95 / 206
究明
5※
しおりを挟む中が、全身が、燃えてるんじゃないかと思った。
待ってと言ってるのに、聞く耳を持ってくれないまま、絶妙な強弱をつけて内を擦られて背中がビクビクと震える。
質量と熱に浮かされて喉が塞がってしまい、顎が痛むほど奥歯を噛んで続けざまに与えられる快感を堪えた。
和彦の背中にしがみつけないのがツラい。 指跡も爪跡も、想いさえ残せない。
いくら揺さぶられても、縛られた手首はほんとに解ける様子がなく、和彦が腰を動かす毎に縄と化したシャツがピンと張って締め付けてくる。
「んんんっ……っ、やっ……! ほどいて、おねが……っ、これ、ほどいて……っ」
「……もう少しだけ」
力強く腰を抱く和彦に涙目で訴えても、許してくれる気配がない。
熱過ぎて感覚がなくなった下腹部は、俺の精液とローションでドロドロだった。
和彦は最奥を突くタイミングで俺の性器を前触れなく扱いて、幾度となく射精を促してくる。
何度も降ってくる唇が、呼吸さえも奪い去ってくみたいで息も絶え絶えだ。
苦しくて、痛くて、それでも狂いそうなくらい気持ちよくて、和彦の巧妙な腰使いに頭が朦朧としてきた。
謙遜が嫌味に思えるほど和彦の立派な性器が、幾度となく内壁をぐちゅぐちゅと犯す。
広い背中を抱き締められない腕と手のひらを恨んで、握り拳を作った俺は瞼を閉じた。
「七海さん、あなたを忘れられないと言っている男の数を知っていますか?」
眠かったわけでも、意識が飛びそうになったわけでもなかったのに、ググッと奥を貫いた和彦はそのまま動きを止めて俺に覆い被さった。
唐突な質問に、まったく働いていなかった脳は思考停止からなかなか回復しない。
しかも、そんな事を急に聞かれても知るわけがない。
「んんっ? ……なに……っ? そん、なの……っ、知らな……っ」
「四十九人です」
「は、っ? やっ、うそ、……待って……っ、また……! あぁぁっっ──!」
正解を言われても「嘘だろ」としか思えず、うつろに和彦を見上げると優しくない笑顔でジッと俺を見ていた。
そして、腰を引く。
襞を擦る粘膜音を聞かされて、両足首を持ち上げられた。
全部丸見えの恥ずかしい格好をさせられて瞬きを繰り返すと、ずちゅ、ずちゅ、と柔らかく浅く、中を抉られる。
先程とは角度が変わったせいで、ダイレクトに和彦の亀頭が前立腺を擦り上げた。
「んんん……っっ!」
性器の先端から、ぽたぽたとお腹に先走りが零れ落ちるのが分かった。
無論、俺のだ。
何度目か分からない射精にはほんの少し足りない刺激に涙を流す俺を見て、和彦は嬉しそうに微笑む。
「僕入れて、五十人。キリ良く僕と出会えて良かったですね」
「へっっ? あっ……っ……うん、うんっ」
「良かったですね」の意味は分からなかったけど、和彦がそう言うならと頷いた俺は迂闊だった。
微笑みを消した冷たい瞳で俺を射抜いた和彦は、ベッドに両手を付いて容赦なく最奥を犯す。
「……っ……、や、っ、……─っっ!」
一気に挿入されて、顎と背中が仰け反った。
濡れきった孔からローションが弾けて腿を汚し、俺の体にはピリピリと小さな電流が走り抜ける。
──頷いちゃいけなかったんだ。
明らかに怒っている顔で、二分の一を外した俺のほっぺたに口付けた和彦が、縛られた手首に視線を移す。
「……なんて言うと思いましたか。初めてを守り通した事はたくさん褒めてあげます。でも男達をメロメロにしてきたのは許せない。あの男達一人一人の大脳皮質から七海さんの記憶を消し去りたい。そういう事が出来る機関を今探しています」
働かない意識の中、必死で和彦の言葉の意味を探っていた俺は、やっと、和彦が何の事を言っているのか分かった。
四十九人って、過去の合コンで俺が口説かれた男達の数なんだ。
でも、酔っ払って声を掛けられたとしても、和彦に奪われるまで「初めて」を守り通した俺だ。
俺を忘れられないなんて、何かの間違いじゃないの……?
「そ、……そんな奴、っ……居ないだろ……っ? 俺、ちゃんと……、断ってきた、よ……っ?」
「説得が成功している人は誰一人居ません。皆さん、七海さんの事を密かに想い続けていたんですよ」
「え……っ?」
「恋を知りたい、恋をしてみたいと純粋だった七海さんは、知らない間に何人もの男達から恋心を向けられていたんです。……罪な人だ」
「知らな……っ、知らない……! そんなの、知らなかっ、た……!」
苦しげに笑う和彦は腰を回し、熱を持った脈打つ性器でぐちゅ……と中を掻き回される。
弾け飛ぶ威力もなくなった精液が、陰茎を伝って先端から流れ落ちた。
もう、俺の下腹部はびしょびしょだ。
お構いなしに突き上げてくる和彦は、怒りと一緒に別の感情も伝えてくるから怒るに怒れない。
うわ言のように「好きです」と言葉にされ、触れてくる手のひらからは確かな深い愛情を感じ取った。
責められてると分かっていても、俺が和彦に返してあげられる手段を奪われている今、どうする事も出来なかった。
「七海さん、自覚を持ってください。あなたは魔性の男なんです。二度と飲みの席には行かないと約束してください」
「……んっ、……っ、んっ……、んん……!」
「不安で仕方ないですよ。究明した事実が僕の予想を遥かに上回っていたんですもん……。もうどこへも行かせたくない……他の人間の目に晒しておきたくない……」
知らなかったとはいえ、俺が無防備に「理想の恋」を求めていた後ろめたさと事実は変えられない。
俺はもう、俺の事しか見えてない純白な愛を持った恋人が居るんだから、不安になんてならないでほしかった。
照れくさくて、それを言葉にするのはめちゃくちゃ難しいけど、俺なりの愛情表現を和彦はもう知ってるはずだ。
「……和彦、っ……これ、ほどい、て……ぎゅってしたい……っ!」
「約束、してくれますか? 他の男に魔性は出さない、飲みには行かない、出来れば他の人と目を合わさない、それから……」
「多いよ……! 約束、覚えらん、ない……! あぁっ……っ、も、分かった、言う通りにするっ、だから……お願いっ、ほどいて……! ぎゅって、させて……!」
軋むベッドの音が激しくなるにつれて、和彦の体温を感じられない事が歯痒くて仕方なかった。
──恥ずかしげもなく甘えを口にした事で、俺の「恋」の自覚が唐突に芽生えた。
0
お気に入りに追加
661
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる