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しおりを挟む今日も足の違和感と共に起き出した。
朝が苦手な俺はいつものようにロールパンを一個無理やり食べきると、薬を飲んで林さんの迎えが来るまで自室にこもった。
昨日は、今日の事もあるからって本当に自宅に送り届けてくれた聖南は、帰り際もしつこく「薬を飲め、我慢はするな」って言い続けてた。
聖南の余りある愛情をしっかり受け止めた俺は、時間を決めて痛む前に早め早めに飲もうと薬を鞄に忍ばせる。
「葉璃ー、今日レコーディングだよね?」
林さんが迎えに来るまで歌詞とパート割りをチェックしておこうとベッドに腰掛けた時、春香が何の前触れもなく部屋へ入ってきた。
「ねぇ……もうノックも無し?」
「あぁ~ごめんごめん。 いいじゃん、血を分けた双子なんだから」
姉弟だからってプライベートはないの。
毎度の事ながら、血を分けた家族でも男女の双子なんだからもう少し気を遣ってほしい。
「そう、今日レコーディング」
「頑張ってね!って、言いに来たの。 前の葉璃だったら今頃、気分悪い~とか、緊張して手汗が……とか言ってたし、心配で来てみたけど大丈夫そうだね」
「緊張はしてるけど……。 そうだな、人前じゃないし、あんまりこう……切羽詰まった感じではないかも」
「大塚事務所は大きい事務所だから、葉璃と恭也くんがこれからどんな風になるのか、すっごい楽しみ! あ、そうだ。 ユニット名ってもう決まってるの?」
「いいや、決まってない。 あ、分かんないな。 実はもう決まってて、まだ俺達は聞いてないってだけかも?」
「えぇ~まずそれ聞きたいよね! 私達の時は先にもうユニット名決まってたよ」
「そうなんだ。 なんか色々バタバタしてて、そんな事考えてる余裕無かったもんなぁ」
春香に言われるまで気にもしてなかったけど、これからアイドル歌手として活動する間の大切なユニット名は、確かに気になる所だ。
恭也と俺の頭文字取ったりとか、ありがちなユニット名だったりするのかな。
それか、まったく別のものか。
いつ誰に教えてもらえるのか分からないけど、気になってちょっとウズウズしてしまう。
「もし聞いたら一番に教えてね! ……ところで葉璃。 セナさんとは順調?」
「なっ! なんだよ、急に」
「その顔は……順調なんだね。 そっかぁ、葉璃に先を越されちゃったなぁ~」
俺とほとんど一緒の顔の春香がジーッと見てきて、それから納得したように腕を組んで重いため息を吐いた。
知ったような態度に、どの顔だよ!ってツッコんでやりたかった。
「あの百戦錬磨と噂されてきたセナさんが、あんなに必死だったもんなー。 葉璃を好きになるなんて、これはもう、必然だったのかな~?」
ふむふむ、と言いながら自分だけ満足そうに出て行った春香の背中を、俺はただ見つめる事しか出来なかった。
必然……?
俺と聖南は、こうなる事が、必然……。
昨日たくさんメモを書き込んだ紙がひらりと床に落ちた。
俺の思考が停止してたからか、その様子が何故かスローモーションに見えた。
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