優しい狼に初めてを奪われました

須藤慎弥

文字の大きさ
上 下
75 / 206
真実

5※

しおりを挟む



 外が明るいから、この寝室にも否応なしに陽の光が入ってくる。

 恥ずかしいからカーテンしめてと言ってもしめてくれなかった和彦に、体中を舐められた。

 それは快感を引き出すというよりも、俺の体を知るための吟味に近く……全身くまなくの丁寧な愛撫だった。

 室内はクーラーがしっかり効いてて涼やかなはずなのに、体の芯から火照るせいでじんわりと汗をかいている。

 和彦の唇と舌が体を這い回り、穏やかな手のひらがしきりに肌を撫でていて、とてつもない羞恥を呼んでいた。


「そうだ。七海さん、今さらなんですけど」
「んっ、……な、なに……?」


 ぴたりと動きを止めて、ローションを手に取った和彦に足を抱え上げられた。

 そのまま俺の足は和彦の肩に担ぐように置かれて、指先を濡らす様をわざわざ見せつけられる。

 そんな、……さも今から始めますよっていうの……すごく恥ずかしいんだけど……。

 両手で顔を隠すと、和彦の指先が後孔に触れて円を描くように入り口を慣らし始めた。


「僕、七海さんを誤解していた理由がもう一つあったんです。これは疑いようがなくて、噂を信じてしまった大きな要因なんですけど……」
「……なんだよ……?」
「七海さん初めてだったのに、ここは……初めての感じがしなかったから……」
「んあっっ、……っっ!」


 ぐちゅ、と自分のではない指が挿入されて、久しぶりの感触に声が抑えられなかった。

 ──そうだ。初めての時、和彦はめちゃくちゃ意地悪だった。

 俺がエッチに慣れてる事前提で色々囁いてきて、一体何のことを言ってるんだって愕然としたのを覚えてる。

 初対面の和彦にそんな誤解をされてるのがすごく嫌で、悲しかった。

 でもその誤解は噂だけじゃなかったって事がたった今分かって、顔から火が出そうだった。


「そ、それは……っ」
「初めての感触じゃなかったんです。だから七海さんが初めてだというのも、すぐには信じられなかった。……あれ、今日は……」


 指の第一関節が、器用に中で蠢いていた。

 その不埒な指先は、ぐりぐりと何かを確かめようとしているみたいに襞を擦り上げる。

 首を傾げた和彦は指を一度引き抜いて、ローションを追加した。

 ……恥ずかしいから、言いたくない。

 俺がやってたのは、普通の人のオナニーとは訳が違うじゃん。

 体が疼いて寂しくて、ネットでやり方を調べて見様見真似でいじくり始めて五年。

 道具を使う勇気はなかったけど、色んな妄想に夢膨らませて指を入れて、ぐちゅぐちゅと快感を探った事は何度もあった。

 ……あの合コンの日、行く前にシャワー浴びててその流れでいじっちゃったし、……経験豊富そうな和彦にはそれがバレてたって事だ。

 マジかよ……それであんなに意地悪な事ばっか言ってきてたのか。

 度重なる羞恥に耐え兼ねて目を瞑ると、和彦のトロトロに濡れた指が二本入ってきた。

 ぐちゅぐちゅと襞を擦る粘膜音を立てながら抜き挿しされ、その指先の感覚が俺の下腹部をおかしくさせていく。


「……んんっ……ね、ちょっ……最初からそんな……動かしたら……っ、……!」
「おかしいな。あの時と感触が違う気がする」
「や、やっ……そ、れ……それ、やめ……っ」
「七海さんの体は不思議ですね」


 にこ、と微笑んだ和彦から、後孔への愛撫は止めないまま耳の後ろを舐められた。

 いやいや……不思議って言葉で片付けられるのかよ……?

 俺の「初めて」発言を信じてくれた和彦は、あの日の疑問さえも自身の勘違いだと結論付けてくれそうだ。

 それならそれでいい……、なんて、和彦の香りを全身に纏わせて縋る俺が思うはずもなく……。

 穏やかな表情の中で瞳だけは獲物を狙う目付きをした、見た目ほんとに狼っぽい和彦に、俺は白状する事を決めた。


「あ、いや、っ……あの……それは、……」
「はい?」
「い、い、いじってた、から……」
「何をですか?」
「や……だから、……んっ……、一人でするとき、後ろ、いじってた……自分で……」


 五年経っても自分では見付けきれなかった秘部を探すべく、くちゅくちゅといやらしく動いていた指先がピタッと止まった。

 意味深に見詰めてくる視線から逃れるように両手で顔を覆うと、少しだけ沈黙した和彦が納得の声を上げる。


「あ、あぁ……! そういう事ですか……!」
「言わせるなよっ! こ、こんな事……っ」
「……そうだったんですか……。いじらしくて可愛いですね……。でも一人でするなんて寂しかったですよね。これからは僕がたくさんしてあげます」
「た、たくさんはしなくていい……っ」


 あーもうっ、顔が熱いよ! どうにかなりそうだ!

 理解されたと分かると、もっと恥ずかしかった。

 微笑みながら後ろを解してくれてる時も、「気持ちいいですか?」っていちいち聞いてきて羞恥から逃れられない。

 ……そりゃ、一人でするのは寂しかったよ。妄想は楽しかったけど、イった後めちゃくちゃ虚しくなるんだよ。

 でも和彦にされてると、照れてどうしようもなくなる。

 想像なんか目じゃなかった。

 声がこんなに出ちゃうって知らなかったし、背中がぷるぷる震えておかしくなりそうになるって事も、知らなかった。

 そんな気になれなくて一ヶ月以上も抜いてないせいか、俺のものは痛いほど張り詰めて勃ち上がり、射精の時を今か今かと待っている。

 乳首を摘まれて体が強ばり、甘噛みされた時なんかその刺激だけでイってしまいそうだった。


「んんっ……! ……っ……っ」
「可愛い……。乳首も自分でいじってたんですか?」
「……っ! ……ぅん、……」
「やらしい子……」


 ひどい。そんな事言わないでよ。経験値の差は歴然でも、俺は年上なんだぞ。

 目を開けて抗議しようとしたら、和彦に激しく口付けられた。

 舌を絡ませながら腰を動かした俺は、ついに秘部を探し当てられて背中を仰け反らせてしまう。

 あぁ──二度目は俺、すぐにイっちゃいそうだ……。

 驚愕と混乱に満ちた「初めて」の記憶が、ほんとに塗り替えられようとしていた。



しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」  洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。 子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。  人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。 「僕ね、セティのこと大好きだよ」   【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印) 【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ 【完結】2021/9/13 ※2020/11/01  エブリスタ BLカテゴリー6位 ※2021/09/09  エブリスタ、BLカテゴリー2位

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

処理中です...