必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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「アキラさん、お疲れ様です。 いきなりすみません、今大丈夫ですか? そ、そこに聖南さん居ないですよね?」


 聖南とは今別れたばかりだから大丈夫だとは思うけど、一応確認しておく。

 察しのいいアキラさんは、それだけで何かを悟ってくれた。


『大丈夫だけど。 ……ん、セナには言えない話? それならちょっと待って、車行くから』
「え、大丈夫なんですか? お仕事中じゃ……」
『もう上がりだからマジで大丈夫。 ……よいしょっ……と。 ごめんな、お待たせ。 どうした?』


 バタンッと車のドアが閉まる音がして、本当に場所を移動してくれた事に感激しながら、俺は性急にさっきの聖南と社長の会話をアキラさんに伝えた。

 聖南が動揺していた事も、俺がすごく心配している事も。

 仮装パーティーの日に親身になってくれた事が記憶に新しくて、アキラさんには自分の気持ちを言いやすかった。


『……あーそれ、俺も聞いてた。 セナの親父さん、今度俺らがやるツアーの主催会社の副社長なんだ。 しかもこの二年で副社長から社長に上がるらしいから、ツアーで付き合いが生まれたセナを体良く呼び出してんじゃないかと俺は思ってるんだよな』
「そう、なんですね……」


 聖南のお父さんがそんなに偉い人だったなんて。

 しかも体良く呼び出してるっていうのが引っかかる。

 それがアキラさんの憶測だとしても、俺より聖南とは付き合いが長いというのもあって、あながち間違ってないんじゃないかと思う。


『セナは昔から裏方も率先してやってるから、今回もその会社と密に連絡取り合ってんだよ。 だから会食って流れになってもおかしくはない。 ただ心配だよな、俺もまさかセナがOKするとは思わなかったし』
「ツアーの主催者さんなんだ……。 だから仕方なく、なのかもしれないですね。 聖南さん、CROWNの事誰よりも大事に思ってるから、会食を断ったらツアーに影響出るんじゃないかって……」
『かもしれねぇな。 会食いつだって?』
「明日の十八時、料亭さくらでってとこは聞こえたんですけど、あとは分かんないです」
『いや、それだけ情報揃ってれば充分。 俺明日は十七時からフリーの予定なんだ。 ……偵察、行こうか』
「え!? て、偵察ですか……!?」
『心配なんだろ? ハル。 俺もセナが取り乱さねぇか心配だし、一緒に行こう。 とりあえずさくらに電話してみるから、また折り返し掛けるわ』
「は、はい、分かりました。 ありがとうございます……! じゃあ、一旦切りますね」


 アキラさんとのやり取りを終えてスマホを机の上に置くと、俺はしばらく呆然とした。

 ただ事情が聞ければ良かったんだけど、アキラさんもめちゃくちゃ心配してるのが伝わってきて、何だか大変な事になった。

 料亭の個室なんて、隣に部屋を取ったところで中の会話なんか聞こえないかもしれないけど、行けるものなら俺も行きたい。

 アキラさんが言うように、もし聖南が取り乱したらどうしようと不安でいっぱいだし、会食を終えて疲れきっていたら、すぐにでも抱き締めてあげたい。

 聖南の心の動揺を鎮めてあげられるのは、俺しかいないって自負してる。

 こんな時こそ、俺が一番近くに居てあげなくてどうするんだって話だ。

 数分後にアキラさんから連絡がきて、ハッと我にかえる。

 どうやって店の人から聞き出したのか分からないけど、聖南たちの隣の個室を予約できたらしくて、しかも明日仕事終わりに家まで迎えに来てくれるとまで言ってくれてた。

 でも明日はレッスンだから、事務所まで来てもらえたらって事で話はついて……。

 俺は、明日のレッスン用のジャージを畳みながら聖南を想った。

 今聖南はどんな気持ちなんだろう。 心配でたまらなかった。


 ……聖南、……。



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