102 / 541
21♡
21♡5
しおりを挟む「聖南さんっ、待って、お風呂! シャワーでもいいから先に浴びさせて!」
手を繋いだまま、聖南の家に到着するなりすぐさまベッドルームへ連行されて押し倒されたので、さすがに今日はこのまま抱かれるのは嫌だとごねた。
学校帰りで(体育もあったし)、スタジオで歌を歌って少なからず緊張して汗をかいたし、大人達が密集したスタジオ内はやけに蒸し暑かったしで、家に帰ったらまずお風呂に入ろうとぼんやり思ってたくらいだ。
でも聖南は不満そうに眉間に皺を寄せている。
「はぁ? いいよ、んなもん」
「嫌です! 浴びさせてくれないなら帰る!」
「……分ーかったよ。 じゃあ俺も一緒入る」
仕方ないな、と言いながらも俺を起こしてくれて、また手を繋いで初めて入るバスルームにやって来た。
ほんとに普段から使ってるのか疑いたくなるほど、脱衣所も洗面台もホテルみたいにピカピカだ。
そんな整頓されたバスルームへ入るや否や、早速俺の制服を脱がそうとしてきた聖南の手を慌てて止める。
「何」
「は、恥ずかしいんで……っ自分で脱ぎます。 ていうか一人ずつ入るのはダメなんですかっ?」
なぜそもそも一緒に入るんだと、恥ずかしくてたまらない俺は懲りずにまたごねると、薄茶の瞳に吸い込まれそうなほど真剣に見詰め返され、グッと押し黙ってしまう。
「葉璃が自分で脱ぐのも、一人ずつシャワー入るのも、どっちも却下。 今からもっと恥ずかしい事すんのに、こっから恥ずかしがってたら保たねぇよ?」
「……うー……却下って……」
「湯船は終わってから入ろうなー?」
「……お、終わっ……はい……」
有無を言わせない物言いに、これはもう何を言っても無駄だと諦めた。
せめてここが暗ければそんなに恥ずかしくないのに、今日に限ってやたらと明るく感じてしまうのは気のせいかな……。
全裸になった俺をジロジロ見ながら、聖南も全て脱ぎ終えると、無言のまま抱き締められた。
素肌同士だと、聖南の甘い体臭と香水の香りを直に嗅いでしまい、それだけで少し感じてしまった俺は相当ヤバイと思う。
「……聖南さん?」
抱き締めてジッとしている聖南の背中に手を回しながら、そっと名前を呼んでみる。
「こんなに早く葉璃を抱き締められると思わなかった……」
「……聖南さん……」
「マジで、ちゃんと葉璃が答えを出すまで何年でも何十年でも待つって決めてたんだけど。 その前にもし、もう俺なんか要らないって言われたら……立ち直れる自信はなかった」
聖南は思い詰めたように、そう告白してきた。
俺と同じ、か弱く脆い部分を垣間見た気がして、聖南がどれだけ不安な日々を過ごしてきたのかと思うと胸が苦しくなる。
そんな事を思いながら毎日生活して、何よりそれを俺が味わわせてしまったなんて、やるせなかった。
「聖南さん……、もう俺、どこへも行かないですよ。 いつか聖南さんが俺を要らないって言う日がきても、俺は追い掛け回します」
「ぷっ。 葉璃が俺のストーカーなんの?」
「そうです」
自信満々に言い切ってやると、苦しく思いを吐露していた聖南の空気が変わってホッとした。
俺はもう聖南から離れないよって伝わったんなら、それでいい。
「それいいじゃん。 でも俺そんな事一生言わないから、ストーカーの経験は出来なさそうだな」
「……ふふっ……」
「おっ、笑った。 かわいー♡」
「っっ!? からかうのやめて下さい!」
「からかってねぇってば。 葉璃の笑顔あんま見た事ないからたまんないの。 ……さて、シャワー浴びよっか」
「……はーい」
裸で何分か抱き合っていたからか、さっきほど羞恥は感じなくなっていて、悠長にも呑気に返事した俺は聖南から差し出された左手を取った。
13
お気に入りに追加
302
あなたにおすすめの小説
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
くまさんのマッサージ♡
はやしかわともえ
BL
ほのぼの日常。ちょっとえっちめ。
2024.03.06
閲覧、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
もう一本書く予定です。時間が掛かりそうなのでお気に入りして頂けると便利かと思います。よろしくお願い致します。
2024.03.10
完結しました!読んで頂きありがとうございます。m(_ _)m
今月25日(3/25)のピクトスクエア様のwebイベントにてこの作品のスピンオフを頒布致します。詳細はまたお知らせ致します。
2024.03.19
https://pictsquare.net/skaojqhx7lcbwqxp8i5ul7eqkorx4foy
イベントページになります。
25日0時より開始です!
※補足
サークルスペースが確定いたしました。
一次創作2: え5
にて出展させていただいてます!
2024.10.28
11/1から開催されるwebイベントにて、新作スピンオフを書いています。改めてお知らせいたします。
2024.11.01
https://pictsquare.net/4g1gw20b5ptpi85w5fmm3rsw729ifyn2
本日22時より、イベントが開催されます。
よろしければ遊びに来てください。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
召喚された美人サラリーマンは性欲悪魔兄弟達にイカされる
KUMA
BL
朱刃音碧(あかばねあおい)30歳。
ある有名な大人の玩具の開発部門で、働くサラリーマン。
ある日暇をモテ余す悪魔達に、逆召喚され混乱する余裕もなく悪魔達にセックスされる。
性欲悪魔(8人攻め)×人間
エロいリーマンに悪魔達は釘付け…『お前は俺達のもの。』
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
えっちな美形男子〇校生が出会い系ではじめてあった男の人に疑似孕ませっくすされて雌墜ちしてしまう回
朝井染両
BL
タイトルのままです。
男子高校生(16)が欲望のまま大学生と偽り、出会い系に登録してそのまま疑似孕ませっくるする話です。
続き御座います。
『ぞくぞく!えっち祭り』という短編集の二番目に載せてありますので、よろしければそちらもどうぞ。
本作はガバガバスター制度をとっております。別作品と同じ名前の登場人物がおりますが、別人としてお楽しみ下さい。
前回は様々な人に読んで頂けて驚きました。稚拙な文ではありますが、感想、次のシチュのリクエストなど頂けると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる