113 / 206
さざ波
8※
しおりを挟む和彦はたまに、俺の言う事を思いっきり無視する。
でも、俺が本気で嫌がってたら和彦は聞いてくれる。……暴走してなければ。
「我慢しますよ。明日はいいよって言ってくれたら、今日は我慢します。触るだけにしておきます」
「触るだけで我慢出来なくなるの分かってんじゃん!」
「やっぱりそうですよね? 七海さんも我慢出来ないですよね?」
「おいっ、やっぱ俺はあっちで寝る! ここに居たら絶対奪われる!」
俺の股間辺りに膝を押し当ててくるのはやめてくれっ。
今日はダメだって言ってるじゃん!
明日は大事な初出勤なんだからしっかり睡眠取りたいって、理由もちゃんと言った。
そりゃあ……俺だって、気持ちいい事は好きだし、強引なのも実はそんなに嫌いじゃないよ?
何より、漫画を読みながら「こんなの嘘じゃん」って半笑いを浮かべてた、「毎晩の営み」が現実にあると知ってちょっと喜んでたのも事実だ。
そんなのも全部、和彦には見透かされていそうですごく気まずい。
いくら「ダメだ」って喚いて強がっても、ほっぺた真っ赤にしてたら何の信憑性もないよな……。
「七海さんが求めてくれたら、奪われた事になりません。恥ずかしがらないで、求めていいんですよ?」
「求めない! マジで今日は寝ときたいんだ!」
「うーん……。それでは、お互いの妥協案を探しましょう」
「そんなの探してないで寝ようよ! ……あっ、こら、っ……んっ……」
ガウン越しに半勃ちの性器を握られてピクッと体を揺らすと、すぐに唇が温かくなった。
ぬるりと舌を口腔内に滑り込ませて、じわじわと俺のと絡ませてくる和彦の巧みさに、鼻から抜ける声が抑えられない。
自覚が芽生える前から受け止めてるこのキスは、俺の脳内をすぐに痺れさせ、蕩けさせる。
何かの秘薬が体内にトクトクと流れ込んでくるみたいに、頭がボーッとして、全身から力が抜けていく。
「……キス一つですぐそんな……可愛い顔するじゃないですか。ここもほら…反応していますよ。求めてくれて嬉しいです」
「も、求めてない……! あっ……ダメだ、って……」
「可愛い……。少し触れただけで、舐めてって誘ってくる……」
隙間から忍び込んできた手のひらが、そんなつもりはないとでも言いたげに胸元をさらりと撫でて、その指先が悪戯に乳首をこねくり回した。
ダイレクトな刺激に、ぷくっとその存在を示すかのように立ってしまったのが自分でも分かる。
指先で摘まれるとそれだけで背筋がビクビクと震えてしまうのに、鎖骨を愛撫していた唇と舌が乳首を捉えて、本格的な興奮を煽られた。
「んっ……っ、和彦……っ、我慢、我慢は……っ?」
「我慢しますよ。今日は、挿れません」
「えっ? ほんと……っ? 我慢してくれる?」
「はい。僕は聞き分けのいい、優しい大人ですから」
「自分で言うのはどうかと……っ、んぁっ……も、っ……舐めるの、やめ……っ」
「そうだな……そのかわり……握ってもらおうかな……?」
「へっ……? 握、る……?」
両手で和彦の髪を乱していると、一瞬では理解できない事を言われて動きが止まる。
視線がぶつかった和彦の瞳は、ハッキリと欲情した、優しくない狼のそれだった。
「握って、扱いてほしいな」
「扱、く……っ?」
「七海さん、僕とバニラセックスの経験をしましょう」
「ヒッ……っ! そ、そこ触るとよくない気がするけど……!」
和彦、俺が初心者だって事、忘れてない……?
気が付けばいつの間にか下着を下ろされていて、直にお尻を撫でられていた。
要らぬ事に、初めて洗浄してくれた時に俺が口走った台詞を覚えていた和彦は、「いいでしょ?」と小首を傾げていやらしく微笑んでくる。
「あ、ちょうどいいところにローションが。これ使うとトロトロになって滑りがよくなりますから、気持ちいいかもしれませんね」
「何が、ちょうどいいところに、だ! 用意してただろ!」
「ふふっ……。ネグリジェ脱ぎますか? ローション付いちゃうの嫌でしょう?」
「ネグリジェ言うな! それ忘れて!」
「ふふふ……っ。あっ、ごめんなさい、指が……」
「ぅぁっ……! んっ……和彦……っ、お前……っ」
油断してムッとしていた俺の孔に、都合よくそこにあったローションで濡れた指先が、ちゅぷ、と入ってきた。
笑って誤魔化してるけど、絶対絶対絶対、確信犯だろ……!
「頑張って腕伸ばして、僕の触って下さい。……緊張するなぁ……七海さんが握って扱いてくれるなんて……」
「そっ、そこまで出来ない……! 扱くのは……うまく出来ないと思う……っ」
「いいんですよ。うまく出来なくて当然です。上手だったら怒りますよ」
「……っ、……?」
「いつ、誰のものを扱いたんですか、って。また妄想が膨らんでしまいます」
「やっ……やめ、っ……あ、っ……」
「七海さん、可愛い……。気持ちいいんですか? 腰動いてる」
知らないよ、知らない……!
俺の体の事を、俺以上に詳しく知り始めた和彦の手に堕ちるのなんか、あっという間だった。
素肌に口付けてくる唇と、吸われてチリッと走る痛い快感と、ぐちゅぐちゅと内壁を蠢く二本の指に完全に翻弄された。
和彦にそそのかされても、俺から求めちゃダメだ。
明日は初めての職場で初めての仕事をするんだろ、エッチしてる場合じゃないんだろ。
流されるな。バニラセックスなんて、和彦には無理だ。
頭ではそう、分かってた。
「──か、……和、彦……っ、挿れて……っ、もう、挿れて……! 起きてるから、俺……ちゃんと、和彦のことギュッてしとく、から……っ! はやく、挿れて……!」
無理な態勢で和彦のものを弱々しく扱いていた俺は、泣きながらせがんでいた。
俺の両足が、待ち構えるようにいやらしく開く。
うっそりと笑う和彦の魂胆にまんまと嵌ってしまったんだと、それに気付いた時にはもう──遅かった。
0
お気に入りに追加
661
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる