必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 程なく映画が始まり、起承転結のしっかりとした面白可笑しい、そして最後はホロッとくる実に微笑ましい洋画を字幕版で観賞し、近頃忙しかった聖南ものんびりと何も考えずに楽しめた。


「面白かったー!」
「ちょっと昔の映画って、味があっていいね」


 二人が伸びをしながらそう言い合っているのを、聖南は何とも穏やかに見守る事が出来ている。

 トイレへ行くという葉璃に付き添い、出入り口で門番のように待つ背の高い聖南と恭也を、周囲は物珍しそうに見やっていた。

 時折交じる黄色い声も、長身の男性が二人揃うと圧巻らしく、どうやら暖簾のような前髪をした恭也の存在のおかげか、簡単に変装をした聖南の存在は今の所はまだバレてはいないようだ。


「あの……すみません。 今日、ご一緒してしまって。 セナさんが来るって、葉璃から聞いて、俺は遠慮したいって、言ったんですけど……」


 前を向いたまま、努めて小声で恭也が申し訳なさそうに謝ってきたが、聖南はマスク越しの目元だけで笑いかけてやる。

 それを言われてしまうと、葉璃との通話で器量の狭さを発揮した事を思い出して苦笑を浮かべる事しか出来なかった。

 案じていた「友人」が葉璃にも居て、その存在がまさかユニットの相方だとは二人ともが想像だにしていなかったに違いない。

 恭也に嫉妬などしていては、葉璃は悲しむだろう。

 ナンパから守っていたり葉璃の好みを熟知していた事からも、恭也が葉璃を大事に思っているのは聖南にも伝わった。

 冷静になってみると、聖南にとっては何よりも可愛い存在である葉璃を、皆が皆恋愛対象として見るはずがない。

 近しい人物で危険なのはとりあえず一名だけだ。


「あぁ、構わねぇよ。 元々二人の約束に俺が後から割り込んだんだから。 大丈夫、謝るな」
「せっかくのデートなのに、お邪魔してしまいましたね」
「葉璃が譲らなかったんだろ? 恭也との約束が先だって」
「はい……。 前は、そんな事を言える性格では、無かったから……驚きました」
「だよなぁ。 俺も葉璃の変化にはたまに付いていけねぇ、ほんとに同じ人か?って思う事あるよ。 今のが多分、ほんとの葉璃なんだよな。 クラスにも馴染めてるって聞いて俺は嬉しいけど」
「あ、はい。 そうなんです。 葉璃はセナさんと出会って、大きく変わり始めました。 俺もたくさん、良い影響貰ってます。 可愛くて真っ直ぐな、本来の葉璃を引き出してくれたのは、全部、セナさんです。 セナさんのおかげです」


 恭也の言葉は特に、重みがあった。

 葉璃の卑屈さに気付き何とかしてあげたかっただろうに、恭也のこの様子ではそれは無理だったらしい。

 どうしていいか分からない、何とかしてあげたいという気持ちだけが膨らむもどかしさの中、葉璃は聖南と出会い、自分と向き合えるようになって、今がある。

 聖南のおかげだと言われてもいまいちピンとはこなかったが、恭也がゆっくり紡いだ言葉は、葉璃の告白の次に嬉しかったかもしれない。



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