4 / 35
第三話
☆
しおりを挟むこの曖昧な関係にそろそろ終止符を打つべきだと、何度目か分からない提案を遠回しにしてみた。
俺は来年からさらに勉強勉強の毎日になる。
性欲を持て余したところで、恐らく真琴の相手をする気力と体力が残らない。 今でも正直キツい時がある。
ちょうどその日の朝のセックスで一箱十二個入りコンドームを使い切った事だし、いい機会だと思った。
新たに買い足さず、そのままノーマルな関係に戻ろう。 そうすれば〝友達〟の名称くらいは当てはまるようになるんじゃないかな。
さすがにこれを何の脈絡も無く直球で言うと、感情型の真琴から喚かれる。 一方の俺は完全なる思考型。 宥めるのが非常に大変で厄介なので、ごくごく柔らかく言ってみたのだ。
真琴のお尻を綺麗にしながら、まるで他愛もない世間話でもするかのように。
『……俺たちって何なんだろうね』
色々な思いを込めて、その一言で俺がいかにこの関係に疑問を抱いているかを悟らせようとした。
けれど真琴は、即答はせずにお尻の孔をキュンキュンさせ、俺にはとても予測出来なかった返答をしてきた。
『おれ税理士になろっかなー』
『……え? なろっかなーでなれるものじゃないよ、税理士は』
『そうなの?』
『そうだよ。 真琴は経済学部に通ってるから全然可能性が無いわけじゃないけど、税理士の資格は司法書士より取得が難しいって言われてるんだよ?』
『ふーん』
真琴が突飛な言動をするのは珍しい事ではないけれど、相手をする俺は毎度理解に苦しむ。
うそぶいたそれの資格取得のためには、まずは簿記論・財務諸表論の必修科目、所得税法または法人税法どちらかの選択必修科目の合格が必須。
加えて、消費税法または酒税法、相続税法、固定資産税、国税徴収法、住民税または事業税のいずれか二つ、一般的には数年かけて計五科目の試験を受け、合格すれば晴れて税理士資格を取得できる。
真琴には、本当に税理士になりたいのであれば遊んでる暇はないよ、無理じゃないかもしれないけれど合格の可能性は限り無く低いよ、と滾々と説明しておいた。
検事を志す前、将来に備えて様々な国家資格を調べていた知識がこんなところで役立つとは思わなかった。
我が憎き父親もその職に就いているので、若干の拒否反応が出たというのもある。
俺の遠回しな提案を意外な切り口で躱した真琴は、その日も例外無く〝怜様大好き〟過多だった。
1
お気に入りに追加
39
あなたにおすすめの小説
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。

林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
【完結】はじめてできた友だちは、好きな人でした
月音真琴
BL
完結しました。ピュアな高校の同級生同士。友達以上恋人未満な関係。
人付き合いが苦手な仲谷皇祐(なかたにこうすけ)は、誰かといるよりも一人でいる方が楽だった。
高校に入学後もそれは同じだったが、購買部の限定パンを巡ってクラスメートの一人小此木敦貴(おこのぎあつき)に懐かれてしまう。
一人でいたいのに、強引に誘われて敦貴と共に過ごすようになっていく。
はじめての友だちと過ごす日々は楽しいもので、だけどつまらない自分が敦貴を独占していることに申し訳なくて。それでも敦貴は友だちとして一緒にいてくれることを選んでくれた。
次第に皇祐は嬉しい気持ちとは別に違う感情が生まれていき…。
――僕は、敦貴が好きなんだ。
自分の気持ちに気づいた皇祐が選んだ道とは。
エブリスタ様にも掲載しています(完結済)
エブリスタ様にてトレンドランキング BLジャンル・日間90位
◆「第12回BL小説大賞」に参加しています。
応援していただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。
ピュアな二人が大人になってからのお話も連載はじめました。よかったらこちらもどうぞ。
『迷いと絆~友情か恋愛か、親友との揺れる恋物語~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/416124410/923802748
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました

エンシェントリリー
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
短期間で新しい古代魔術をいくつも発表しているオメガがいる。名はリリー。本名ではない。顔も第一性も年齢も本名も全て不明。分かっているのはオメガの保護施設に入っていることと、二年前に突然現れたことだけ。このリリーという名さえも今代のリリーが施設を出れば他のオメガに与えられる。そのため、リリーの中でも特に古代魔法を解き明かす天才である今代のリリーを『エンシェントリリー』と特別な名前で呼ぶようになった。
幸せな復讐
志生帆 海
BL
お前の結婚式前夜……僕たちは最後の儀式のように身体を重ねた。
明日から別々の人生を歩むことを受け入れたのは、僕の方だった。
だから最後に一生忘れない程、激しく深く抱き合ったことを後悔していない。
でも僕はこれからどうやって生きて行けばいい。
君に捨てられた僕の恋の行方は……
それぞれの新生活を意識して書きました。
よろしくお願いします。
fujossyさんの新生活コンテスト応募作品の転載です。

僕の追憶と運命の人-【消えない思い】スピンオフ
樹木緑
BL
【消えない思い】スピンオフ ーオメガバース
ーあの日の記憶がいつまでも僕を追いかけるー
消えない思いをまだ読んでおられない方は 、
続きではありませんが、消えない思いから読むことをお勧めします。
消えない思いで何時も番の居るΩに恋をしていた矢野浩二が
高校の後輩に初めての本気の恋をしてその恋に破れ、
それでもあきらめきれない中で、 自分の運命の番を探し求めるお話。
消えない思いに比べると、
更新はゆっくりになると思いますが、
またまた宜しくお願い致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる