必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 今までは、一時間でも二時間でも保たせる自信があった。

 むしろ、葉璃の甘い声とトロトロに蕩けた悶え泣き顔に興奮しながらも、己より葉璃の快楽を優先していた方が俄然 燃える。

 だが今日は、色々と絶望的だった。


「意地悪なんかするわけねぇじゃん。 なぁ、葉璃? 俺のこと好き?」
「っっ……! 好き、……っ好き……! だから耳にちゅーするの、やめてっ」
「俺も好きー。 葉璃、汗かいてんな。 気持ちいいんだ? かわいー♡ ……俺も余裕ないからよろしく」
「よ、よろしくっ……て……何っ? 今日の聖南さん、っ……変だよ!」


 声に照れた葉璃に耳を隠されてしまったので、こめかみに口付けるとしょっぱかった。 感じているのだと分かると余計に煽られ、夢中でそれを舐め取る。

 聖南とセックスしたくて一人で抜いてしまうほど悶々としていた葉璃も、いつもより感度良好であった。

 夜は冷え込む山中のコテージ、そして冷房の効いた室内にも関わらず、二人は蕩けるような熱に浮かされて全身がしっとりと汗ばんでいた。

 体を密着させて唇を奪えば、葉璃に両頬を取られて積極的に舌を絡ませてくる。

 もっとちょうだい、……そう言わんばかりだ。


「葉璃がかわいーからおかしくなってんだなぁ。 どうしたらいい? イってもイっても足りないかもしんねぇよ」


 葉璃の口腔内から唾液を絡め取り、聖南は獲物を狙う大型獣のように舌なめずりした。

 細い腰は聖南の左手でガッチリと押さえてあり、ピストンで自身と葉璃を満足させる事も忘れない。

 唾液交換だけで狂いそうになるのに、キスが物足りなかったのか葉璃は聖南の肩口に優しく唇を押し当てている。


『うーわ、……かわいー……』


 聖南がひたすらに葉璃を追うのも良かったが、これだけ求めてくれるようになった現在の方が、より愛おしさが増す。

 僅かに頭を浮かせて聖南にもどかしい愛撫をしている葉璃の後頭部を支えて、全身を使って包み込んだ。

 小さな葉璃はすっぽりと聖南の体に収まる。

 髪を撫でて汗ばんだおでこにキスを落とし、きつく抱き締めたまま葉璃の内側を強く擦った。


「そんな……っ……あっ、……も、……そこばっかり……っっ」
「気持ちいい? 葉璃、気持ちいい?」
「ぅんっ……うん、っ……気持ちいい……」
「はい、かわいー。 ……葉璃、かわいさダダ漏れさせんの俺だけにしとけよ? それ、誰にも振りまくなよ?」
「そん、……そんなの……っ……できない……! んんっっ、やっ……ちょっ……我慢……してる、のに……っ」


 腰をグラインドさせ、葉璃のいいところを亀頭で何度も擦り上げると、容易には身動きが取れないほど内壁がキツく締まった。

 密着したか細い腰がぷるぷると震え、同時に聖南の体に葉璃の精液が弾け飛ぶ。

 射精によって中が激しく波打ったその時、聖南の性器と理性がギュッと締め上げられる。


『うわ、やば……! マジで保たねぇ!』


 葉璃の絶頂間際からグイグイと締め付けられていたというのに、さらに追い打ちをかけられた。

 もっと抉っていたかったが、うねる襞に絡み付かれるとさすがの聖南も我慢出来ず、葉璃のあとを追うように腰を打ち付けていく。

 収縮中で敏感な孔を素早く出入りされている葉璃は、腕の中で声にならない嬌声を甘い吐息と共に溢した。

 ……本当に、今日は色々と絶望的だ。


「……っっ……せな、さんっ……!」


 大きく突き上げた先で腰を震わせた聖南の精液が、葉璃の内壁に散らばった。

 まったく萎えない自身に苦笑しながら、上気した頬に頬擦りする。


「はぁ……たまんねぇわ……」


 呼吸を整えようとする虚ろな瞳には、涙が滲んでいた。

 葉璃は、セックスの最中は必ずよがり過ぎて泣いているが、容赦のない長時間の波で狂い啼いている事を、聖南は知っている。

「……聖南さん……イったの……?」


 この一回ですでに疲れきった様子の葉璃が、目元だけ動かして聖南を見てきた。


「イったよ、なんで? ちょっと前も同じ事聞かれた気すんだけど」
「だって……中に出されたって分かるのに、聖南さんの全然……柔らかくないよ」
「ありがと」
「えっ、褒めてないです……!」
「男としては嬉しいじゃん」
「すごいや……。 やっぱり聖南さんと毎晩寝るの怖いです……」
「毎日ヤれば落ち着くんじゃね? 俺もそんな若くねぇし。 ……って、めちゃくちゃ大事な事忘れてた。 ごめん、一回抜く」
「え、? あっ、んぁぁ……っっ」


 葉璃の可愛さにやられていた聖南は、今日が何の日かを忘れかけていた。

 プロポーズとセックスだけの思い出にはしたくないと思っておきながら、風呂で葉璃に盛り始めた頃から一度達する今まで、主役の葉璃を差し置いて聖南の方が浮かれっぱなしであった。

 ズリズリ、と自身を引き抜くと、葉璃が背中をしならせて啼く。

 そんな反応をされるとたちまちまた挿れたくなる。


「いや、かわいく啼くなよ葉璃ちゃん。 一分だけ我慢な」
「……うん?」


 不思議そうに見上げてくる葉璃に後ろ髪を引かれたが、すべすべの太ももにキスを落として聖南は全裸で一階へと降りた。

 ブルーのリボンが結ばれた長方形の細長い真っ黒のケースを持ち、葉璃の元へ急ぐ。

 葉璃と触れ合っていないだけで、冷房の風が冷たかった。


「誕生日おめでと、葉璃……って、何してんのかなぁ?」


 全裸で駆け下り駆け上り、目的の品を握って慌てて戻ってくると、葉璃はうつ伏せになってカスミソウのブーケを嗅いでいた。

 ベッドに片膝を付いた聖南へ、デレた葉璃から「へへへ」と目尻を下げて振り向かれてしまい、またもや盛大に煽られた聖南は速やかに背後から葉璃を貫いた。

 無垢な体付きと、相反する扇情的な色白さ。

 精液やローションの飛び散った淫らなシーツの上でブーケを握った恋人の前で、我慢できるはずがない。



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