必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
上 下
46 / 541
11♡

11♡3

しおりを挟む



 愛の力って…と苦笑してると、アキラさんは俺の隣に腰掛けて、何かを言いたげにまじまじと顔を凝視してくる。

 なんでそんなに見るのって思いはしても、よく知らない人と視線を合わせ続けるのが苦手な俺は咄嗟に俯いた。


「……唐突で悪いんだけど、俺らどっかで会った事ある? なーんか見覚えあるんだよな」
「あ、あー……。 ……俺の口からは何とも……」


 それであんなに見てきてたのか。

 アキラさんと俺は会った事はあるけど、それは俺がハルカだった時に共演した時だから、言っちゃマズイかもと思って濁しておく。


「何だそれ? て事は、会った事あるんだ。 どこで会ったんだろ~」


 察しのいいアキラさんは、俺が濁した事で確信を持ったらしくて、うーんと唸っている。

 でも俺が自分からバラすわけにはいかないから、


「聖南さんに聞いてみてください」


とだけ言って、これ以上この話題が続くと嘘が吐けない俺からボロが出てしまいそうで、無理やり話を終わらせた。


「分かった、聞いてみるよ。 あともう一つ聞いていい?」
「……はい?」
「セナと付き合ってんの?」
「…………っっ……」


 思ってもみなかったド直球な質問に、固まるしかなかった。

 聖南の立場上、こんなデリケートでプライベートな事を簡単に頷くわけにはいかない。

 口を閉ざした俺の反応を見て、やっぱり勘の鋭いアキラさんは「ふーん」と何やら納得した風でコーヒーを飲んでいる。


「そっか。 ……何ていうか……もしハルも本気でセナの事好きなら、セナはあんなだけどめちゃめちゃ良い奴だからさ。  何があっても……よろしくな」
「………………」
「しかしハルが男だとはなぁ……ビックリした」


 もう完全に俺と聖南が付き合ってると確信しているアキラさんが、足を組んで改めて深く座り直した。


「あ、別に男だから何か思うとかじゃないから安心してな」
「………………」
「セナってさ、あんまり感情表現うまくないっていうか、ああ見えて一人で抱えて一人で騒いで、昔から全部自分だけで背負い込もうとするんだよ。 俺もケイタも小さい頃からセナと一緒にいるけど、セナは二つの顔を持ってると思ってて。 バカ正直で明るいセナと、何でも一人で抱えて頑張り過ぎて自爆するセナ」
「二つの、顔……」
「うん。 だから、セナが頑張り過ぎないようにハルが見張っててやってよ。 セナは独りで生きてきたような人間だから」
「………………」


 困惑する俺をよそに、デイルームから見える外の景色を眺めながらアキラさんはコーヒーをすべて飲み干した。

 あんなにポジティブで明るい聖南が、自爆するほど抱え込む質だとは思ってもみなかった。

 まだまだ知らない聖南がいて、しかもそれは根が深そうだ。

 のほほんと暮らしてきた俺では考えもつかないような悩みを、たくさん乗り越えてきたんだろうな……。


「ハルも病室戻るだろ?」
「あ、いえ……まだ連絡しなきゃいけないとこあって……」
「そ? じゃあ俺先に病室戻ってるな。 四時前にはここ出るわ」
「はい……」


 コーヒーの空カップをゴミ箱に放ったアキラさんに、ありがとうございます、と言うと笑顔を見せてくれて、何ともスマートに聖南の病室へと入って行った。

 連絡するとこなんてないけど、気恥ずかしいあの空間に、さらにアキラさんも居るっていう状況の中に戻る勇気はなくて、俺はスマホを握ってソファに沈む。


「俺なんかでほんとにいいのかなぁ……」


 アキラさんの戸惑いの理由が分かるだけに心苦しく思いながらも、何であんなに背中を押すような話をしてくれたんだろう。

 まだまだ知り合って間もないから、聖南の心の内まで知ることなんて出来ないし、平々凡々な俺にはとてもじゃないけど聖南という大きな存在を支えられる気がしない。

 アキラさんは応援するつもりで話してくれたんだろうけど、聖南の隣に並ぶべき相応しい人が、他にもっといるはずだって気持ちが再燃してきてしまった。

 でも今そんな不安を打ち明けたら聖南を悲しませてしまうだけかもしれないから、退院したらゆっくりじっくり話そうと思う。

 またその話かって呆れられそうだけど。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話

ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。 悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。 本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ! https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】

NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生 SNSを開設すれば即10万人フォロワー。 町を歩けばスカウトの嵐。 超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。 そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。 愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。

【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】

海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。 発情期はあるのに妊娠ができない。 番を作ることさえ叶わない。 そんなΩとして生まれた少年の生活は 荒んだものでした。 親には疎まれ味方なんて居ない。 「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」 少年達はそう言って玩具にしました。 誰も救えない 誰も救ってくれない いっそ消えてしまった方が楽だ。 旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは 「噂の玩具君だろ?」 陽キャの三年生でした。

EDEN ―孕ませ―

豆たん
BL
目覚めた所は、地獄(エデン)だった―――。 平凡な大学生だった主人公が、拉致監禁され、不特定多数の男にひたすら孕ませられるお話です。 【ご注意】 ※この物語の世界には、「男子」と呼ばれる妊娠可能な少数の男性が存在しますが、オメガバースのような発情期・フェロモンなどはありません。女性の妊娠・出産とは全く異なるサイクル・仕組みになっており、作者の都合のいいように作られた独自の世界観による、倫理観ゼロのフィクションです。その点ご了承の上お読み下さい。 ※近親・出産シーンあり。女性蔑視のような発言が出る箇所があります。気になる方はお読みにならないことをお勧め致します。 ※前半はほとんどがエロシーンです。

αなのに、αの親友とできてしまった話。

おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。 嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。 魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。 だけれど、春はαだった。 オメガバースです。苦手な人は注意。 α×α 誤字脱字多いかと思われますが、すみません。

イケメン仏様上司の夜はすごいんです 〜甘い同棲生活〜

ななこ
恋愛
須藤敦美27歳。彼氏にフラれたその日、帰って目撃したのは自分のアパートが火事になっている現場だった。なんて最悪な日なんだ、と呆然と燃えるアパートを見つめていた。幸い今日は金曜日で明日は休み。しかし今日泊まれるホテルを探す気力がなかなか起きず、近くの公園のブランコでぼんやりと星を眺めていた。その時、裸にコートというヤバすぎる変態と遭遇。逃げなければ、と敦美は走り出したが、変態に追いかけられトイレに連れ込まれそうになるが、たまたま通りがかった会社の上司に助けられる。恐怖からの解放感と安心感で号泣した敦美に、上司の中村智紀は困り果て、「とりあえずうちに来るか」と誘う。中村の家に上がった敦美はなおも泣き続け、不満や愚痴をぶちまける。そしてやっと落ち着いた敦美は、ずっと黙って話を聞いてくれた中村にお礼を言って宿泊先を探しに行こうとするが、中村に「ずっとお前の事が好きだった」と突如告白される。仕事の出来るイケメン上司に恋心は抱いていなかったが、憧れてはいた敦美は中村と付き合うことに。そして宿に困っている敦美に中村は「しばらくうちいれば?」と提案され、あれよあれよという間に同棲することになってしまった。すると「本当に俺の事を好きにさせるから、覚悟して」と言われ、もうすでにドキドキし始める。こんなんじゃ心臓持たないよ、というドキドキの同棲生活が今始まる!

処理中です...