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しおりを挟むこの一年がこんなに早く感じたのだから、ここは大人の余裕を見せて「返事は三年後で構わねぇよ」と言ってやりたかったが、そんな事は聖南には無理だった。
葉璃との必然に気付いてからというもの、これまでの仕事もプライベートも多大に無理をしていたのだと一昨日初めて知って、愕然とした。
与えられる無償の愛を知らなかったせいなのか、心がまるで成長しないままここまできてしまったらしい。
見た目と中身が伴わないと言われる度に「どういう事だ」とイラッとしていたが、同じ時を過ごしてきたアキラとケイタは、恐らくずっと前から聖南の心の幼稚さに気付いていたに違いない。
無性に寂しい気持ちに襲われたり、真っ暗闇に独りぼっちでポツンと佇む光景が浮かんだり、仕事終わり帰宅してから電池が切れたようにベッド上に倒れ込んだり、あらゆる場面での記憶を飛ばしたり、その他諸々……それらは心の不安定さからくるものだった。
それを知るまでに二十四年もかかってしまったが、葉璃という精神安定剤がそばに居てくれたおかげで、気付いてからの受け入れは早かった。
葉璃と出会わなければ、この先もずっと気付かないまま自身と葛藤し続けていたかもしれない。
何もかもどうでもいいと悲観し、意味もなく徹夜する日もあった。
そんな寂しい思いをこれから先抱かずに済むというのは、とてもいい事だ。
今この手にある愛しい存在と出会えた事は、重要な幸福の始まりだと思う。
「……んっ、せなさ、んっ……! 待って、待って……っ」
「無理。 待てない」
密着する二人には広過ぎるキングサイズのベッドの上で、聖南は性急に葉璃を求めていた。
風呂上がりのポカポカな体をひとしきり撫で回して、小粒な乳首に吸い付きながら小さなお尻を揉みしだく。
「二日禁欲で頭おかしくなりそうだったんだぞ。 てか、いつしたか思い出せねぇくらい葉璃の事抱いてない。 俺可哀想」
「……ぁ……んっ……、噛むのやめ……っ」
「風呂でもストップかけるし」
乳首やその周辺のやわらかな肌を甘噛みしつつ、風呂で盛大に拒否された鬱憤を葉璃に向けた。
このスイートコテージは、開放的な露天風呂により美しい湖が目の前に広がる絶景を拝めるのが最大の売りだ。
確かに今は真っ暗闇で何も見えないので絶景も何も無かったかもしれないが、ギラギラした聖南の腕から葉璃は全力で抜け出してしまい、甘いムードになりようが無くて少々拗ねていた。
「だ、だって……外から丸見えだった……もんっ!」
「開放的でいいじゃん? 朝は風呂でやろうよ。 眺め見せてやりてぇ」
「……あっ、ん……眺め……っ?」
「そう。 綺麗なんだよ、ここ。 ネット情報だけど」
「なに、それ……っ……ふふっ……」
「かわいー、笑ってんの」
華奢な腰を撫でてやると、くすぐったいのか体をモジモジさせて聖南から逃れようとしている。
伏し目がちに笑顔を浮かべる葉璃は、どうしてこうも扇情的なのだろうか。
一年間、聖南に抱かれ続けた葉璃の妙な色気はバックダンサーの各々も噂していたほどだ。
普通にしていれば愛でるべき対象なのに、ベッドの上だと食べてしまいたいという男の欲望をこれでもかと掻き立てる。
聖南はそんな葉璃の中心部をさわさわと触り、自身のものと擦り合わせて腰を動かした。
「……あっ? ちょっ、待って……っ、やめって……!」
「ローション要らずだな。 物足んねぇけどこれはこれで気持ちいいー」
大きさも重量感もまるで正反対だが、感じる心地良さは同じである。
互いの先走りで滑りは問題ない。
火照った体を抱き締めてスリスリしているだけで、甘やかな前戯となっていた。
「ま、待ってっ、聖南さん……、舐めさせて……」
すでに我慢出来ない様子の葉璃が、唐突に上体を起こした。
嬉しい申し出だけれど、相変わらず聖南は葉璃に舐められるのが相当に苦手なので即座に首を振った。
「えー? 嫌だ。 俺がする」
「……なっ? 嫌だって……っ……ひどい……俺が下手くそだからだ……」
「違うって。 ……俺すぐイっちまうもん。 言うほど下手じゃねぇよ、葉璃。 フェラうまくなってる」
「じゃあ舐めさせ……っっ! あっ……なんでっ……ちょっ……!」
少しばかり積極的な葉璃が動き出す前に、聖南は葉璃の可愛く反り立つ薄い色をした性器を口に含んだ。
きっと葉璃も溜まっているだろうからすぐに射精してしまうかなと思い、飲む準備万端で喉を開いておく。
先端の割れ目に舌をねじ込ませて、次々と溢れ出る苦い液体を美味しく舐め取った。
腰を揺らして感じている葉璃に両膝で頭を挟まれたが、そんな事さえ興奮材料になるのだからすごい。
「あっ……も、もう……っ、出そう、出るからっ……! 離してっ、飲まないで……っっ!」
「………………」
葉璃の小さな嬌声と腰の動きで絶頂が近いと悟り、根元を扱く手を早めていると裏筋が脈打つのが分かった。
刹那、トロトロとした粘り気のある精液が聖南の口腔内を侵す。
コク、と喉を鳴らしてそれを飲み干し、聖南は首を傾げた。
『……ん? ……いつもの味じゃねぇ……?』
訝しみながらも、精液を飲んだ後はお決まりなので嫌がる葉璃の口の中へ唾液を送る。
「変な味がする」と眉を顰め、聖南の唾液を飲む表情が見たくて、いつもこれは欠かさない。
『なんだろ、何が違うんだ?』
美味しいか美味しくないかで言えばもちろん美味しくはないけれど、葉璃のものなら何でも飲み下す自信がある。
平気な顔で今日も飲んでは見たものの、何だかいつもと味も濃さも違う気がした。
同じ男であるからには、聖南と同じだけ禁欲中だったはずの葉璃の精液が若干違った事になど瞬時に気付く。
誰あろう葉璃のものであれば尚さらだ。
「なぁ、葉璃。 もしかしてどっかで抜いた?」
キスをやめた聖南は、天井を見上げてぼんやりしている葉璃と視線を合わせる。
視線が合った瞬間、葉璃は分かりやすく「しまった」顔をした。
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