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傷口の腫れはほとんど引き、あれだけ腰を動かせるほどには痛みもなくなっている。
葉璃には連絡も、会いに行くこともしないと言ってしまった手前、この数日、毎日葉璃とのLINEを見返しては恋い焦がれていた。
問題の日から一週間後。
聖南はこの日、事務所に顔を出していた。
社長に呼ばれたからではあるが、まだまだ気持ちは沈んだままなのであまり外出はしたくなかった。
公私混同はしない質であるはずなのに、社長室のソファに我が物顔で腰掛ける聖南はどこか心ここにあらずで、後からやって来たアキラにも心配されてしまうほどだった。
「セナ、会うの久しぶりだな。痩せたんじゃね? 傷の治りはどうよ?」
「ん? あぁ、もうほとんど平気」
「そっか、良かったじゃん。ハルとはうまくいってる?」
「いってない」
傷の治りが順調そうでアキラが安堵したのも束の間、大事な質問を聖南はまさかの即答で返しギョッとなる。
「はっ? ……それ、もしかして俺が電話してからこじれたんじゃ……」
テレビ局のロビーで葉璃と佐々木を目撃したアキラが、聖南にその件を話してから音沙汰が無かったので余計に心配になった。
もしかして要らぬお節介だったかもしれないと、後からしばらく悩んだアキラである。
自分のせいで聖南と葉璃の関係がこじれたのではないかと、背中に冷や汗が流れる寸前だった。
「いや、それは関係ない」
眉を顰めたアキラに対し、聖南がまたしても即答したので心底ホッとすると、だからこんなにも覇気がない状態なのかと納得した。
聖南の隣にアキラも落ち着き、「どうしたんだよ」と問い掛ける。
ぎこちなさはあったが、うまくいっているように見えた二人の関係が気になるのは、アキラが二度も葉璃と接触しているからに他ならない。
葉璃の素性を知ると、聖南の本気度も分かるために放ってはおけなかった。
「何かあったのか? ハルと別れた?」
「微妙……」
「なんだよ微妙って」
「どう言っていいか分かんねぇんだよ。しばらく連絡取り合わないってだけだ」
「は?? それさ、一回距離置きましょー的なやつ?」
「ま、そんな感じ。セックスはした」
「はぁ!? マジ!? その後にそんな事なってんのかよ」
唐突な告白にアキラは体を仰け反らせて驚き、事務所のスタッフが運んできた熱いお茶を一気に飲み干した。
「………………」
「セナ、何やらかした」
「やらかしたんかなぁ……分かんねぇ。一つ分かった事は、俺と葉璃はめちゃめちゃ似てるって事だな」
連絡を取り合わない状況にあって、落ち込んだ様子は見て取れるが余裕すら感じる言葉に釈然としない。
「何、なんの話?」
アキラと聖南の雰囲気を感じ取ったケイタが、やって来て早々に興味津々な様子で聖南の向かいに座った。
事の次第を簡単に説明し始めたアキラの横で、居心地が悪い聖南はサングラスを掛けて時が過ぎ去るのを待つ。
二人にはすべてを曝け出しても構わないと思ってはいるが、現状がいたたまれないだけに、不器用な顛末を知られて堂々とはいられなかった。
「あ~なるほどね。セナって″俺に付いてこい″でもないんだな」
「ハルは今までとは180度違うタイプの子だもんなぁ、セナも大変だ」
「まさしく初恋って感じ? 映画でありそうだよね。女子高生が胸キュンするようなやつ」
「俺も思った! 大概その手の映画はハッピーエンドだから大丈夫だぞ、セナ」
「…………お前ら軽過ぎ……」
葉璃と聖南は互いにこんなにも思い悩んでいるというのに、二人は実にあっけらかんと語り合っていて、それが聖南を励ますためだと分かってはいるが怒りを覚えても無理もなかった。
だが、救われたのもまた事実である。
あのまま一人、ベッド上で葉璃を待ち続けていたら、朽ちていく事間違いなしだったからだ。
「で、やってみて、どうだった?」
葉璃が男だと知るアキラは彼らしくないニマニマと期待に満ちた笑みを浮かべていて、明るい二人に救われたと思った矢先の不粋な質問にぶん殴ろうかと思った。
「バカ、言えるか」
「いいじゃん、減るもんじゃなし」
「俺も聞きたい!」
お年頃なケイタまでノリノリで乗っかってきて、葉璃との秘密をバラすようで物凄く気は進まないが、少しだけ……と口を開いた。
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