必然ラヴァーズ

須藤慎弥

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 本番後のミーティングは数分で終わったみたいだ。

 いつもは、その日の反省会と称した話し合いと、次回の簡単な打ち合わせで三十分はかかるらしいけど、ビックリするくらい聖南達は早く戻ってきた。


「お疲れ様、でした……」


 どんな顔をしてるのが正解なのかと思いながら、恐る恐る立ち上がって三人を労う。

 こんな時まで息がピッタリな三人は、「お疲れ」と声を合わせた。


「葉璃ー!」


 戸惑う俺に、飄々とした眼鏡聖南は両腕を広げながら近付いてきて、あっさり俺を包み込んで抱き締めてきた。

 俺は抗う余裕なんか無く、突っ立ったまま聖南の胸に落ち着いておく。


「やっちゃったよ」
「はぁぁぁ、マジでな。  俺らまた質問責めに合うぜ」
「そんなの俺に聞けって言やいいじゃん。  俺はラジオでリスナーからの質問しか受け付けねぇけど」
「アキラさん、ケイタさん、……なんか……すみません……」


 脱力しきりな二人を見ると申し訳なくて、聖南の腕から逃れた俺は肩を落として謝った。

 俺の存在が二人にも迷惑を掛けてしまう事になるのは目に見えていて、何てお詫びすればいいか分からない。

 ほんとに予想外だったんだもん……。


「なんでハルが謝んの?  大丈夫。  悪いのはそこの獣だから」
「ハル君は何も悪くないから謝らないでね?  突然暴走したセナのせいだ」
「獣とか暴走とか……俺なんなの」
「獣!」
「暴走した獣!」
「てめぇら……」
「や、やめてください!  喧嘩は!」


 何だか三人の雲行きが怪しくなってきて、慌てて俺は間に入った。

 長身の男達に囲まれる格好になったけど、普段仲良しな聖南達の言い合う姿は見ていられない。

 しかもその原因が俺にもあるんだから、聖南だけのせいにするなんて無理だった。


「喧嘩じゃねぇよ。  ……葉璃、これでもうなーんにも不安要素ねぇからな?  ぐるぐる独りで考えたりすんなよ」
「……だからって急にあんな事言うなんて……アキラさんもケイタさんも成田さんも、スタッフの人達も、ファンの人達も、みんな驚いたと思いますよ!」


 俺のために一大騒動覚悟で宣言してくれたのはとても嬉しいし、照れ笑いの一つでも見せていたいところだけど。

 聖南の立場上、宣言しました、はい終わり…な問題でも無いような気がする。


「そうだ、成田さんなんて?」


 水を飲みながらアキラさんが聖南を見ると、あぁ、と何か思い出したようにスマホを取り出した。


「俺に一言相談してくれてもいいだろ!って言ってた」
「……それ前にも言ってなかった?  成田さん」
「言ってた言ってた。  聖南がモデル事務所の社長と話したり出版社に出向くって言ってた日だろ」
「セナ、もう少し成田さん頼ってやれよ」
「俺の行動のが早えんだもん。  しゃーない」


 帰り支度を始めたアキラさんとケイタさんの前で、聖南はどこかへ電話を掛け始めた。

 俺も支度をする二人にならって、ソファに転がったままの烏龍茶を取りに行く。


「あ、成田さん?  終わったけど、話って何? ……やだよ、もう。  明後日事務所寄るからそん時にしてよ」
「……あ~あれ事務所へ出向けっていう電話だね」
「そ、そうなんですか?」
「だろうな。  あんな爆弾発言したら幹部もお怒りかもしんねぇ」
「そんなすぐ情報いくんですかっ?」
「事務所の夜勤スタッフがラジオ聴いてるだろうからな。  そっから芋づる式に連絡いくんだよ」


 事務所の幹部が、お怒り……!!

 そんな事にまでなろうとしてるなんて、やっぱり聖南は方法を間違えたんじゃないだろうか。

 アキラさんとケイタさんは荷物を持ってはいるけど、やっぱり気になるらしく俺の傍で聖南の電話を盗み聞きして事の次第を見守っていた。



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