314 / 541
47♡
47♡9
しおりを挟む思い出すとまたうるうるしてきた。
泣いてるのがバレないようにマフラーに顔を埋めると、アキラさんはそれを見透かしたように背中を優しく撫でてくれる。
「ハルは良い子だな。 ……マジで、セナの事頼んだぞ。 あの猛獣の相手は色んな意味で大変だろうけど。 疲れたら、たまに俺とケイタに託していいから」
「はい。 ……でも疲れる前に、何とかします。 聖南さんは俺にとっても大切な人ですもん。 もう、……傷付けたくないです」
「よしよし」
アキラさんは初めて会った時から、この特殊と言っていい俺と聖南の関係を認めてくれて、応援してくれている。
俺が男だって知っても、偏見もしないで優しく見守ってくれている。
随所に見られる聖南の俺への愛情の掛け方で疑いようもないからなのか、こうして俺たちの仲を後押しするような事をたくさん言ってくれた。
それがどれだけ勇気付けてくれてるか、きっとアキラさんは分かっててやってるんだと思うから、すごく頭が良くて優しい人だと思う。
聖南の周りの人たちは、本当にいい人ばかり。
あんまりテレビを見ずに青春時代を終えようとしていた俺にとっては、世の常というものもよく分かっていない。
だから世間は怖い事だらけだと思い込んでた。 小さな揉め事とか悪事がいっぱいあって、見聞きしたくない事がありふれてる、って。
俺のこんな思いも、いつの間にかポロポロとアキラさんに話してしまっていた。
こんなにも雰囲気のある静かな場所に居ると、二度とこの林の中から抜け出せないような恐怖を感じてもおかしくなかったのに、アキラさんはずっと俺が不安を覚えないように体のどこかに触れてくれていた。
腕時計をチラッと見たアキラさんが「そろそろいいかな」と立ち上がるまで、俺はまたしても人生相談に乗ってもらい晴れ晴れとした気持ちだ。
「あ、ハル待て」
俺が立ち上がったと同時に、アキラさんが何かを察知してマフラーを目元まで上げてきた。
……な、何も見えない。
「ど、どうしたんですか?」
急に視界が真っ暗になってオロオロしていると、───。
「撮られたかも」
アキラさんに手のひらを取られて、さっきみたいに握られる。
さすがの俺も、「撮られた」の意味くらい分かった。
「えっ!? ほ、ほんとですか!?」
「フラッシュきたから、……多分そうだろ」
「と、と撮られたって……何を撮るんですか……っ?」
「俺とハル」
「……………っっ!?」
俺達が撮られてしまった事もだけど、まさかこんな所にマスコミが居るとは想像もしてなかった。
まぁでも、CROWN三人揃って出掛けてたらそりゃ目立つよね……。
マスコミが追ってきてたなんて全然気付かなかったけど、ラジオ終わりに三人で出掛ける様子さえ記事になるCROWNの人気はやっぱりすごいって事だ。
「ハル、そのままマフラー目元ギリギリで押さえとける? 後ろ結んでやる」
「はい。 大丈夫です。 このまま手引っ張ってくれたらありがたいです」
「当たり前だろ。 離さねぇし、ゆっくり歩くから。 ま、記事が出たらその時はその時だ」
どうやらかなり遠くからのフラッシュだったらしく、辺りには俺達以外に人気は無かった。 アキラさんもこんな事は日常茶飯事みたいであんまり気にしてないし、何より……。
「ていうか、俺男だしCROWNの後輩にあたるし、撮られても平気じゃないですか?」
足元がおぼつかないから、来た時同様俺の手を引いてくれてるアキラさんにそう言うと、何故か苦笑が返ってきた。
「男に見えてたらいいけどね」
「……アキラさんまで俺をからかってます?」
「そうだと良かったよ。 ……ハルもセナの扱い大変だろうけど、セナもハル相手じゃ大変だな~」
「え? 何ですか?」
「いやなんでもない。 独り言。 あ、見えてきたぞ。 足元気を付けてな。 もうさすがにエッチな話は終わってるだろ」
「……だといいですけどね……」
俺を抱き上げんばかりに力強く腕を引いてくれたアキラさんと、少しだけ急ぎ足で庭園を抜けた。
俺には場違いだと改めて思い直すほど立派な料亭に戻ってくると、今まで薄暗い場所に居たからか目の前がパァッと明るかった。
12
お気に入りに追加
319
あなたにおすすめの小説

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる