必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 一瞬だけ、聖南のモノを口で咥えてもらおうかという考えがよ、それはさすがに葉璃にはまだ早いかとやめておいた。

 葉璃のできる範囲の事で無ければ、ただの意地悪になってしまうからだ。

 それに聖南は、あまり口でされる事に喜びを見出だせない。 愛しの葉璃にお仕置きと銘打ってしてもらったところで、両者が快感を得られないと無意味であると早い段階でその願望は打ち消した。


『葉璃が俺の眼鏡フェチなら、俺は葉璃の泣き顔フェチかも……』


 涙を溢しそうな葉璃を見るとすでにいじめているような気になってしまったが、こんな性癖があったのかと新しい発見があった。

 一撃で胸をやられる上目遣いや、ガシッと心臓を掴んで持っていかれる微笑も最高なのだが、こんなにもセックス中の悶え泣きが可愛いとは知らなかった。

 病院で見た泣き顔は、感情の籠もった美しい涙を流していたのでムラムラとはしていても我慢出来た。

 それが今目の前で繰り広げられている「無理」「許して」と懇願する姿は、ひどく扇情的だ。

 羞恥の混じった、どうしていいか分からないという混乱の涙をポロポロと零していて、すべての可愛いを結集して出来上がったものかと思った。


「あとは頑張って。 俺イくまで終わらねぇからな」


 散々突き上げ、もう二人とも弾けそうだという寸前で聖南は突然動きを止めた。

 そんな聖南を、泣きながら唖然と見詰める葉璃の瞳は揺れた。


「そ、そんな……っ」
「……痛っ。 それは卑怯だろ、締めんのは!」
「分かんないもん! ……動くって、どうやればいいんだよーっ」
「そっからか! ……いいか、足付いて、自分で腰を上げたり下げたり回したりすんだよ」


 葉璃の両足をベッドに置いて地につかせ、腰を持って上げ下げする。

 こうやるんだぞと言うと、葉璃はほっぺたを膨らませてしまい、また怒ってる、と聖南は笑ってしまった。

 そうかと思えば、自分でするなんて無理…と途方に暮れているようで、またうるうると切ない瞳を向けてきた。

 感情がよく変わって、楽しい子だ。


「……動くって、そんな……」
「やってみ? もう気持ちいい場所も分かってるだろ? 自分で動けたら、自分で擦れるよ」
「ん……やってみる……っっ」


 言いながら聖南のお腹に両手を付いた葉璃が、いよいよ自分で動くんだと思うとそれを眺めたくて、聖南は枕を高くして横になった。

 頬が真っ赤だ。

 聖南のものが入ってくる異物感と、聖南に凝視されている羞恥で動きを止めそうになるも、気持ちいいところを探ってみたい快楽への興味も強いらしくゆっくりゆっくり腰を落としていく。


「んぁ……あっ……ん……」


 何とか全部入って、ぺたんと聖南の上に座った状態でジーッと葉璃は聖南を見詰めた。


「腰回してみろよ」


 クンッとちょっとだけ下から突くと、葉璃は細い首を仰け反らせて声にならない悲鳴をあげた。


『ヤバ……こんな光景見たら耐えられるはずねぇじゃん……バカなの俺……』


 切な気に眉をしかめる葉璃を下から眺めるなんて、もっと余裕が出て来てからやるもんだったと聖南は痛感した。


「できな……んっっ!  だって、聖南さんがこんな奥まで……!  お腹までいっぱいだよ……っ」
「……あーもう!  質悪りぃ!  こんなもん我慢できっか!」


 葉璃にベタ惚れな堪え性のない聖南は、お仕置きという大それた名のフェチで楽しんだだけに過ぎなかった。





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