優しい狼に初めてを奪われました

須藤慎弥

文字の大きさ
上 下
186 / 206
優しい狼に初めてを奪われました

1※

しおりを挟む




 逃げたなんて思われたくない。

 和彦の自宅にも俺のアパートにも帰らないで、わざわざタクシーを走らせると万超え必至の地元の名前を言ってしまったのは完全に無意識だ。

 こんなにあっさり見付かるなんて思ってもみなかったから、どうやってここが分かったんだって聞こうとしても、和彦の顔を見たらそんなのどうでもよくなった。

 漫画ではたまに出てきたけど、現実味のない聞き慣れない単語にビックリしちゃったんだからしょうがない。

 僕はしつこいらしいので、なんて言ってた意味とはちょっと違うじゃん。

 松田さん達の噂話は、和彦とのエッチを知った俺にはすごくリアルに想像出来ちゃうのも当然だった。

 俺には使った事がないそれを過去の人達には使ってたと知って、ムカつくのと同時に不安でたまんなくなった。

 そんなに刺激的なセックスをしてきた和彦が、ロクに動き方も知らない俺との単調なセックスに満足してるとは到底思えなくて。

 何なら俺も飲んでやる。

 和彦が俺に飽きちゃう前に、何とか満足してもらえる方法を見付けないとって、頭の中がよく分からない方向へ脱線して沸騰しそうだったから、見つかりにくいであろう地元で頭を冷やそうと思った。

 冷静にならなきゃ。大仕事を終えた和彦に無様な姿を見せてしまう。ひどい裏切りの果てを見た疲弊した和彦に、全然関係ない事で困らせてしまう。

 情けなく詰め寄ってしまいそうな自分を落ち着かせるために都会を離れたのに、……事を終えた和彦は飛んできて、なぜかニヤニヤして喜んでた。

 俺のヤキモチは和彦を歓喜させるしかないんだって。

 ……どういう意味だよ。


「…………」


 和彦がベッドに戻って来てしばらく経つ。

 気配はあるのに無言を貫かれて、ほんとにそこに居るのかってだんだん怖くなってきた。

 お仕置き✕2を実行中の和彦に目隠しされて、産まれたままの状態でベッドに寝転がってる俺は心細くてかなわない。

 ナントカ遮断でいつもより感じるのは確かだけど、沈黙と暗闇は相性が悪いよ。


「か、和彦……っ、居る!? そこに居るっ?」
「居ますよ。ちょっと説明書を読んでまして……」
「説明書!? 怖……っ、和彦、何してるんだよ!」


 何なんだ! 説明書って、何の説明書なんだよ!

 お仕置き中だから目隠し取ってと言っても笑われて終わったから、ずっとこのままだ。

 見えないと、これから何が起きるのか怖くて仕方ない。

 和彦の落ち着いた低い声がほんのちょっとだけ安心をくれるけど、説明書っていうのがめちゃくちゃ怖い。


「……電池式なのかな」
「…………!? なに!? 何しようとしてる!?」
「あぁ、いえ。すみません。不慣れなもので」


 謝って済む問題か!?

 何をしようとしてるんだよ! と上体を起こそうとした俺の耳に、鈍い振動音が届いた。

 その瞬間、「あ~ローターね!」なんてホッとした声を上げそうになって口を噤む。


「……和彦っ、良からぬものを使おうとしてるだろ!」
「僕達は「初めて」が多い。 それって素晴らしい事ですよね」
「い、いや、それは時と場合によると思う!」
「え? 七海さんはこれ、初めてではないんですか?」
「初めてだと思う! てか見えないから「これ」が分かんないんだよ! 音で何となく分かる……んんあぁっ」


 感慨深げな和彦に猛反発していた俺は、突然の振動を直に乳首に感じて身悶えた。

 和彦が開発しようとしている俺の乳首は、オナニーする時に自分で撫でていた程度の感触じゃ感じなくなっている。

 先端をチロチロされて、甘噛みされて、弧を描くように乳輪を強く舐め上げられないと、満足出来ないやらしい体になった。


「ん、んぁぁっ、だ、だめ、だめっ、和彦……! やめ……っ」
「どんな感じですか? 僕の舌とはまったく違うでしょう?」
「ぅん、うんっ、ちがう……っ、ちがう、」
「気持ちいい?」
「……っ? わ、わかんな、っ……ぁぁっ……!」
「……気持ち良さそうですね」


 生々しい吐息混じりのそれではない、機械的なヒヤリとした冷たい感触と振動は未知だ。

 快感を無理やり引き出そうとする継続した動きには、腰が引けた。

 落ち着く間がない。

 あてがわれたローター(多分…)が左右の乳首を行ったり来たりしてる。


「……うーん、……」


 どことなく不満そうな声が降ってくると、乳首への振動攻撃は止んだ。


「どんな感じでした?」
「……っ、はぁ、……っ変な感じ……」
「……こっちはどうでしょうね?」
「え、っ? ちょっ、ちょっと待っ……! やぁぁ……っっ」


 今度はそれを性器にあてがわれた。

 暗闇と沈黙に負けて項垂れた性器が、振動に驚いてピクッと揺れる。

 そしてみるみるうちに元気になってきたのが自分でも分かって、顔を覆った。

 扱いてないのに、ちょんと触れられただけの振動が性器を、腰を、無条件に揺らそうとしてくる。

 ビリビリとした、快感なのか振動なのかが下半身を直撃し、背中がしなって身を捩っても和彦の掌がそれを阻んだ。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

処理中です...