優しい狼に初めてを奪われました

須藤慎弥

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 ……いいって言ってない。

 俺は許してない。  こんな事してて作戦会議なんて出来るはずないんだから、許すわけないじゃん。

 たくさん内を擦られて枕にしがみつくしか出来ない俺は、もう息も絶え絶えなんだよ……っ。


「……っ、……はぁっ……、んっ……んっ……」
「……七海さん」


 甘い吐息を漏らしながら、背後に和彦が覆い被さってきた。

 枕を握り締めた俺の手を撫でて、きゅっと絡ませてくる。

 奥を貫いてぴたりと嵌った和彦の性器が、中でドクドクと脈打って興奮を直に伝えてくるから、嫌って言えなかった。

 行為に慣れたわけではないけど、俺も気持ちよくなるように和彦は考えながら動いてくれてる。

 俺の性器は固くなってベッドのシーツに押さえつけられていて、和彦が動く度に擦れていっぱい汚した。

 触れられてもないのに扱かれてる感覚が、たまんなかった。


「僕、我慢するのをやめたんですよ。分かりますか?」
「……は、? ……分かるわけ、ない、だろ……っ」
「気付いたんです。今まで僕は、無理にイこうとしていたんですよ。ギリギリまで粘っての絶頂は確かに気持ちいいんですけど、幸福感がまったくなかった。ただ疲れるだけで、何も満たされなかった」
「う、ん……、それは分かったから……っ! ゆっくり動くの、やめ……っ」


 耳やうなじに口付ける合間の余裕のトーク中も、ずちゅ、ずちゅ、と和彦の性器が内襞を柔く刺激してむず痒くなる。

 俺がぺたんとうつ伏せになった状態で繋がっていて、ゆるゆると腰を動かす和彦の体重ものしかかって重たい。

 それに、和彦の以前のエッチ事情なんて聞きたくないんだよ。

 俺なんかより遥かに経験豊富なのは、出会ったその日の手の繋ぎ方と王様ゲームでのキスでとっくに分かってる。

 和彦がどんなエッチしてきたのかなんて、知りたくもない。

 貫くそれが、俺じゃない人と繋がってたなんて考えたくもないんだから。

 じわじわと襲う愛欲に物足りなさを感じるようになってしまった俺は、和彦しか知らないのに……分からない事を聞くなよ。

 俺は和彦にバレないように唇を尖らせて不貞腐れた。

 枕に顔を埋めて柔らかな刺激に息を詰めていると、和彦が上体を起こして俺の腰を持ち上げる。

 そうすると自然と和彦にお尻を突き出すような格好になってしまって、恥ずかしくてもっと深く枕に顔を押し付ける羽目になった。


「あ、ごめんなさい。七海さんは早く突いてあげる方が好きでしたね」
「えっ、いや……、違っ……! あ、待って、待てよ……っ、やっ……あぁぁっ……!」


 そんなつもりで言ったんじゃない!

 まるで俺が早く動いてってねだったみたいじゃん……そんな事してないのに。……好きなのはほんとだけど。

 肌のぶつかるタイミングが、音が、早い。

 頭が真っ白になる。

 和彦が腰を打ち付けてくる毎に思考が奪われていく。

 掴まれた腰と、震える膝の感覚が無くなってきて、恥ずかしいから抑えてた声もとうとう我慢出来ずに枕から顔を上げてひっきりなしに喘いでしまった。


「なんて可愛いの……。もっと声を聞かせてください」
「いっ、嫌っ……無理だ、もう……っ、あぅっ……うぅっ……っ」
「七海さん、その枕取っちゃいましょうか。僕の事よりそれを抱き締めてる時間の方が長いですよ」
「あぁっ、なんで……っ、だって、……んっ……!」


 揺さぶられて力が入らない俺の手から、するりと枕を抜き取った和彦はほんとにポイッと「それ」をベッドの下に放り投げた。

 ひょっとして、枕にヤキモチ焼いてんの……っ?

 じわ……っと和彦を振り返って表情を窺ってみると、案の定不機嫌そうに眉を顰めて俺の事を見下ろしていた。

 腰を絶えず動かしながら、振り返った俺の顎を取って唇を奪う和彦の手付きが流れるようで、あまりに手慣れ過ぎてる。

 ムカつくな……俺もヤキモチ焼いちゃいそうだ。  


「だってじゃありません。七海さんはバックが好きだから仕方ないんですけど……僕の事もギュッてしてください」


 俺も和彦も唇を尖らせて、どっちが不機嫌を誘ってるのか分からない。

 優しく体を抱き起こされてもムッとしてた俺は、その数秒後には和彦の願いを叶える事になる。


「……う、ぁああ……っ、これヤバ……、ヤバいって……! だめ、止まんな……っ」


 腰を持たれて起こされた俺は、奥深くまで挿入ってきた性器に身震いし、背中をしならせた。

 これ何だったっけ……。あ、対面座位ってやつだ。

 繋がったやらしい場所から、ぐちゅ……と粘膜の擦れる音がする。ダメだって言ってんのに言う事を聞かない和彦は、容赦なく俺に突き立てた性器で中を深く深く抉った。

 それは、俺の内襞ごと焼け付いてしまいそうなくらい熱かった。生々しく滑った液体が、性器が上下する度にとぷとぷと立派な竿を伝う。

 俺はこれがめちゃくちゃ苦手だ。なぜなら最奥よりも深い未知の扉を、自分で拓こうとしてるような気がするから……。

 おかしくなってしまうんだよ。火照った体も、和彦のと比べると悲しくなっちゃうくらい粗末な俺のモノも。


「……ほんとだ……トロトロ溢れて止まらないですね。気持ちいいですか?」
「あっ、も、ちょっ……まだ動く、な……!」


 和彦の腕を支えに、下からガンガン突き上げてくる動きに合わせてしとやかに揺れる俺の分身。次々と先端に滲む恥ずかしい液体が、溢れては垂れ、溢れては垂れを繰り返して和彦の下半身をねっとりと汚した。

 この性器で貫かれる快感を知った俺の体は、扱かなくても喜ぶようになってしまった。

 恥ずかしいのに、声が抑えられない。

 やめてほしくなんかないのに、「やめて」と言う。

 きっと和彦は、喘ぎ交じりのチグハグな言葉を都合良く解釈していて、聞くまでもない俺の快感度合いを感じてるからこそ、コロっと機嫌を直す。

 そして最終的には調子に乗って、とんでもない事を言い出した。


「七海さん、……この間お話した潮吹き経験、してみませんか? ついでに」
「はっ!? ……んっ、んっっ、嫌だ……っ、それ嫌……! ついでって……っ、何のついでだよ!」
「男性の潮吹き、ものすごい快感らしいですよ。僕、七海さんが狂ってるとこ見てみたいな」


 優しい口調で、ほっぺたを撫でてくれる手のひらも温かくて穏やかで、すごく好き。

 でも危なかった。

 ちゃんと気を張っておかないと、このとんでもない提案に二つ返事で頷いてしまうところだった。

 

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