必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 両頬を取られて、チュッ、チュッ、と何度も角度を変えて口腔内を蹂躙してくる。

 その動きに合わせたくても、聖南はそれを許してくれない。

 苦しい中で薄っすら開けた視界の先に、間近まで迫った聖南の瞳が閉ざされていて。

 俺だけじゃなくて、聖南も瞳を瞑ってる今は聖南が好きにしたい気分なんだろうなって分かる。

 何度も唾液を送り込まれて、その度に飲もうとするけど激しく舌を動かしてくるからぜんぶ飲み切れなくなってきた。


「んっ……せなさ、んっ……待って……!」
「ん?」


 息も出来なくなってきて、背中をパシパシ叩いて離してともがいたら、やっと唇を離してくれた。


「はぁ、……っはぁ……っ」
「鼻で息しろって。 教えたろ?」
「やってたけど……っ」
「ほっぺた、衣装よりピンクだ。 かわいー」


 いや、そういう事をそんな笑顔で言うから、また顔が熱くなってくるじゃん……。

 思いっきり照れてしまった俺は、両手で顔を覆って聖南の熱い視線から逃れた。

 これも毎回の事。


「まーた顔隠すんだ。 それもかわいーって分かってる?」
「も、そんな見ないでよ……! こんな格好してるし恥ずかしさ倍増なんだって……」
「いいよ、すげぇいい。 いけない事してるみたいなる」
「聖南さんちょっと変!」
「葉璃ちゃんがかわいーから悪い。 かわい過ぎて変にもなるよ」


 どれだけ言い返しても、聖南の言葉は俺のはるか上をいくくらい恥ずかしい事を言う。

 「かわい~」って言いながら腰を撫でてくる聖南はいつになく楽しそうで、その顔を見たくて少しだけ指をずらして覗いてみた。

 すると俺の衣装をまじまじと見ていた聖南に、油断して力が抜けてた手を握られる。


「なぁ、これライブん時から思ってたんだけど、セーラー服っぽいよな。 俺もブレザー無かったっけなー」
「へっ!?」
「いや、葉璃が大好きなコスプレ? せっかくかわいー格好してくれてんだから、俺も……」
「せ、聖南さんがブレザーを……!?」
「すげぇ食い付くじゃん。 ……確かあったと思うから着替えてくる。 いい子で待ってろ」


 えぇぇっっ!? ほ、ほんとに行っちゃったよ……!

 笑いながらチュッと音を立ててキスをした聖南は、俺の頭を撫でてほんとに部屋から出て行ってしまった。

 俺だけこんな格好してるのすごく恥ずかしかったんだけど、聖南もノリノリで着替えに行ったとこを見ると足がジタバタして期待を抑えきれない。

 ブレザー姿なんて、聖南の学生時代を知らない俺は見たくても見られなかったから想像もした事無かった。


「……っ楽しみーー!」


 俺の高校の制服はブレザーもネクタイも濃紺だ。

 聖南はどんな制服だったんだろ……!

 こんな趣味、聖南限定だからってやっぱ引かれちゃってるかなと思ったのに、予想以上に聖南も俺に感化されてて嬉しい。

 ワクワクしながら待ってると、十分くらい経って扉が開いた。

 待ちきれなくて、俺はベッドに四つん這いになって期待に胸を膨らませる。


「…………っっ♡♡♡」
「なんつーエロいかっこしてんの」
「ッッッ聖南さんカッコイーー!!!!」


 濃い灰色のブレザーと同色のスラックス、白のカッターシャツはボタンを上二つ開けた姿で現れた聖南に、俺の心が跳ね回った。

 ───カッコイイ!!! 想像してた何倍もカッコイイ!

 それしか言葉が浮かばない。

 キュンキュンし過ぎて心臓がおかしくなりそうだ。

 どうしていいか分からないくらいときめいてしまって、傍らに腰掛けてきた聖南に勢い良く抱き付いた。


「……っ。 どう? さすがにもう高校生には見えねぇだろ。 コスプレ感、増すよな」
「学生に見えますよ!! いや、そんな事よりカッコ良過ぎて…!! 聖南さん、素敵です! めちゃくちゃカッコいい!!」


 テンションの上がった俺は、聖南に抱きついたままその場で小さく跳ねて興奮を表した。

 聖南は何でも似合うと思ったけど、制服姿までこんなにも似合うなんてヤバ過ぎる。


「めっちゃはしゃいでんな。 葉璃かわいー♡」
「うわわっ」
「眼鏡掛けようか?」


 ベッドの上でピョンピョン跳ねてたら、呆気なく聖南に押し倒された。

 しかも聖南の秘密兵器を手に持ってニヤついている。


「えぇぇーーっ!? そ、そそそそんなっ! 俺をどうしたいんですか!! 聖南さんのこと見られなくなるよ!!」
「好きだろ、これ。 どう? 変じゃない?」


 俺の心臓はただでさえドキドキうるさいのに、眼鏡を掛けてしまった聖南に小首を傾げられてさらに胸が高鳴った。

 どうしたらいいの、足のジタバタが止まんないよ。


「───っ!! うん、うん! 変じゃない!」


 カッコ良過ぎるよ……!

 そう言いたくても、もう胸がいっぱいで呼吸もままならない。

 眼鏡姿はだいぶ見慣れてきたって思ってたのに、二人きりで、しかもこんな状況で掛けるなんて……!


「葉璃、しばらく人前で半裸になるなよ」
「……っ?? 何? なんで?」
「今日めちゃくちゃ痕付けるから」
「なっ……!」


 そんな事、事前に言ってくれなくてもいいのにっ。

 俺のピンクの衣装を捲りあげながら、聖南はフッと笑って眼鏡を上げた。


「こないだローションぬるぬるだったの覚えてる? あん時死ぬほど我慢したんだからな、痕付けんの。 翌日も撮影あったし」
「あぁ! あれ、そういう意味のぬるぬるだったんだ!」
「いま気付いたのか!? 言ったと思うけど……こうしてれば吸えねぇって」
「あんまり覚えてないです……あれ聖南さん激しかった日でしょ……? 気持ち良かったから……」


 そういえば言われたような気もしなくもない。

 けどあの日は新しい快感を覚えちゃってたから、聖南の手荒い手付きを思い出すだけで腰が疼いてしまう。


「……あーあ。 葉璃ちゃん煽っちゃった」


 ジッと見詰めてきてた聖南に強く抱き締められた瞬間、俺もこの後を予感して「あーあ」って思ってしまった。

 ───記録更新。

 こんな言葉が浮かんだ。



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