモチ焼き合ってルンルンなのは分かった。 充分過ぎるくらい伝わったんだけど、寝ないで行くつもりだったなんてほんとに信じられない。


「昼ちょい過ぎには帰れると思うから、昼メシ待てたら待っててー」
「分かりました!」


 磨りガラスの向こうで頭を洗いながら声を掛けてきた聖南は、もう一時間も寝られないっていうのにすごくのんびりしてる。

 朝も苦手で、支度も遅い俺には考えられない事だった。

 シャワーから出てきた聖南に、お尻洗うからおいでと言われたけど、自分でやるからとにかく早くベッドに行ってくれともう一度急かしておいた。

 少しでも体休めてください、言う事聞かないなら帰りますって言い放ったのが効いたみたい。

 聖南が唇を変な形に曲げてベッドルームに入ったのを確認してから、俺は見様見真似でシャワーヘッドをお尻にあてた。

 聖南がしてくれたのを思い出しながら、指を入れて気持ち程度動かしてみたり、お腹に力を入れてみたりで頑張って掻き出したつもりだ。

 でもちゃんと出来たか分かんないし、あまりにも恥ずかしい格好をしてる事に気付くと集中出来ないしで、一人で顔を熱くした。

 ここに聖南のものが入ってて、ぐちゅぐちゅにかき回されて、中にいっぱい出されて、色んな体位を試されて……なんてやらしい事を思い出して悶々としていると、つい長風呂してしまってあっという間に聖南が出掛ける時間となってしまう。


「葉璃、ちゃんと寝てろよ?」
「……はい、……」


 のぼせた俺に優しくそう言ってくれた聖南は、本当に徹夜状態で仕事に行ってしまい心配だ。

 気障に俺のおでこにキスをした聖南からはいつもの香水の匂いがして、まるで寝不足を感じさせない完璧な「セナ」として玄関を出て行った。


「聖南さん……」


 あれだけ運動した後でひどく疲れてるだろうに……大丈夫なのかな……。

 体力は有り余ってそうだったから、聖南にとっては俺の心配なんて余計なお世話なのかもしれない。


「……お言葉に甘えて寝よっと……」


 長時間のエッチでクタクタな上に、長風呂で体中がシワシワのヘトヘト。

 聖南が整えてくれたらしい綺麗なベッドに入ると、いつもの端っこに寝そべって俺は思った。

 性欲と独占欲がとんでもない人を好きになっちゃった。

 そしてやっぱり、───。

 後処理は聖南にやってもらえばよかった。





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