必然ラヴァーズ

須藤慎弥

文字の大きさ
上 下
281 / 541
44❥

44❥6

しおりを挟む



 打ち合わせがあると聞いていた会議室へ揚々と歩いていると、前方から好かない顔が見えて回れ右しそうになった。

 だがそれは逃げを表しているようで、そんな格好悪い事は出来ないと無表情を貫く。


「CROWNさんじゃないですか。 お疲れ様です」
「あ、memoryのマネージャーだ!」
「お疲れっす」
「佐々木です。 ご無沙汰しております」


 深々と三人へ律儀に礼をするこの佐々木が、昔相当な悪だったと知るのは、聖南と葉璃だけだ。

 葉璃に至っては当時の佐々木の写真をも見た事がある。


「セナさん、大それた事しましたね」
「……もう回ってんの」
「当然でしょう。 私なんかラジオ聴いてましたから、リアルタイムで耳にしました」
「は? 俺らのラジオ聴いてんの? いいよ、聴かなくて」
「それは好きにさせて下さいよ。 ……恋人は大丈夫なんですか? あんな事公表してしまって」


 人目を気にした佐々木が聖南の耳元で葉璃を心配していたが、鼻で笑ってやった。


「大丈夫も何も、昨日もたっぷり愛し合ったから問題ナシ」
「……見せ付けてくれますね。 ようやく忘れられそうなのに、想像してしまうじゃないですか」
「あ!? 想像すんな!」


 フッと不敵に笑う佐々木はやはり何を考えているのかまったく読めなくて、聖南はこの佐々木という男がまだ信用しきれない。

 少しでも隙を見せたら葉璃にちょっかいをかけてきそうな、そんな危ない本気度を感じる。


「冗談ですよ。 あ、でも夜のアレの手助けの際は大目に見てください」
「やめろよ! 大目に見れるわけねーじゃん!」
「セナ、時間だから俺ら先行くぞ」
「いや、俺ももう行く。 じゃな、眼鏡マネの佐々木サン」
「お疲れ様です、葉璃によろしく。 副総セナさん」
「おまっ! それもう忘れろよ!!」


 もう行く、と言いながら佐々木の言葉にいちいち引っ掛かる聖南の腕を掴んだアキラは、一礼してその場を後にした。


「あいつマジでいけ好かねー!」
「声でかいから」
「もう変な事で注目浴びんの嫌だからセナ落ち着いて」


 ただでさえ目立つのに、とケイタは不満を漏らし、またスマホをいじり始める。

 アキラに背中を押された聖南が会議室へと入ると、交際宣言を知るスタッフにニコニコで迎えられて、そこでもまた質問攻めに遭った。

 野次馬精神抱負な業界人ならではの捻った問いに、危うく葉璃の名前がポロッと出てしまいそうになったが、アキラとケイタのさすがのフォローに助けられて打ち合わせは無事終了した。

 聖南の仕事は今日はこれで終わりで、後は家で作曲を進めればいいのでようやく葉璃の待つ自宅へ帰宅できる。

 夕方を終了目処にしていたがまだ三時を過ぎたくらいなので、葉璃を自宅に送り届ける前に少しばかり一緒の時を過ごせそうだ。


「お疲れー」
「セナ、アキラ、お疲れ~」
「あ、セナ。 ここの重役と話してかなくていいのか? いっつも来る度に長々話して帰んじゃん」
「今日はいいや。 家で待ってっから」


 ここだと誰が聞いているか分からないので、葉璃の名前は極力出さない。

 二人もそれが分かっているため、そこは深堀りせずに三人は解散した。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話

ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。 悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。 本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ! https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209

新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~

焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。 美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。 スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。 これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語… ※DLsite様でCG集販売の予定あり

【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】

NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生 SNSを開設すれば即10万人フォロワー。 町を歩けばスカウトの嵐。 超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。 そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。 愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。

【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】

海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。 発情期はあるのに妊娠ができない。 番を作ることさえ叶わない。 そんなΩとして生まれた少年の生活は 荒んだものでした。 親には疎まれ味方なんて居ない。 「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」 少年達はそう言って玩具にしました。 誰も救えない 誰も救ってくれない いっそ消えてしまった方が楽だ。 旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは 「噂の玩具君だろ?」 陽キャの三年生でした。

EDEN ―孕ませ―

豆たん
BL
目覚めた所は、地獄(エデン)だった―――。 平凡な大学生だった主人公が、拉致監禁され、不特定多数の男にひたすら孕ませられるお話です。 【ご注意】 ※この物語の世界には、「男子」と呼ばれる妊娠可能な少数の男性が存在しますが、オメガバースのような発情期・フェロモンなどはありません。女性の妊娠・出産とは全く異なるサイクル・仕組みになっており、作者の都合のいいように作られた独自の世界観による、倫理観ゼロのフィクションです。その点ご了承の上お読み下さい。 ※近親・出産シーンあり。女性蔑視のような発言が出る箇所があります。気になる方はお読みにならないことをお勧め致します。 ※前半はほとんどがエロシーンです。

αなのに、αの親友とできてしまった話。

おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。 嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。 魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。 だけれど、春はαだった。 オメガバースです。苦手な人は注意。 α×α 誤字脱字多いかと思われますが、すみません。

短編エロ

黒弧 追兎
BL
ハードでもうらめぇ、ってなってる受けが大好きです。基本愛ゆえの鬼畜です。痛いのはしません。 前立腺責め、乳首責め、玩具責め、放置、耐久、触手、スライム、研究 治験、溺愛、機械姦、などなど気分に合わせて色々書いてます。リバは無いです。 挿入ありは.が付きます よろしければどうぞ。 リクエスト募集中!

処理中です...